「何者でもないただの自分」でいられる人と出会いたい。2月観てよかった映画たち
振り返ったときに「特別だったのかも」と思える日々を送っている。そんな映画たちと出会えた2月。
夜明けのすべて
映画のなかの時間と客席に流れる時間に違和感のない、居心地の良さを感じる映画だった。自分のことを「何者でもないただの自分」として見てくれる人はこの世に何人いるのだろう。
出会った頃のお互いの分かり合えなさが妙にリアルで……。自分のつらさと相手のつらさを知らず知らずのうちに天びんにかけてムカついたり。観客に変に共感を求めるのではなく、「そんなこともあるさ」と終始、一歩引いたスタンスで向き合ってくれる作品。
藤沢さんと山添くんのように、別々の幸せをめがけて共に生きる選択肢があることは救いだ。
友達でもなく恋人でもなく、愛する必要も受け入れる必要もなく、ただ自分をジャッジしない存在として隣にいてくれればいい。羨ましいと思うと同時に、自分にとっての藤沢さんと山添くんもきっといるのだと気づかせてくれる、肌触りのいい映画だった。
哀れなるものたち
「成長」「活力」「自由意志」……たくさんのキーワードが頭の中を駆け巡った、とんでもない映画体験だった。
ヨルゴス・ランティモス監督の作品を初めて観て、独特の世界観と画作りに圧倒されてしまった。でも、抽象的なアート映画なのかと思いきや、意外と伝えたいメッセージは具体的に描かれている。
赤ちゃんから少女に、少女から女性に。その過程で起こるさまざまな問題や課題と、私もベラと一緒に向き合っているようで、しんどくもありエキサイティングな体験でもあった。
どの映画もそうだが、とくに『哀れなるもの』は観客によって受け取り方がまったく異なるんだろうなと。私は非常に好きだったし、この映画が今存在していることにうれしささえ感じる。
でもショッキングなシーンが多いので苦手な方は注意です!
ソウルメイト
ただただ、メインの二人のお芝居に惚れ惚れするばかり。10代から30代まで成長する過程をそれぞれひとりの役者が演じているのだが、その「成長」の仕方が鮮やかで……!
かと言って、成長のグラデーションを無視した演出ではなく、ちょっとずつ大人になるなかで揺れ動く心を丁寧に描いている。
とくにミソ(キム・ダミ)は本当に素敵だった。幼さと、幼さゆえのズルさと、向き合わざるを得ない試練と出会ったときの苦しさと……きっと彼女の良さのすべてが本作に詰まっていると思う。
オリジナル版は香港映画で、原作は小説らしい。映画は観られそうだけど、小説は日本語訳がなさそう。見つけた方がいたら、教えてください!
ひとつ映画を観て、予告で新しい映画と出会って、の繰り返しだった2月。
3月は公開を心待ちにしている作品もたくさんある。ドラマもいいけど、映画は心をいろんな気持ちで満たしてくれる感覚があって好きだ。もっとおもしろいものと出会うために、まだまだ旅を続けます。