共感面接

共感的理解は,治療者がクライエントによって経験されつつある感情と個人的意味づけを正確に感得し,この理解をクライエントに伝えることを言う。その最高状態では治療者が他人の私的世界の中に深く入り込む結果,クライエントが気づいている意味づけのみならず,その水準をわずかに超えるところまで明確化することができる。治療者がこのようなレベルで応答するとき,クライエントの反応は,「私が言おうとしてきたことは,多分そのことなんです。今までそれに気づきませんでしたが,そうなんです。そのように感じているんです!」というようなものになる。

Carl Rogers

能動的な「読み」に裏付けられる「聴く」技能

雰囲気づくり:Clの語りを尊重することを態度で示す(適度な相槌,適切な間を取り,語りを待つこと)
反射:Clの語った発言をClの気持ちの流れに沿うように語り返す
明確化:Clの語った内容を要約し,語りの要点を明確化する。明確に語られてはいないが,語ろうと意図されていると理解できる内容を明確化する(お話しされようとしたことは……ということですね)
純粋性:Clの語りを聴いていてTh側に生じてきた気持ちを聴き手の純粋な感想として伝える(お聴きしていて……私としては……という感じがしました)
解釈:Clの語った物語の意味についての解釈を伝える(……には……という意味があるように思われます/……したのは……だからですね)

その他,実践上のポイント

・Clは,自己の未だ言葉にならない体験を含む事柄がThから伝え返されることで,刺激を受け,自己の体験過程に気づき始める。語りが深まると,Clの体験過程も深まる。Clは自分の体験過程に沈潜するために,比較的長い沈黙をすることがある。Thはその沈黙を受け止め,待つ必要がある。
・一般的に,人は,矛盾や葛藤があるからこそ苦しい。Clの語りを深めていくには,互いに矛盾する考えや感情の両方を受け止め,共感し,それを伝え返していく。
・語りの全体を少し離れた視点から見直して,どのようなテーマがどのように組み合わさって語りが構成されているのかを推察するさまざまなテーマに共通するテーマを探る。

共感ロールプレイ(実際思ったことなど)

位置付け:臨床心理実践の土台の練習
目的:Clに心を通わせる体験をしてあげる。共感していることがClに伝わってから初めてThが信頼され,共同戦線を張ることができる。
反省点
・(雰囲気づくり)話の前後に間を置く。前のめりすぎない。話を遮らない。ゆっくり喋る。圧迫感を与えない。口調と言い方に気をつける。「なるほど」は相槌としてあまり使わない。
・要約(明確化)と共感(反射)両方を交える。特に,感情部分の伝え返し(反射)が不足しがちなので,理屈でなく,気持ちに寄り添うことを意識する。感情についての質問をしても良い。語りの中に出てくる感情はラベルであり,その正体を深く掘り下げる。
・(純粋性)状況を読んで,純粋に思ったことを話す。ポジティブに言い返すことは時にはリスキー。共感は労いではない。
・わかった気にならない。わからないときは率直に言う。お互いが正しく理解できるまでズレをちゃんと確認する。「ここはちょっとわからなかったのですが,どういうイメージですか?」
・「今,ここ」を"観察"する,"読む"。自分に起こっていることも感じ取る。俯瞰するメタ視点を持つ。
・メタ的に技法の有効性を判断して使う。それをやることで,有効かどうか,より理解できるようになれるか?
・自分を絶対視しない。相性の問題もある。

参考文献:下山晴彦(2014),臨床心理学をまなぶ2 実践の基本