おすすめの一冊『チームレジリエンス 困難と不確実性に強いチームの作り方』
こんにちは。紀藤です。本日は最近読んだ本の中から、おすすめの本をご紹介させていただく「今週の一冊」のコーナー。今回ご紹介の一冊はこちらです。
レジリエンスとは何か
さて、本書のテーマである「レジリエンス」の話をお伝えする前に、レジリエンスと切っても切り離せないチームに訪れる「困難」があります。
チームには「困難」が訪れる
本書では、チームには乗り越えるべき「困難」があると述べています。私たちを含めた様々なチームは、何かの成果を出すことが求められます。そして、その旅路は続いていき、我々はより遠くへ向かおうとします。
しかし、旅路には、行く手を阻む「困難」がセットです。困難とは逆境、危機、あるいは急に発生するものもあれば、慢性的なものもあり様々な分類や呼び名がありますが、本書では総称して「困難 = 個人やチームの存在価値・信念・目標達成を脅かすストレス要因」としています。
特によく言われるよう「VUCA」の時代では、何が起きているかもわからず、この先どうなるかわからず、どうすればよいのかもわからない。
勝ちパターンもあるわけではなく、自分たちがどうしたいのかもわからない・・・、となります。この状況が困難をより増幅させるのです。
さて、そんな「困難」が渦巻く状況で、私達は、そしてチームはどう対処し、それを成長の糧にすることができるのか・・・?
そんな中で、武器になる概念が「チームレジリエンス」としています。
「レジリエンス」の定義
レジリエンスは、もともとラテン語の「跳ね返る(resilire)」に由来しています。この定義は能力なのか、全体プロセスかという2つの捉え方がありたすが、それらを総じて本書では「レジリエンス=困難から立ち直り、回復するための能力やプロセス」と定義をしています。
そしてレジリエンスには困難からの「回復」だけでなく「成長」の意味も内包しているのも特徴です。あの困難が自分を強くしてくれた!というやつです。(ドラゴンボール風に言えば、フリーザという困難な戦いによりスーパーサイヤ人に目覚めた(成長)みたいな感じ)。
そしてチームレジリエンスは、言葉の如く「チームにおけるレジリエンス」です。チームとは相互作用や共通の目標がある存在ですから、同じレジリエンでも、「個人の単体」や「より大きな組織」におけるレジリエンスと違うニュアンスを持つものになります。
チームレジリエンスの3つのステップ
さて、では「チームがレジリエンスを発揮する」(困難から立ち直り、そして成長する)、具体的にステップとはどのようなものなのでしょうか?
本書では、Alliget(2015)の研究をもとに、以下の3ステップを紹介しています。
まず「ステップ1:課題を定めて対処する」では、「困難を乗り越えられるチームは、"問題"を整理して、解決すべき"課題"を定義できる」とします。
ここで混同しがちなのが、「問題」と「課題」の違いです。
これも様々な定義の方法がありますが、本書では以下のように述べます。
まず"問題"とは、到達したい目標はあり、それに対して困っていることがあるが、具体的に何をしたらわからない、対処方法がわからないもの。
対して"課題"は、メンバー間の間で解決すべきと前向きに合意され、また取るべきアクションも検討できるようなもの、と述べます。
次に「ステップ2: 困難から学ぶ」では、困難を通じて、今後同じ困難に遭遇しても、それらを防ぎ、またスムーズに解決するように再現可能な教訓を得ること、としています。
そのためには、困難を共有すること、困難を振り返り教訓を得ることが重要とします。
最後に「ステップ3: 被害を最小化する」では、困難が顕在化する前に、その困難の種を発見するなど、そして顕在化した場合もその被害を最小化することを目指します。
そしてステップ1〜3は、IT保守・運用、インフラなど、攻めより「守り」が重要な場合は、ステップ3: 被害を最小化する、がより重要など業種などチームに求められるものによって力点が変わってくる、と述べています。
レジリエンス戦略4つのマトリクス
本書では、上記の3つのステップの中で必要な概念を、より細分化した形で紹介されています。
たとえばチームレジリエンスの前には「チーム基礎力」が大事であり、そのためにはチーム基礎力の5つの要素(1.チームの一体感、2.心理的安全性、3.適度な自信、4.状況に対応する力、5.ポジティブな風土)があると述べています。
(さらに1.チームの一体感を高めるための工夫として、「メンバー間の個性と感情を共有する」として、カジュアルランチや自己開示(弱みの共有)などの事例も紹介されています)
その中で、本書の中で特徴的だと感じたものが「レジリエンスの4つの戦略マトリクス」なるものです。
・ストレスをあしらう(回復する)or その機会を活かす(成長につなげる)のか
・ゆっくり対処する or すばやく対処する
そして上記を縦軸・横軸とし、4つのマトリクスに分けて、「風船型・柳型・バネ型・こぼし型」と表現をしています。
まとめと感想
私は、本書に出会うまで「チームレジリエンス」という概念を知りませんでした。本書はこのチームレジリエンスに関する50本以上の論文の知見をもとに書かれているため、それぞれの短い一文に凝縮されたメッセージが含まれていると感じました。
「一般向けの著書」とのことでわかりやすく書かれていますが、チームのレジリエンスを高めるためのステップが、それぞれの論文を元にしているため、説得力があります。
そこから行うアクション、すなわちチームに必要なことは、目標だったり、対話だったり、振り返りだったり、心理的安全性だったりと、もちろんこれまで言われていたことと重複することもあります。
しかし、”困難だらけの今”において、「チームレジリエンス(立ち直り、回復、そして成長)」という観点から網羅的にチームに必要なことを整理されたことが、新しく、大いに勉強になったと感じた次第です。
また、引用元の論文が紹介されているため、それを読み解くことで、より深い理解も実現できそうです。
つぶやき
ちなみに、本書の挿絵を含めた整理が個人的にはとてもわかりやすくおすすめしたいポイントと感じました(例えば、討論・議論・対話・雑談の違い、など)。
その中で「ストレスコーピング(対処)」についての6つの方法(信念・感情・社会性・想像・認知・身体性)を紹介されていたのが、覚えておきたい!と思いましたので、最後に引用させていただきます。
チームレジリエンス、という新しい地図をいただいた著書でした。
元論文も探索してみたいな、と思った次第です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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