【MLC】人生をシンプルに、よりシンプルに…
僕がどん底の底の気分にいる時、何でもいいから何かにすがり、この苦しみから逃れたいと、もがいていた時期があった。
2010年代からスマホが爆発的に普及し始め、それに伴いYoutuberと呼ばれる発信者があまた出現してきて久しいが、いやいや、世の中にはいろんな人がいて、僕が抱えている苦しみなどとうの昔に経験して乗り越えて、さまざまなアドバイスをさまざまな角度から教授して下さるYoutuber氏が沢山いることに驚き、そして救われた(半分は僕の時間潰しにお付き合い頂いた側面もあるが…それでも有難かった)。
いろいろなジャンル(どん底復活系、生き方指南系、メンタル疾患系、スピリチュアル系等々)の動画を見る中で、仏寺のお坊さんが語ってくださる動画を何度も聞き流した時期があった。当時はネガティブな感情に苛まれていたので、その有難いお言葉は時に厳しく、時に温かく僕に寄り添って頂いたと感じている。ただ、当時の僕にとって「特効薬」となるようなアドバイスや教えは、(仏寺のお坊さんのお話に限らず)皆無であった。
現在、ようやく気持ちが落ち着いてきて、どん底の淵から立ち上がり、精神的に上向きのベクトルにいるような時期に来ていると感じているが、今、その時に聞いた説法のことばを改めて思い返してみると、なるほど、それが真理なんだなと思うようなことばが脳裏に浮かぶ。
まずは「一切皆苦」と「四苦八苦」。
そうか、僕が生きてる世界は思い通りにはならず苦しみが前提なのか…と。どん底にいる自分にとっては「何を当たり前のことを…今が苦しいから何とかしたいとこうして話を聞いているのに…」と思ったものだが、一周(いや二・三周したかも)回って、穏やかな心でコーヒーでもすすりながら青空なんか眺めていると、この世は何て素敵な世界なんだと晴れやかな気分になる。あの絶望感は一体何だったのであろうかと。
次に「因果応報」。
これはチクリと心に刺さることばだった。過去あの時のあの事が、今になって自分の不幸に返ってきているのかもしれない。でも、過去に戻ってやり直すことなんて出来ないと思うと、いたたまれない気持ちになった。和尚さんそんな厳しいこと言わないで…と途中で動画を止めたものだ。「バチがあたるぞ」「まだまだ修行が足らんぞ」と和尚さんそう言ってるだろうな…なんて思いながらふて寝した(笑)。
そして「忍辱(にんにく)」と「諸行無常」。
「忍辱(にんにく)」とは「忍耐」のこと。「耐えましょう。そして、時が流れて変化が訪れるのをじっと待ちましょう」そんなところか。
仕事をしている時の自分と自分そのものというアイデンティティが極めて近い僕にとって、絶望の中にいるとき、僕は仕事を失うことに対してとても大きな恐怖を感じていた。そして「また再び働こうという気持ちになるのか」「生きている価値はあるのか」などと自分で自分を追い込んでいたものだ。
しかし、職を失ってからひと月経ち、頭の中で混乱・錯乱していた諸問題が大きく解決・前進したわけでは無いにも関わらず、思考が整理されていった結果、あの時の恐怖感は今やどこにもない。
思うに…外的な変化・変容が大きくあるわけでは無くとも、時がゆっくりと流れていく中で、自分の心の中では価値観の変化や内面の変容というものが確かに起きているのだなぁ…ということを実感している。これが「諸行無常」ということなのかな…とふと思う。
外的な変化と言えば、今年の夏は本当に暑かった。これ以上ないくらいの暑さだったのに、まさに「喉元過ぎれば何とやら…」じゃないけれど、今はちょっと寒いくらいの風にさらされて、屋外での一煙(いっぷく)もそこそこに暖房の効いた部屋に戻ってくる。当たり前のことかもしれないけれど、内面はこうした外的な変化にも機微に反応するからこそ、季節の流れとともに心も移ろっていくものなのかもしれないな…とも思う。
さて、まとめると、ようやくここに来て「人生って意外とシンプルなんだ」ってことに気づく。シンプルな人生を自分が勝手に複雑に捉えているだけ。
それはもちろん、ITだのAIだのSNSだの過剰な情報社会で生きていかざるを得ない社会的な問題や、会社や家庭、所属するコミュニティ内の人間関係に起因する問題、そして経済的な問題もそれぞれ一つずつの原因ではあると思うけれど。でも、そんな中でも生きていかなくちゃだとすれば、そんな中でも生きていく術を、身に付けなくてはならない。特に中年期の僕にとってはそれは重要な課題なのだろう。
解決策のカギは、これまでのように「足す生き方(足し算思考)」ではなくて「引く生き方(引き算思考)」なのではないかと思っている。シンプルに、よりシンプルに…それは例えば「断捨離」であったり「足るを知る精神」であったり「無理せず無駄なく暮らすこと」であったり。。。
モノや情報が過剰に溢れている現代において、僕らはもう既に食うに困らない国に生きている。その中で幸せを見つけるって…難しいように見えて、実は意外と簡単なことなのかもしれないな…なんて思ったりしている。