「ように」と「ために」の使い分け
「ように」と「ために」の使い分け
このように、ネイティブの日本人はなんの意識もせずにさら〜っと目的を表す「ように」と「ために」を使い分けています。でも、どちらも目的を表すのに、「ように」は「ために」に置き換えられないし、「ために」も「ように」に置き換えられない・・・。なかなか学習者泣かせの文法です。
というわけで、今回は「ように」と「ために」の使い分けを整理していきましょう。いつもながら例文の語彙はノーコントロールです。
1. ように
用法
V(無意志動詞)+ように、Vないように
ワンポイント
*「ように」は「状態を表す動詞」につくというのがポイントです。「ように」は「様に」と漢字で書けますね。この「様」は「様子」で、つまり「こういう状態になる」というのが目的なんですね。教える側はこの点をしっかりおえておきたいですね。
*「する→できる」「食べる→食べられる」と意志動詞は可能形になると「状態」を表す無意志動詞になります。
*「治る」「わかる」「間に合う」「見える」「聞こえる」のような可能の意味をもつ動詞も無意志動詞です。
*前件と後件の主語は同一人物とは限りません!たとえば、例文5、「ごはんを食べる」のは子ども、「作る」のはわたしです。「ライターを触る」のは子ども、「しまっておく」のはわたしです。
例文
▷無意志動詞+ように
花粉症が早く治るように、病院で薬をもらった。
締め切りに間に合うようにがんばります〜。
みんながわかるように、簡単なことばで説明します。
日本語が上手くなるように、毎日3時間勉強をしています。
子どもたちが食べられるように、甘口のカレーも作っておこう。
▷Vない+ように
試験当日、忘れ物をしないように気をつけてくださいね。
遊泳禁止区域で泳がないように貼り紙をしている。
うっかり日焼けでシミを作らないように気をつけましょう!
晩御飯はあまり食べすぎないように気を付けています。
子どもが触らないように、ライターをしまっておきます。
2. ために
用法
V(意志動詞)+ために、Nのために
ワンポイント
前件は話し手の目的、後件は「その目的を実現・達成するぞ!よし、がんばるぞ!!」という話し手の意志を表す動詞がきます。というわけで、「ために」の文では前件も後件も主語は同一人物です。
例文
▷意志動詞+ために
お菓子作りの勉強をするために、フランスの大学に留学します。
家を買うために、毎月貯金している。
夏にビキニを着るために、ダイエットしている。
子どもたちのお弁当を作るために、毎朝6時に起きている。
漢字を覚えるためにQuizletを使っています。
▷Nのために
みなさんは、健康のためにどんなことをしていますか。
安全のために、シートベルトをお閉めください。
留学のためにやっておくべきことってなんですか。
感染防止のために「3つの密」を避けましょう。
お酒が飲めない人のために、ジュースも用意してありますよ。
上のルールに当てはまらないものもたくさんある
「こっちは無意志動詞でこっちは意志動詞をとる」なんていう教え方から、ただでさえ脱却したいのに、このルールが完全でないのが日本語文法あるある。どんな例外があるかはコトハジメのブログに書きましたが、文法の使い分けは学習者に全てをきっちり教えると逆に混乱を招くことがあります。日本語教師も学習者も沼落ち確定ですので、教えすぎはNGです。
以下、井上ひさしさんのことばです。こうありたいものです。なかなか難しいですが、ここに行き着くために日々修行ですね。