廃線跡を訪ねて
いわゆる「廃線跡好き」というジャンルがあります。
かく言う私も、その例に漏れません。
実は、この度の久しぶりの東京滞在を利用して、こんなところに行っていました。
↑ 旧国鉄越中島支線の晴海橋梁(はるみきょうりょう)。
周囲の高層ビル群との対比が最高です。
遊歩道として改装するための耐震工事が決まり、橋の向こう側では既に工事が進んでいました。
手前側はこうして、鄙びた雰囲気を残しています。
「この感じを拝めるのもあと少し!」というネット上の情報をもとに、思い切って行ってみたというわけです。
鉄橋の周りは、驚くほど人が少なかったです。
さて、鉄道の歴史という意味では日本に先行するヨーロッパでも、廃線跡にたびたび巡り合います。
これからご紹介していくのはいずれも、事前の下調べなしに、現地で偶然遭遇した廃線跡ですが、どれも個人的に「グッときた」ものばかりです。
↑ フランスとドイツの国境地帯を走っていた鉄道の廃線跡。
鉄路はそのまま放置されています。駅舎の壁は綺麗に塗り直され、現在この建物は薬局として営業中。
鉄路をそのままたどっていくと・・
信号機や各種標識はほとんどそのままです。今にも向こうから列車がやってきそうです。
世界大戦の影響でフランス~ドイツ間の輸送経路としての役割を絶たれたのち、晩年は完全な「盲腸線」と化したこの路線。
廃線というよりは、長らくの休止状態のようです。その気になれば復活できそうなものなのに・・
ここはスイスとの国境にも近い場所ですが、鉄道網が小さな村に至るまで発達しているスイスとは違って、お隣のフランスは典型的なクルマ社会。この廃線の復活はまず望めないと思われます。
このままいつか、全て草に覆われてしまうのでしょう。
さて次は、オーストリアの小さな村で見つけた廃線跡。
止まっていた宿の前を通る道に、なにやら踏切の跡らしきものが。
これは明らかに廃線跡!
ということで、夢中でその線路の上を歩いていくと・・
いかがでしょうか?
この興奮は、分かる人には分かってもらえると思います・・
さらに行くと、貨物用の車庫の跡がありました。車両や機材が、ご覧の通り無造作に置かれていました。
別に、立ち入り禁止になっているような場所ではありませんでした。
念のため・・
この台車を線路の上でちょっと動かしてみると、まるで子供に戻ったような気分に。
この先もかつての終点まで、線路はずっと伸びていました。
今までのところ、一番印象に残っている廃線跡です。
最後は、私の住んでいる町であるスイス・バーゼルの公園にかかる見事な鉄橋。
この川沿い一帯は、市民たちの憩いの場です。
右側の森に入って少し進めば、すぐそこはドイツとの国境。
なんとこの鉄橋は、かつてスイスとドイツを結んでいた、旧幹線に属していたものだったのです。
鉄橋のすぐ近くの線路がどうなっているかというと・・
三本の線路で非電化!
これほどスケールの大きい廃線跡は、めったに見られません!
あまりにここが気に入ったので、この廃線跡を見るためにたびたびこの川沿いに来るほか、こんなことまで・・
↑ 自分の公式サイトのサムネ画像に、この場所でリュートを弾いているところを使いました!
・・とまあ、今回はひたすら私の趣味のご紹介でした。
でもよく考えると、「現在まで残された遺構や痕跡などを手がかりに、過去の様子を類推・想像する」という点においては、私が専門にしている古い時代の音楽の演奏・研究と、こうした廃線跡巡りというのは、実はプロセスとして同じというか、つながっているんですよね。
実際に我々の音楽仲間や、リスナーの方の中にも、似たような趣味の人がちらほらいます。
ですから「古楽演奏家≒廃線跡が好き」は、決してこじつけではない!と、この際声を大にして言っておきたいのです。