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夜空を見上げて


時刻は21時20分くらい、夜空を見上げると幾つもの星々が瞬いています。
その中にオリオン座を見つけて、思わず頬が緩みました。
オリオン座、といってもちゃんとした方ではなく、7つの星で構成される簡単な方です。
星座の種類は数あれど、その多くは名前を聞いたことがある程度で、形が分かるのはオリオン座くらい。
そしてオリオン座を見て思い出されるのは、冬休みの宿題です。


***


小学校4、5年生頃の冬休み、“オリオン座を観察しよう”といった感じの宿題が出されました。
ドリルや漢字練習などは面倒くさくて後回しにしがちな僕でも、観察して絵を描くくらいなら出来そうです。

観察するのは毎日20時頃と決め、家を出て少し開けた場所まで歩いて行って、オリオン座をプリントに描いていきました。
星座が少しずつ移動しているのが分かるように、建物の影なども入れて。
まあ実際は、毎日見ていたら大して変わり映えしないので、なんとなくでずらしてみたり。

そして暖かい格好をしながらプリントに書き込む僕の傍には、見守っていたであろう母親の姿がありました。
ときどきは僕一人でさっと行って帰ってきたりもしましたけど、大体は母親もついてきてくれたのです。
家からさほど離れていないとは言え、さすがに一人で行かせるのは心配だったのかもしれません。

近くで見守ってくれているという安心感と、宿題に一生懸命取り組んでいたことへの懐かしさ。
たったこれだけのなんてことない記憶ではありますが、オリオン座を見る度にふと思い出されるのです。

そしてあの頃は毎日が楽しかったなと、思ったり思わなかったり。
別にその頃に戻りたいとは思いませんが、こうやって過去を懐かしむのは多少の憧れやなんかもあるのですかね。
少なくとも今は、同じようなことはできない気がしますから。
まず書き込むべきプリントなどが無いですし、やる気すらもありません。
手元にあるのは、レジ袋に入った烏龍茶どら焼きだけ。
そうだ、コンビニに行った帰りなのでした。

但し僕は普段、こんな時間に出歩くことなどしません。
ましてやこの日は元日、買うなら昼間のうちに行けと言われても仕方のないことです。
しかし夜になってから、烏龍茶とバウムクーヘンが欲しいなと、ふと思ってしまいまして。

これまでの僕であれば、時間を考えて出かけるのは見送るところでしたし、実際のところ別に無理して行かなくてもよかったのです。
でも新年の始まりの日ですから、初っ端から自分のしたいことを無視するのはいかがなものか。
もしここで自分の思いと反する行動を取ってしまったら、今年1年間ずっと同じようなことを繰り返してしまうのではなかろうかという危惧がありました。

バウムクーヘンは縁起が良さそうだし、お正月だからたまには欲しいものを買っても良いのでは。
そう取って付けたような言い訳をして、寒空の下へ繰り出したのです。
時刻は21時ちょうどの頃、上着を着ているのにどうにも寒くて、首を竦めて地面を睨みながらコンビニを目指して歩くこと数分。
そして買い物を終えて、少しの達成感や安堵を覚えながらもと来た道を戻ることしばし、そう言えばと空を見上げれば──


幾つもの星々が瞬いていたのです。


***


コンビニの店内でうろうろしていた時間も含めて、行って帰ってくるまで正味25分ほどの小散歩。
おやつが手に入ってほくほくしていたら、きれいな夜空と懐かしい記憶もおまけで付いてきました。

普段の夜など、屋内にいて見つめるのはスマホの画面や紙の本、あるいは虚空くらいなものです。
それだけに、夜空を見上げて月や星がきれいだったときには、思わず心が揺さぶられます。
例え真冬の寒い頃でも、ずっと見ていたい気持ちになるのです。

しかしながら、そうして外で見ている間は感動できるのに、屋内に入った途端に忘れてしまうのは不思議でなりません。
せっかくきれいなのに、5.5インチのFullHDなTFTカラー液晶よりも臨場感たっぷりなのに。
やはりここは、6.6インチの有機ELでなければ敵いっこないですね📱
なんのはなしですか。



そんなわけで今年は、自分のやりたいことや好きなことを大切にして、心身共に健やかにいられるようにしたいなと思います。
ただ、言うは易く行うは難しなので思い通りにならないことも多々あるでしょうけれど、なるべく自分の思いに沿った行動ができるように心がけて、自分に嘘をつくことのないように。

そう、今回バウムクーヘンを買いに行ったのに売っていなかったから、代わりにどら焼きを買ったような感じで。
どら焼きは縁起物でも何でもないですけど、まあ好きでしたからね。

時には自分のために生きてみるのも、良いのかなと思うのでした🍩


見出し画像に、ひいろさんのイラストを使わせていただきました。
ありがとうございます。




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