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「パーソナル・イズ・ポリティカル」とは何か ー フェミニズムが生んだ重要な概念
はじめに
「パーソナル・イズ・ポリティカル(The Personal is Political)」は、1960年代から1970年代にかけてのフェミニズム運動で広まったスローガンです。
The Personal is Political(個人的なものはは政治的なものである)と訳されます。
このフレーズは、私的な領域での個人の経験が、実は社会や政治の構造に根ざしているという考え方を示しています。
一見すると、日常的で、個人的な問題のように見える事象が、実際には権力作用や制度的な不平等など社会構造に結びついていることを明らかにするものです。
TBSテレビのドラマ『御上先生』にて、主演の松坂桃李さんらが言及しました。
ドラマを通じてこの言葉が社会的に共有されるのはとても大切な事だと思います。
歴史的背景
1. 第二波フェミニズムとの関連
「パーソナル・イズ・ポリティカル」という言葉は、第二波フェミニズムの中で生まれました。
この時期、女性たちは職場や家庭、社会全般での不平等に直面していました。
この言葉は、個人的な経験、特に女性の経験が、体系的な社会的・政治的構造に深く根ざしているという考えを要約しています。
この概念は、伝統的な「私的」領域と「公的」領域の区分に異議を唱え、家庭内の役割、生殖に関する権利、個人の自律性など、従来は私的なものとされてきた問題が、実際には広範な社会的不平等を反映する政治的な問題であると主張しました。
家事や育児、性的暴力といった一見私的な問題が、実は家父長制によって制度的に構築されていることが議論されたのです。
この時代を代表するベティ・フリーダンの『女性の神話』は、家庭の中で抑圧される女性の問題を、社会全体の構造として捉えました。
女性たちが集まり、自分たちの経験を共有することで、個人の問題が集団の問題であることを認識しました。
2. 言葉の広がり
キャロル・ヘイニッシュのエッセイ(1970年)でこのフレーズが注目され、以降、フェミニズム運動の中核的な概念として広まったとも言われています。
ハニッシュ自身は、この考え方がフェミニスト・グループ内で集団的に議論されたものであると述べていますが、彼女のエッセイがこのフレーズを広めるきっかけとなりました。
当時、フェミニズム運動は、家事労働、セクシャル・ハラスメント、リプロダクティブ・ライツ(生殖に関する権利)などが単に個人的な関心事に過ぎないとする考えに挑戦していました。
これらの問題は、実際には集団的行動を必要とする社会的・体系的な問題であると再定義されたのです。
また、1960年代後半からまったウーマン・リブは世界で各地に広がった運動です。日本のウーマン・リブにも大きな影響がありました。今日に至るまで、日本のフェミニズムも重要な問題提起をいくつもしています。
「パーソナル・イズ・ポリティカル」の具体例
1. 家事分担の不平等
家庭内の家事や育児の負担が、主に女性に偏っているという問題は、個々の家庭の問題にとどまりません。これは、性別役割分業が社会全体に浸透していることを反映しています。
家事の不平等な分担は、社会規範や体系的なジェンダー不平等を反映しています。フェミニストは、無報酬労働を価値ある仕事として認識することが、ジェンダー平等を達成するために不可欠だと主張しています。
2. セクシャル・ハラスメント
職場や公共の場でのセクシャル・ハラスメントは、一見すると個々の加害者と被害者の間の問題のように見えますが、実際にはジェンダー不平等や権力構造に深く根ざしています。
セクシャルハラスメントやドメスティックバイオレンスは、かつて「私的な問題」として退けられていました。しかし、フェミニズム運動はこれらの問題を公的領域に引き出し、家父長制的な権力構造に根ざしていることを示しました。
3. 生殖の権利
中絶や避妊に関する議論も、「個人の選択」として語られる一方で、政府や社会が女性の身体に対してどのように権限を行使しているかを反映しています。
避妊や中絶は、長らく「個人の選択」として捉えられてきました。
しかし、これらの選択は法律、文化的規範、経済的要因に大きく影響されます。
まとめ
「パーソナル・イズ・ポリティカル」という考え方は、個人の生活や選択が社会全体の構造とどのように結びついているかを理解するための重要な視点を提供します。
いわゆる「自己責任論」では見えてこない、または意図的に隠されている視点を明らかにしてきた意義があります。
この概念を通じて、私たちは個々の問題を単なる私的な事柄として片付けるのではなく、社会全体の仕組みとして捉え直すことができます。
現代においても、ジェンダー平等や環境問題、多様性の尊重など、個人と社会の関係性を深く考える機会は増え続けています。
「パーソナル・イズ・ポリティカル」という視点を持つことで、私たちはより良い社会を築くための一歩を踏み出すことができるでしょう。
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