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短いお話。

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#小説

オラ。

オラ。

 江ノ島からの冷たい風に煽られ歩いていると、急に背中に重みとぬくもりを感じた。 

 「?」振り返るとオラウータンがいた。僕が笑うとそいつも笑う。「まぁ、いいや」しばらく行くと、そいつの母親だと言うタイの女性に会った。 「オラはいい子なんだけど、米兵との子供なんで、鳥インフルエンザなのよ」瞳が黒く大きい。僕は、その米兵とタイの女性の間に生まれた、鳥インフルエンザのオラウータンのオラを背負い家に戻っ

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ライブハウス。

「客席の間も空け、予約制で人数限って、消毒液、個包装マスク、フェイスガード・・・もちろん体温チェックも厳しく、ライブ中はお喋り禁止!完璧じゃない?えっ、演者Aがキャンセル?どうしてまた?」
「なんか、ひきこもりから抜け出せなくてモチベーションがないんだって・・・」
「ったく、あんなにやりたがって配信までしてたくせに。まぁいいわ、今日は私がやるわ!
「えっ、なに?演者Bも来ないの?なんでよー?」

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『メール』

『メール』

「根性なし(笑)」

俺のメアドで届いてはいるが、送り主のメールはgメール。
cccなる名前になっている。

「根性なし?!」

その時、俺の中で何かが弾けた。

「俺は、根性なしなんかではない!」

「断然、違う!」

怒りが沸いてきて、パソコンを床に叩きつける。

シャワーを浴び、久し振りにスーツを着込む。
アタッシュケースには、履歴書。

俺は、マンションを飛び出すと、
わき目もふらず駅に向

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『落ちない大学』

『落ちない大学』

 「ええ、東京からは少し離れておりますが、静かで環境がいいんですよ。
海も山もありますし、大学生活には最高です。いいえ!それが、そんなに難しくないんですよ。
基本的には体力や気力を鍛えるカリキュラムが中心になりますが、
専門分野においては日本一の講師陣を揃え、また実験材料や設備も日本一!
さらに驚きの就職率100%!なんですよ!今なら特待生として入学料、無料ですよ」

 「しかも、入学試

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「守ってあげたい」

「守ってあげたい」

「うわっ、また余震かよ」
「ったく、自然て手抜かないよなぁ。あぁパソコン倒れる…」
「…ウチ、マンションの一番上だから余震でもメチャクチャだぜ」
「帰るか?彼女、ひとりでいるんだろ?」
「あぁ、またパニクってんだろうなぁ。悪いけど先帰るわ」
「おうっ。お疲れ様!」

「…ただいまー。
怖かったかミチ?よしよし!おいで」

(こいつをさぁ、こいつを守ってあげられんの俺だけなんだよなぁ。
 同性愛だ、

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『ギター女子』

いったいこの娘は、なんだ?
ギターを抱えた高校生くらいの女子が、
浜辺でギターを抱え大声で歌っている。
いや、いい。
浜辺で女子高校生がギター抱えて歌うなんて、
とっても、素晴らしいシーンじゃないか。
・・・ただ。この真夏日に、ギターが可哀想じゃないか?
「フランシーヌの場合はあまりにもお馬鹿さん・・・」
って、歌も古いし。
「あの」
ギター女子が怪訝そうな顔で振り向いた。
「はい?」
しかも、可

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