デザインとは何か? <デザイン論1>
学習のねらい:この課題は、デザインというものについて自分の考えをまとめてWEBでの小冊子を作ることによって、デザインとは何かを思考する。グラフィックデザイン、エディトリアルデザイン、プロダクトデザインなど、自分の興味のままにモチーフは選択できる。(WEB提出)
以下、レポートの一部に、三菱の電動鉛筆削りをあげた。
● 使わなくなっても捨てられなかったもの――愛着とデザイン
長年自宅に持っていた工業製品をあげる。三菱の電動鉛筆削りである。現在、家族が主に使っているが、それまで使用していない期間も捨てられずに、ほぼ置き物として棚にあった。高校の頃、1980年代半ばに購入し、当時は頻繁に使用していたものである。使用しなくなって長かったが、見かける度、なんとなく捨てるのは違うという感じがしていた。欠けている部分もあったが、電源をさせばまだ使用可能だったことも理由にあるだろう。見かけるたびに捨てられなかったというのは、やはり高校から大学当時に長年愛用していたこともあるから、デザインの他に思い出というものが付随していると考えられる。デザインはなんとなく好きくらいでも、使い勝手の良さや、削った鉛筆で漫画を描いていたその続きの動作がなんだか良い思い出になっているために、きっと捨てられなかった。
デザインとしてはシンプルであり、特別個性的でもなく、特に何かを訴えてくるわけでもなく、寄って、机のそばに置いても目立つこともない。しかし、目立つことがないため、飽きがこないのも真実だった。飽きがこないというのは重要である。さらに、その当時は特別デザインされているとは感じなかったが、今、よくよく見返して観察すると、やはり、丸みをおびた鉛筆削りのお尻あたりの形は昭和の香りがする。年数が経過したために、欠けている部分も傷もある。ツヤもあり、それは何度も触っているせいで光っているのかもしれない。
課題を終えて:視界に入るモノが全てデザインされているということついて知ったのは、工業高校の産業デザイン科という名の学科に通い始めた頃だったが、それ以前は、商品や広告についてそれらが世に出回るまでにデザインという工程を経ているなどとは考えてもみなかった。しかし振り返って考えてみれば、気に入って愛用していた鉛筆削り、中学時代に毎週のように買っていた漫画雑誌の表紙のデザインなど、それらのモノが内包しているものについては、表面のデザインが入り口としてあり、それらが表現している空気によって、消費者としてまず購入しようと決意するのだとは理解できた。つまりそれほど、感覚に訴えるデザインは重要であり、身近で使用する前に、まず「出会い」があり、「出会い」を作るのもデザインなのだ。
この課題は、デザインについて、改めてしみじみと考える時間だった。それを他者に伝えるのはそれでまたデザインを考えなくてはならないのだった。画像と文章を作る課題であるがレイアウトなどもおそらく点数に入る。評価はまずまず。いかに他者に自分のデザイン論を伝えるかを実践する課題だと思われた。
自分の好きなモチーフについて語ることができるのは楽しいと感じた。鉛筆削りはなんとなく持ち続けていたのだが、この課題に登場させることができたのはなんだか嬉しい。他に、少女漫画雑誌や、電車内の電光掲示板についてレポートを作った。履修して良かったと思う。