野分晴れ
秋の台風は「野分」という。
文字通り、野の草を吹き分ける暴風のことだ。
台風と言ってしまえば情趣は微塵もないが、
野分と言えばそこに趣きが現れるから不思議だ。
野分は本来、風台風のことなのだが、
近年は豪雨を伴うことがほとんどだ。
それが被害を大きくする。
川は氾濫、街は冠水、山野は土砂崩れを起こす。
昨夜、北九州、四国、近畿を駆け抜けた台風は
東海、関東付近まで走るようだ。
瀬戸内海を沿うように進路をとる台風は
記憶にもなく初めてじゃないかと思う。
夜中にかなり雨は降ったが、風はそれほどでも
なかった。黄金に輝く前の田園を心配したが、
わが家の近くの水田は稲穂が野分けされるほどの
被害はなく、稲は踏ん張りをみせた。
台風一過の晴天を「野分晴れ」というが、
今朝はまさにそれで、まるでつきものが
落ちたように、風も軽い。
野分晴れで秋はぐんと深まるに違いないだろう。
野分晴れの空は高い。