「わけではない」は日本人っぽい!?
講師の皆さんが自然に使う例文を出してほしいとお願いしたところ、「うーん、ないわけじゃないんだけど…」というリアクションが…。と言うのは冗談です。のっけから失礼しました。
でも、こんな返事をされたら、せっかちな私は「歯切れが悪いな」「ちゃんと考えてないでしょ」とか「ないならないとハッキリ言っておくれ」と思うでしょうね。
まずはこちらの例文を使って、用法を見てみましょう。もっと例文をご覧になりたい方は、コトハジメのコラムをご覧ください!
「わけではない」の用法と例文
①部分否定
1の「毎日作るわけじゃない」は、「作る時もあれば、作らない時もある。毎日じゃないよ」という意味。
また2の「好きなわけじゃない」だけを切り取って見てみると・・・「料理が好きだ」を100%否定すると「料理が好きではない」になります。でも、100%じゃない、ちょっとは好きという場合は「料理が好きなわけではない」となります。客観的に事実を述べている文ですね。
②婉曲的に否定する場合
2「毎日料理をしている」ということを受けて「料理好き」なのかな〜と想像するかもしれませんが、いや実は違うんです、好きじゃないんです、をやんわり否定するときに使う表現です。
もし「好きじゃないんです」と言ったら、ダイレクトすぎて「え、そこまで。あー、本当に嫌いなんだ」と日本人なら思ってしまいます。なので、「好きじゃないんです」くらいがちょうどいいんですね。(このへんのさじ加減、日本語ってめんどくさいですね〜)
「わけではない」は、ある状況・彼らの発言から一般的に引き出せる結論、ステレオタイプのイメージを否定するときに使うので、その「イメージ」が明らかでない場合には使えません。(たとえば、A型の人=几帳面、韓国人=辛いものが好き、お金持ち=しあわせのようなイメージ)
「わけじゃない」は通常、会話の中で使われる
このように「相手の言葉+わけではない」で相手の発話を受けて一部否定したり、様子(顔色?)を見ながらやんわり断るのが日本人のスタイルなのかもしれません。「ごめん、最近疲れてるから」とダイレクトに断ると角が立ちますからね。相手への配慮のあらわれなのでしょう。
このようなやりとりをレッスンにうまく取り入れると、実際に使用するシーンがイメージでき、運用力もアップしそうです。
「わけではない」とよく一緒に使う副詞
「わけではない」は、「全て」「全然」「いつも」「かならず(しも)」「まったく」「絶対に」などの副詞と一緒によく使われます。②の主観的な表現だと、「特に」「別に」「〜からといって」などが使われることが多いです。実際には言い方も関係しそうですけどね。
さいごに
いちおう分類しましたが、①の部分否定か②の婉曲的な否定かは、場面や状況によっては両方の意味で捉えられ、はっきり分類することはできません。教師は学習者に初出で紹介する際、この違いに留意し、どんな例文を使うか考えておくと良いですね。
ただ今回、Coto講師から例文を募集したところ、①のシンプルな部分否定より②の婉曲的な否定のほうが多く例文が出てきました。やっぱり気持ちが入った文のほうが自然な文が作りやすく、実際の場面でもよく使われているのかもしれませんね。
なんとも日本人的で便利な「わけではない」ですが、英語でも “It’s not that bad.” ”It’s not like that but….” “It’s not like I don’t like him”のように、やんわりとした表現がないわけではありません。
こうした曖昧表現は相手に不快な思いをさせたくない、傷つけたくないという思いやりの気持ちが表れており、コミュニケーションにおいて大切です。ただ、ハッキリ否定しないところや回りくどいところが人をイライラさせてしまうこともありますね。使い方、使うシーンには注意したいものです。
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