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あきかぜの憂鬱

秋がきたと思った空には
まだ夏のなごりの入道雲がいた

夜明け前の風はひっそりと
もうそろそろ秋だと教えてくれる

時間がお昼に向けて進むにつれ
温められた空気が風を止めた

煮えた地上では人は消え
わずかな往来がまだ生命の存在を教えた

規則正しい暦が季節を刻み
忘却を阻止している

ああ 望んだ季節はどこにいった
移ろいは変化することを覚えておけ

秋津が群れをなして夕暮れに
目の前を横切るように飛び出した

夜は秋虫が鳴き始めた
昼は夏でもじわじわっと秋が入り込む


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