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腸内細菌と脂肪の関係~太る脂肪、痩せる脂肪~

はじめに

コスメの森の皆さん、こんにちは、やまだです。研究の傍ら、X上で腸内細菌をはじめとする腸活やアンチエイジングについての情報発信を行っています。

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今回は、脂肪と腸内細菌の関係について深掘りしていきます。そして、脂肪には、太る脂肪(白色細胞細胞)と瘦せる脂肪(褐色脂肪細胞)があるということもぜひ知っていただき、健康的でなおかつ美しい体型を目指す参考にしていただければ幸いです。


脂肪と健康、病気

肥満は、2035年までに世界の51%の人が影響を受けると予測されています[1]。これはもはや世界的な流行病とも言える状況です。ただ単に体重が増えるだけではなく、高血糖や高トリグリセリド血症といった「メタボリックシンドローム」とも深く関連しており、健康に深刻な影響を及ぼします[2]。

脂肪組織は単なるエネルギー貯蔵庫ではなく、ホルモンを分泌する内分泌器官でもあります。インスリン感受性の調整や炎症のコントロール、体温やエネルギーの消費にも関与しており、脂肪組織の状態が乱れると全身の代謝バランスが崩れます[2]。

脂肪組織には大きく分けて、白色脂肪組織(WAT)と褐色脂肪組織(BAT)の2種類があります。白色脂肪組織はエネルギーを貯蔵する役割を持ち、皮下脂肪(SAT)や内臓脂肪(VAT)がその代表例です。いわゆる脂肪と聞いてイメージされるのがこちらです。太ってつく脂肪ですね。
一方、褐色脂肪組織はエネルギーを燃焼し熱を生み出します。そのため、褐色脂肪組織が活発な人は太りにくい傾向があります[3]。つまり、痩せる脂肪です。

白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞

褐色脂肪組織の活性を高めるためには、「寒冷刺激」が有効です。寒冷刺激を受けると、白色脂肪組織が褐色脂肪のような性質を持つ「ベージュ脂肪細胞(ブラウニング)」へと変化します。最近の研究では、このブラウニング現象に腸内細菌叢が関与している可能性が示唆されています[4,5]。

腸内細菌は、脂肪組織の炎症とも密接な関係があります。例えば、内臓脂肪(VAT)が慢性炎症を起こすのは、腸内細菌のバランスが崩れ、腸のバリア機能が弱まることで細菌の成分が血液中に漏れ出すためだと考えられています[9]。この炎症が進行すると脂肪細胞が肥大化し、新しい脂肪細胞を作れなくなります。その結果、脂肪細胞が過剰にエネルギーを抱え込み、インスリン感受性が低下し、全身的なインスリン抵抗性が進行します[10]。

内臓脂肪と炎症
(つまり、肥満の人の脂肪細胞は一個一個がとんでもなく太っているというわけです)

腸内細菌が生み出す代謝物も重要な役割を果たします。腸内細菌は食物繊維を分解し、短鎖脂肪酸(SCFA)を生成します。代表的なSCFAには酢酸、酪酸、プロピオン酸があり、これらはエネルギー源として利用されるだけでなく、腸のバリア機能を強化し、炎症を抑制し、ホルモンの分泌を調整する働きを持っています[11]。特に、SCFAは食欲を抑えるペプチドホルモンであるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の分泌を促し、インスリンの分泌を助けると同時に食欲を抑制する効果も持っています[14]。

短鎖脂肪酸といえば!?
(はい、その通り!酪酸、酢酸、プロピオン酸ですね)

腸内細菌のバランスが崩れる「ディスバイオシス」が起こると、腸のバリア機能が低下し、慢性的な炎症を引き起こします。この状態は肥満や2型糖尿病だけでなく、神経疾患にも関与する可能性が指摘されています[15]。

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