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一次選考通過作品を勝手にアレコレ 第7回料理レシピ本大賞
第7回料理レシピ本大賞の一次選考通過作品が発表になりました。
2020年3月31日までに発行されたすべての料理本が対象でしたので、エントリー123タイトル一覧をみると、過去作品も目につきました。
一次選考通過作品にもあります。
例えば、大変に話題になった渡辺俊美さんの『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』(マガジンハウス)は2014年、村上祥子さんの『頑張らない台所』(大和書房)も2018年だし。Instagramで一躍人気者になったTesshiさんの『主役は、ごちそうおにぎり つまみにポテサラ、シメのホットサンド』(KADOKAWA)は2018年。
料理本は世相をもっとも反映すると言われていますが、上記3点は2020年の今にこそ手元においておきたい本。
コロナ巣ごもりで親父と息子は会話をしただろうし、四六時中ごはんの心配をしなければならないご飯担当者には「頑張らない台所」を捧げ、「ごちそうおにぎり」があれば完璧だ! と普段料理をしない人を勇気づけて。
私的に嬉しかったのは、2つ前のnote記事の「料理本トレンド観察」で取り上げた本と著者さんが全部入っててにやにやが止まらない点。
(『カレンの台所』は今年4月発売ですからエントリー不可。あら残念!)
とはいえ、料理レシピ本大賞の結果予想をするようなことは野暮の極み。ここでは私が気になった本を紹介していこうと思います。
有名人と家政婦さんが大活躍
料理レシピ本大賞は書店員さんが選ぶだけあって、テレビ出演者や有名料理人の本は毎年強い傾向にありますが、そんな中でも『笠原雅弘ザ・ベスト』は内容、編集的にもイチオシぐらいのおすすめ本。
家庭料理の王道メニューを「プロのひと手間を加えて最高のおかずに」というテーマ自体も王道ですが、ページを開けばひと手間やその効果がわかりやすく説明されていて、「それならやってみよう」という気になる構成なんです。料理写真がそもそも美味しそうだし。
プロ家政婦さんの本も強いです。
「ずぼら」だけど「世界一」がキャッチフレーズの家政婦makoさん。
包丁を使わない技ってのは気になるよねぇ。
また、家政婦料理の元祖、タサン志麻さんはプロの料理人の腕でふつうの家庭のコンロでおうちレシピを伝授してくれます。
フランス料理というと敷居が高いものでしかないのに、志麻さんが作るといきなり身近になるのはなぜ。
ちなみに志麻さん本は、扶桑社の『志麻さんのベストおかず』とマガジンハウスの『志麻さんの気軽に作れる極上おやつ』が一次通過作品に入ってます。3冊同時とは!
力尽きる前にスパイスにお世話になるのはどうだろう
私もしょっちゅうお世話になってるサイト「サルワカ」からスピンオフの『力尽きレシピ』も面白いの。
HP別に作れるものをカテゴライズしてあるから、力尽きる前のぎりぎりでも作れる料理の提案は、なんとか生き延びられるかもという勇気を与えてくれる。
あとねぇ。昨年からぐっと市民権を得たスパイスカレー本。
現役東大生である印度カレー子ちゃんのわかりやすさ満載かつスパイシーな香りに導かれるようについ手にとってしまう本。微妙に怪しさを漂わせた、でもおされともいえなくない表紙を開けば、日本のおかずにも使えるスパイス提案に目からうろこ。
かと思えば、本格カレー屋さんのレシピ本で真打だ、とばかりに柴田書店がしかけてきた!
いやーん、南インドの料理って美味しいのよねぇ。
ってことじゃなくて、え、柴田書店が「時短」とか「簡単」とか言っちゃうの? と私はその帯コピーに度肝を抜かれたです。「だいたい15分」とか。え、柴田書店が言う…?
あとね、こんなごはんラインナップの中に、ビジネス書界の雄ダイヤモンド社から「ワールド・バリスタ・チャンピオンが教える 世界一美味しいコーヒーの淹れ方」という世界一のバリスタ本が入ってきた。
1杯のおいしいコーヒーを淹れる、ただそれだけのための技術と理論。初心者のためにわかりやすく丁寧かつ簡潔に詰め込んで、ネットで拾い読みすればいいじゃん層に必読書と思わせた迫力。著者と編集者の意地を感じます。
あとねあとね、『純喫茶レシピ』(誠文堂新光社)もかわいいの。色あせた感じの画像と喫茶店レシピがぴったりで。実家の古い台所にあるような昭和食器を取り出してきて、ナポリタンとかプリンとかやってみようって思っちゃう。
あとねあとね、あとねえ♪
ねえ、なんでこんなに地味な本(失礼!)を一次選考通過作品にしたの? 版元への忖度? 2011年の本よ? でも、嬉しいじゃないのー。
17世紀にオランダの人が何食べてたのかなんて、誰が興味を持つんだ、と思うでしょ。興味持つのよ私。暮らしぶりが気になるのよ。この時代の絵って、時に崇高な信仰と庶民の暮らしが一緒くたに描かれているから、名画と言われる絵の中に向かって「あなた何作ってるの?」と問いかけることしばしば。私としてはこのセレクトが嬉しくてね。
料理レシピ本大賞の選考委員は料理本が好きな人が集まってるのねと思わせてくれた一冊でした。
というわけで、選考投票は7月1日から31日まで行われ、8月上旬に版元への結果通知、9月上旬、8日あたり? に発表になります。
この賞、初期の頃はちょっとどうなのよ的に思っていた私ですが、最近は結果が楽しみになりつつあります。今年の大賞はいかに? 予想しながら待とうね ←
こちらの記事は、書店選考委員さんが料理レシピ本の魅力を語っています。
ここにラインナップした本はいずれCOOKBOOK LAB.にまとめますです。お待ちを。
(タイヘンタイヘン)
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![COOKBOOK LAB./綛谷久美(商業出版編集)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/5976409/profile_01e1570415820fba4031ae781bed103e.jpg?width=600&crop=1:1,smart)