中年オヤジになったからこそ、じっくりと楽しめる二枚の名盤
今日、帰り道にレコード屋に寄ってJohn Coltrane and Johnny Hartmanのレコードを買った。言わずと知れた、ジャズの名盤である。
しかし、このアルバムを素直にジャズの名盤と呼んでいいのだろうか。当代きっての前衛ジャズの旗手たちが集まり、しっとりとしたバラードを奏でる。それも、ジョニーハートマンの歌伴として。
リリースされた当時のジャズファンはどう思ったのだろう。きっとおったまげたに違いない。そして、このメンバーでこのようなアルバムは許せない!!と憤慨したのではないだろうか。私は、当時のことをリアルタイムで知らないので、わからないのだが。
しかし、このアルバム、じっくり聴いてみると実に良いアルバムである。じっくりと聴くに耐えるアルバムである。単なるバラード集といえばそこまでなのだが、ジャズというものをよく知っている名人たちが奏でるオールドスクールなジャズなのである。悪いわけがない。
けれど、この歳(45歳)になるまで私がこのアルバムを持っていなかったのには、それなりの理由があるのだ。
まず、私は学生時代にモダンジャズ研究会という集まりに所属していた。そこには、ハードコアなジャズのアルバムを溝がすり減るぐらい聴き込むジャズオタクたちが数多く所属していた。それなので、こういう絶対的有名盤について面と向かって「良い」というような人間はなんとなくヒップではない、カッコ悪いと思われるのではないかという恐れもあった。
ジャズ研でジョン・コルトレーンといえば、インパルスやらアトランティックからリリースされている「往時の前衛ジャズ」が良いものということに相場が決まっていた。アルバム「マイフェイバリットシングス」なんかも、ちょっとど真ん中すぎて、「あれが良い」ということすら憚られるぐらいだった。「至上の愛」だって、ちょっと気まずかった。そこにきて、このアルバムと「バラッズ」はちょっと部員の前で聴くわけにはいかなかった。
それから20年以上が経ち、私の中でのジョンコルトレーンの愛聴盤は「バラッズ」と「ジョニーハートマン」である。いやはや、
なんせ、この二枚ならどんなにくたびれているときでもなんとか通して聴くことができる。マッコイタイナー、ジミーギャリソン、エルヴィンジョーンズ、すまん!ジャズジャイアンツに向かってすまん。あなたたちが探求していたようなスタイルのジャズ、本当のあなたたちの音楽は今の私にはちょっと重すぎるのだよ。素晴らしいことはわかっている。今でも心は熱くなる。けれど、レコード一枚通して聴く体力が、今の私にはないのだよ。
それに対して、この二枚はじっくりと聴ける。
そして、その中にこのカルテットの「歌」が聞こえてくる、「ノリ」も聞こえてくる、少しだけ心が暖かくなる。
それって、素晴らしいことなんじゃないかな。
ということで、この歳になりやっと素直にこの「ジョニーハートマン」アルバムをじっくり聴けるようになるに至ったのだ。