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「タンポポの子供」と「ランの子供」。繊細さとクリエイティブの関係

こんにちは!

こしあんです。

突然ですが、あなたは自分の事を「繊細」な方だと思いますか?
それとも「タフ」な方だと思いますか?

タフな人であれば、どこでも上手くやっていけるのかもしれません。
しかし、繊細な人はなかなかそうはいきませんよね。
環境がとても大切になってきます。
でも、今の世の中ってタフな人を求めているような気がしますね。

ただ、「どこからが繊細でどこからがタフなのか?」といった線引きはあやふやで人によって違います。
そこでアメリカの小説家でピューリッツァー賞を受賞したパール・S・バックの言った言葉を紹介します。
「どんな分野でも、真の創造性の持ち主は並はずれて敏感に生まれついたんだ。そういう人にとって・・・・・接触は殴打であり、物音は騒音であり、ちょっとした不運が悲劇であり、喜びが恍惚であり、友人が愛する人であり、愛する人が神であり、失敗が死である

大げさに感じるかもしれませんが、この例えが「しっくりくる」人もいるかもしれません。
最近では、このような「繊細な人」や「敏感な人」、また「HSP」という言葉が入った本を沢山見かけるようになりました。

今の日本の社会は繊細な人たちにとって、とても生きづらい世界なのかもしれませんが、”人の心を揺さぶる”という才能を持っているのは、この繊細な人たちではないのかという研究もあります。

今回は、そんな才能あふれる”繊細な人たちに”ついてのお話です。

【感受性と繊細とクリエイティブ】

ご存じの方も多いと思いますが、「HSP」と言われる気質があります。
これは「Highly Sensitive Person」の略で”とても敏感なひと”と訳されたりします。

HSPの特徴としては、一度に沢山の情報を吸収できる、音やにおいに敏感、物事を深く考えられる、慎重で危機管理能力が高い、共感力が高く気配り上手、誠実で責任感がある、想像力が豊かといったものが挙げられています。

もちろん、この全ての特徴が当てはまるわけではありませんが、今ではネットを使って簡単にHSP診断ができ、何種類かの自己診断テストもあるようなので、試してみるのもいいかもしれません。
(あくまで参考程度に。笑)

心理学者のエレイン・アーロンは、同じく心理学者である夫アーサーとともに、最終的に27項目からなる尺度「高感受性者(HSP)尺度」を作りました。このHSP尺度のトータルスコアの高さと、神経症傾向にはつながりが見られましたが、高い感受性は神経症のせいではなく、性格の特徴だと考えられています。

また、高感受性の人は内向的な人が多いと言われますが、すべての人が内向的だったわけではないことも分かっています。
そういえば、HSPの中でも3割の人が外向性が高いという話もありますよね。
そして、内向型の特徴と外向型の特徴が共存することはクリエイティブ思考の人によく見られる矛盾の一つだそうです。

アーロンは、人類全体の15%~20%が高感受性者、つまりHSPだと推定しています。
そのため、よく「5人に1人はいる」なんてことも言われます。

感受性の高い人は、内的世界でも外的世界でもより多くのことに気づき、多くの感覚情報を処理しています。
この感受性の高さは、クリエイティブ思考だけでなく、スピリチュアリティや直感、神秘体験、芸術や自然との融合といった特徴とも相関しているそうです。

敏感な人は周囲の小さな変化に良く気づくため、つい他人の表情を読み取ったり、本来吸ったり吐いたりするべき空気を読んだりします。笑

また、このように敏感に反応してしまう特徴は感覚処理感受性(SPS)が高いためだとも言われています。
SPSの高さは、感情だけでなく認知や身体への刺激に対する感受性も含まれるそうです。

つまり、音や光などにも敏感だと言えます。

この数値が高くなると、良くも悪くも感情的な反応が強くなり、そのため新しい状況では立ち止まって確認し、戦略を深く考えたり、時間をかけて効果的な行動を計画します。

これを読んでいるあなたも物事に初めて取り組むとき、「じっくり考えるほうが性に合ってる」と思った事はないですか。

高感受性の人は、基本的に準備をしっかりするので予想の範囲内であれば対応することも可能です。
しかし、いきなりだったり、何をやっていいかわからない場所に放り込まれたりすると慌ててしまいます。
(誰でもそういう反応はあると思いますが、その反応が大きくなります。)

このとき、繊細な人は”上手くできない自分を責めたり”します。
しかし、あなたは時間をかけてじっくり考えれば効率よく動けるはずです。とっさの判断ができる人を見て「私にはできない」、「羨ましい」と思うかもしれませんが、あなたが即断即決できないことに罪悪感を抱く必要はありません。

あなたと他の人の物事の取り組み方が違うというだけなんです。
ちょっと話はそれましたが、この感受性は免疫系の反応にも影響すると言われています。
つまり、感受性の高い人は身体レベルでもカフェインや薬物、痛みからより強い影響を受けることがあるそうです。

そして、感受性の高さゆえに大きく感動することもできますが、ちょっとしたことで失意のどん底に落ちることもあります。

まぁ、感情のふり幅が大きいと言えるのかもしれません。

違う言い方をすれば、感受性は肯定的な感情から否定的な感情まで、幅広い感情と結びついているとも言えます。

【育つ環境】

実は、感受性の高さはこれまで”望ましくない特徴”だと見なされていました。
傷つきやすさは「弱さ」と言われ、危険に敏感なことは「臆病」だと判断されてきました。
そのため、感受性の高さが長所だと考えられず、「心が弱い」といった言葉で片づけられてきた歴史があります。
実際、今でも”繊細さ”よりも”打たれ強い”ほうが好まれ、内向的な性格よりも外向的な性格が良しとされる世界があります。

しかし、最近の研究ではHSP尺度の点数が高い人の脳は、感受性の低い人の脳と比べ、共感や自己認識に関する領域の活動が盛んで、島皮質と呼ばれる領域は非常に活発に働いていることが分かっています。

この島皮質は味覚、臭覚、痛覚、体性感覚などを喚起させる脳部位、また、情動の喚起や共感など、社会的な生活を送るうえで必要不可欠といえる感覚の喚起を担うとされています。

そして、この島皮質の体積が大きいことは幸福感の強さと関係があるとされ、個人的成長、自己受容、人生の目的、自主性の高まりとのつながりがあるとも言われています。

HSPの人が他の人より感動しやすかったり、美しいものを見てより強く幸せを感じるのはこのせいかもしれませんね。

最近ではこの「気質」に気づいて「なぜ自分がこんなにも繊細なのか」と合点がいった人も多いと思いますが、この気質は赤ん坊の頃から見られます。
高感受性の子供たちは環境に反応しやすいため、逆境(虐待や貧困など)にさらされると過剰なストレス反応を引き起こし、精神障害になりやすいとされ、そういう反応は生物学的に「不適応」と見なされてきました。

つまり、「環境が悪いのもわかるけど、その子の心が弱いのでは?」と考える時代があったわけです。

今では、冷たい環境で育てば、感受性が高いゆえに否定的な感情やうつ状態、行動制限が助長される可能性があると考えられおり、逆に温かく協力的な環境で育てばその感受性が知的好奇心や学ぶ喜びを後押しし、教師や指導者に対して肯定的な感情を持ちやすくなることも分かっています。

以前は嫌われていたこの感受性の高さは、実は「人が進化する上で必要なものだったのではないか?」と考える研究者たちもいます。

心理学者のW・トマス・ボイスとブルース・エリスは、感受性の高さは環境への生物学的感受性(BSC)が強まったもので、これが有利に働くからこそ自然選択(環境に適した個体が生き残ること)を生き延びたのではないかという仮説を立てました。

感受性が高ければ、ストレスの多い環境だと警戒心が強くなるため適応上有利に働くし、ストレスのない環境ではオープンになり、社会的資源や支援を得やすくなるので有利に働くとし、自然選択は環境に応じて発現の仕方を変えられる感受性の高い遺伝子を選んできたとエリスたちは考えています。

また、ボイスとエリスは「タンポポの子どもとランの子ども」というスウェーデンの例えをつかい、土壌、日照、湿度、雨量に関係なく繁茂するタンポポのように、どんな環境でもたくましく生きていけるタイプを「タンポポの子ども」とも呼び、それに対して「ランの子ども」は、生き残りや繁栄が環境に大きく左右されるとしました。

「ランの子ども」は世話をしてもらえないとすぐ衰弱しますが、しっかり支えられて育つと、並はずれて繊細で美しい花を咲かせるそうです。

最近の研究では、タンポポ子どもとランの子どもではドーパミンとセロトニンに関係のある遺伝子変異に違いがあることも分かっているそうです。
ただ、この遺伝子があるからこうなったという話ではありません。
遺伝子の多くは直接、良い結果や悪い結果をもたらすわけではありません。

うつ、不安、注意不能などに関連した遺伝子の中には、知的好奇心、肯定的な感情、感情をコントロールする能力など、成功につながる要素に関連したものもあると言われています。
つまり、逆境状態では不安を増大させ行動に制限をかけてしまいますが、大切に育まれる環境においては、高感受性は天からの贈り物になるというわけです。

繊細な子供を持つ親の多くは、”上手く人付き合いができない性格”や”空想に浸る”わが子を無理やりその他大勢と一緒になるように教育しようとします。

しかしその背景にあるのは、親が自分の子どもと他の子を比べ、違うことに不安を感じているに過ぎません。
つまり、親の都合なんです。
大切なことは、繊細な子供たちは「環境に合わせる」のではなく、「その子に合う環境を整える」ことです。

植物を育てるようにはいかないと思いますが、環境が合っていないと感じているのなら、タンポポとして育てるのではなく、素直に鉢(環境)を変えて育てた方がいいかもしれませんね。


【感情の起伏】

ポジティブな感情とネガティブな感情のふり幅の広い人は一見、情緒不安定に見えるかもしれません。
でも、この両方の感情が強い人は、その片方しか強くない人に比べて、クリエイティブ思考を測るテストの点数が高いことが分かっています。

また、この情緒安定性はパーソナリティ特性の一つであり、神経症傾向と呼ばれることもあります。
ちなみにこの神経症傾向は、幸福と様々な面で結びついていると言われています。

健康で正常な日常生活を送っている人も、神経症傾向の高い人(情緒安定性の低い人)は主観的な幸福度が低く、ネガティブな感情を抱きやすく、仕事の満足度や健康状態があまり良くない傾向があります。

こんなことを書くとあまり良いことがないように思えますが、この神経症傾向の高い人は、危険を察知する脳の器官である「偏桃体」が過敏であることが分かっていて、他の人なら見過ごしてしまうような小さな危険の兆候も見逃すことはありません。

あなたの周りにも、細かい違いに気づいたり、他人の表情やその場の雰囲気を感じ取る能力が高い人がいるのではないでしょうか。
もしくは、あなたがそうなのかもしれません。

しかし、能力が高すぎるためいつも危険がないか警戒することになり、慢性的なストレスに悩まされたりもします。
そのため、睡眠不足になったり、免疫系の疾患に罹りやすくなったりして健康を損なうことがあるそうです。

この敏感すぎるセンサーのために不安や抑うつ、自意識過剰、感情的な脆さといった問題を抱えやすくなるとも言われます。
つまり、蟻んこ一匹逃さない能力を持ってはいますが、いつもその警戒レベルで対応してしまうのですぐに疲れてしまいます。

いつも”危険がないか”気を張っているので疲れやすく、あなたは「楽観主義者だったらどんなに良かったか」と考えるかもしれません。
しかし、ネガティブな事に反応することはそんなに悪いことではありません。

社会心理学者のロイ・バウマイスターによれば、そもそも人は「ポジティブな出来事よりも、ネガティブな出来事に強く反応する」と言います。

ごく普通のアメリカ人の大人たちを対象に調査したところ、人はどんなに楽しい1日を過ごしても、翌日には何の影響も及ぼさないが、最悪の1日を経験すれば、翌日までそれが響くことが分かっています。

前日のモヤモヤを引きずって、朝から憂うつな気分を味わったことがある人も多いと思います。
バウマイスターたちが出した結論は、ネガティブな出来事、経験、人間関係、心理状態はポジティブなものに比べ、人の感性により強い影響を及ぼすとしました。
つまり、普通の人でもネガティブな感情に引っ張られることが多いという事です。

高感受性者だからといって特別ネガティブな方に傾くわけではないようですね。
ただ、受け取る情報は多いと思います。
そして、このネガティブな感情も生きる上では必要なものです。
私たちはこの感情があるからこそ、安全かそれとも避けるべきかを判断することができます。

周りの人は「神経質だ」とか「心配性だ」というかもしれませんが、あなたが持っているセンサーは、人よりも感度が高いので他の人よりも多くの危険を感じ取っています。
そのため、いろんな危険を想像し、そのことについて深く考えてしまうことがあります。
もし、感じ取る不安に押しつぶされそうなら「不安」そのものに目を向けるのではなく、それを解決することに力を注いだ方がいいかもしれません。

たとえば、プレゼンをすることになり、「恥をかいたらどうしよう」といった不安が襲ってきたとき、そこに力を注いでも不安は解消されませんよね。それどころかその不安はどんどん大きくなってしまいます。

それだったら、「どんな質問を受けても答えられるようにしよう!」と考え、事前の準備をしっかりした方が上手くいくのではないでしょうか。
それでも不安はなかなか無くならないと思いますが、「上手く出来なかったらどうしよう?」とグルグル考えるよりは建設的です。

他には、人混みにいるとひどく疲れてしまうという人は、必ず「1日の最後に自分の時間を確保する」といった対策を取る方法もあります。
このように、自分なりの感情のコントロール方法を探してみるのもいいかもしれませんね。


最後に

残念ながら、今の社会ではまだまだ繊細な人が鈍感な世界に合わせることが多いと思います。
苦しい中でも、何とかして「周りに合わせよう、成長しよう」として、頑張っている人たちもいます。
しかし、繊細な人にとって自分に合わない土壌というのは生き死にがかかっていると言えるのではないでしょうか。

タンポポとランではありませんが、日照や雨量に問題がなければやはり土壌が合わないのかもしれません。
この合わない土壌で頑張ることを良しとする人もいますが、私の個人的な意見は「さっさと土(環境)を変えましょう」と言いたい。笑

そして、最近では繊細な人たちがどうにかして”ありのままの自分”でいられるような社会を作ろうと動いている人たちもいます。
もしかすると、後10年もすれば繊細な人たちが伸び伸びと働ける社会が出来上がっているのかもしれませんね。


今回はここまで

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※この記事は主に私のアウトプットを目的に書いているものです。
参考にした資料(主に読んだ本)をもとに考察したもので、私の主観が多分に含まれています。
そのため、参考にした論文とは結論が異なる場合があります。
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予告なく文章を変更することがあります。ご了承ください。

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