舞台「文豪とアルケミスト(文アル) 余計者ノ挽歌」の感想ってだけ
先日、取材してきました。じっくり紹介文を書けなかったので、ここで個人的な感想を殴り書いてます。最初はネタバレ抑え気味、あとからネタバレ全開でいきますよ。
まず衣装!素晴らしい!細かいところまですごい!とくに芥川先生と中也と乱歩先生の外套の裏地!!ものすごくしっかり再現してあって震えました。髪の再現もすごく良くて、もちろん初日というのもあるんでしょうけど、色味といいシルエットといい立体感といい文句のつけようもない。太宰のアホ毛がぴょいぴょいしてるのがすごい可愛かったんですよね……。芥川先生はだいぶ量が多いのもあって殺陣とか髪がだいぶ散らばってて大変そうだったけど(これに加えて外套だからほんと大変そう)、すごく素敵でした。
あと何より感動したのが、靴なんです。真っ先に目に入った乱歩先生の靴がピッカピカで、この時点で「あっこの舞台、絶対面白い」って思ったんです。個人の体感ですけど、どうしてもコストを割く時に衣装って優先順位が低いというか削られやすい気がして、その中でも特に下半身って抑えられるイメージで、そんな中で靴にめちゃくちゃ気を遣っている感じがすごくあって「好き!!!!」と思いました。歩きやすいさ、動きやすさを工夫してるのはオダサクだけっぽかったので、皆よくあのブーツとかで滑らないなあ……と思いました。
んで1人ずつばばーっと中の人の印象言っていきます。
キャストとか
太宰治の平野良さん。意外にも2.5系ニアミスで、ちゃんと見たの初めてだったかもしれない。でもほんと、平野さんだったからすごくまとまったんだろうなって気がしますねこれ。太宰の躁鬱というか、騒がしいところと落ち込むところの振れ幅がすごいし、ほぼほぼ出ずっぱりで他の人の5倍くらいセリフ量ありそうなのに、あの安定感すごいな。ブレまくる太宰をブレすに演じきったというか。
見た目はわりと可愛い系だけど中村悠一ボイスだから結構フィジカル強い感じもあるから、その辺も込みですごい好きだった。あと上着が大変そうな印象全然なかったから、そこらへんの見せ方もお上手な方なんだなーと思いました。
芥川龍之介役の久保田秀敏さん。美人……すごい美人……おめめがキレイ……ってのが第一印象。見た人全員言うと思うんだけど、殺陣で着物の裾が結構めくれてセクシー担当だった。なんていうか、ありがとうございます(?)。ゲームより少しほわほわっぷりが薄まって強そうな感じというか、なんとなーく全体的に耗弱と平静の間って感じだったけど、展開的に納得でした。武器の扱いもお上手だったなー。
織田作之助役の陳内将さん。陳内さん個人的にどーーしてもフランス語が聞こえてくるんだけど(ゴーバス)、今回は大阪弁が可愛かったです。無頼派ほんと3人仲良しなんだなってのがにじみ出てて、色んな意味で保護者っぽい立ち位置が板についてて見ていてニコニコしてしまいました。体が強くない設定がどこだったのかは分からなかったのであと1000回くらい見たかったですね……。アクションはもうド安定なのは存じ上げてたので、とくに何もいうことないです。うめえ。
坂口安吾役の小坂涼太郎さん。オダサクとの身長差が好きすぎて無理だった。手足がすごーく長くていらっしゃるので、一つひとつの動きがよく映えてるなあと思いました。あと本当にオダサクと常にセットって感じで、隣にいるのを見ているだけで幸せになれる……すごい……。正直なとこ「視界けっこうしんどいんでは……?」と思うんだけど、そういうのを感じさせられることありませんでした。意外と平気なんかな?(色眼鏡的なアレ)
佐藤春夫役の小南光司さん。色んなところでお見かけするし、ちょっと前に同じ場所でヨークシャー・ベルジャン(逆転)を見たばっかなんで、あまりのキャラ違いっぷりに脳がバグった。全体の中では若手なのに一番貫禄ださなきゃいけないところ、すごく頑張ってて微笑ましかったです。初殺陣だそうだけどすごいお上手でした。武器が重かったらしいけど、印象だけど殺陣メインの舞台っていかに武器を軽く作るかに全力ってイメージだったから少し意外だったんだけど、むしろ初だから実際重いほうが動きに説得力でるのかななんて勝手に思いました。
中原中也役の深澤大河さん。口もガラが悪いし動きも大雑把なのにそこからにじみ出る繊細っぷり~~天才か~~!!と思いました。いやまあキャラクター全員に言えることなんですけど、皆表現者だから繊細なところは絶対あって、それをステージの所作で感じさせるの大変だと思うんですけど、すごく素敵だったと思います。銃のアクションもキマってたなあ……。なんかこうサイズ感(?)とかも含めて全体的に「ちゅや!!」って感じだったと思うんだけどそう思いません???
志賀直哉役の谷佳樹さん。色々なところでお見かけするけど個人的には八木沢部長で、この時すごい格好良いと同時に面白かった印象があるんだけど、今回は終始格好良かったな……というロイヤル白樺派すごいな。個人の心情としては太宰に感情移入してしまっているから、鼻につく~~って感じもすごいあるんだけど(悪い感情は一切ないです)、どの角度で見ても格好良いロイヤル白樺派どうなってるんだ……?おいしいところをかっさらっていくあたりほんとずるいなって思いました。でも格好良いから許されるし許してしまう。
武者小路実篤役の杉江大志さん。雰囲気はすごい美少女ヒロインで武者って感じなんだけど、身長が志賀よりでかくて最初マジびっくりしたー。志賀は方々に絡みあるけど武者は基本志賀とセットって感じなので、とにかく志賀とのロイヤルセットが最高でした。ステージで誰よりも志賀と武者の距離が近くて、変な声出そうになったシーン大体白樺派だったの勘弁してほしかった……めっちゃ美少女だった……。
江戸川乱歩役の和合真一さん。動きがいちいちうさんくさくて、すごい乱歩先生だった。ストーリーテラーというか、良い意味でそこまでの空気をぶち壊してくれて目の離せない人だったです。いるだけでふっと気になる存在感のあるお人で、立ち振る舞いが本当にいちいちうさんくさいんだけど、きちんと乱歩先生なりの理屈で動いてるって感じが分かるんだよ……なんで……? 改めて「文アル」での乱歩先生の立ち位置を考えさせられたなーと思いました。
こっからネタバレするよ!!
ストーリーとか
太宰中心にまとまってるけど、少しキャラ多いかな~でもここまでは必要だしどうかな~?というイメージだったんだけど、すごいテンポよくまとまってて良かったと思います。史実ベースでそれぞれの関係性をしっかり踏まえてて、そういう意味で突然ぶち込まれた感のある乱歩先生だったけど、だからこそアルケミストというかシステム寄りのキャラクター全部取っ払った上での説明役としてとてもよく機能していたと思う。というかこの辺の初期実装タイプでこういう役割できるのほぼ乱歩先生くらいだよな……チョイス絶妙だわ。
ゲームがそもそも史実ベースのifなんだけど、そのゲームの中で最もやりたかったであろう「もしあの文豪同士が生きて出会うことがあったら」、やり残したことができたなら、約束を果たせたのなら、謝ることができたなら、本心を伝えられたなら……を最大限詰め込んでいたように思います。細かいこと言い出したらキリないけど、その細かいことの根底にオリジナルの文豪たちがいる、という空気を感じたんですよね。「文アル」自体にいえるんだけど、キャラクターとしては誇張されてるしもちろん違うんだけど、そういう匂いがある。自分はまだまだ知らないことのほうが多いから、知ってたらもっと楽しいんだろうなって思わせてくれるのは、いい創作だと思うんですよ。そういうところが好きだなって。
で、そもそもゲームの前提として文学が消えてしまう危機で、それと「文学が記憶から消えて忘れ去られる、その文学から影響を受けたという事実も消える」みたいな感じのこと言ってたと思うんだけど、文学の存在だけじゃなくて「文学から影響を受けたという事実」について、それはそうなんだけどそういうのあまり意識しなかったので、改めて腑に落ちたし、何なら最初から夏目先生とかあたりの著書を真っ先に全部やっちまったら芋づるで後世の文学全部消えません?古い順に攻めていけば手数割かなくてもいけません?とか思った。まあ侵蝕者自体に大きな意思みたいなのはなさそう?だけど……。
ともかく、そうしたこの世界最大の危機である「文学が消える」ことの重要性が、芥川先生と太宰の生前の生き方の対比みたいなものにうまく乗っていくというか、すごく綺麗に落とし込んであるのが面白かったです。
繰り返しになるけど「文アル」自体がある意味二次創作だけど、その二次創作の二次創作で見たような「文豪の侵蝕化」はすっごいグッときた。こういうの見たかったんだろって言われたら全力で悔しがりながら頷いてしまう……。可能性としてはどの文豪にも概ねありえるんだけど、芥川先生のそこまでの前提がすごい分かるから「ああ……」って見てるしかなかった……。
太宰にとっての神様というべき芥川先生が自身の文学を否定する中で、太宰が芥川先生を救う一筋の蜘蛛の糸そのものみたいなの、あまりにも強すぎる光で本気で震えました。演出次第では(というか絶対的光というイメージの吉谷さんじゃなかったら)一緒に落ちていくというか道連れというか心中オマージュもアリだったと思うんですけどね、でも、とくに平野さんの太宰だったらそれを良しとしないというか、そんなの聞かず、いい意味で芥川先生の感情を無視して「あなたと共に生きる」って言えてしまうと思うんですよ。躁メンタルの時は神に自作渡して感想聞けちゃうくらいだしね、すごいよね。
あと「入水なら慣れてる」とかなんとか言ってた気がするんだけど、こんなんマジで二次創作でしか聞かないないようなセリフ言った?言った???わりと色んな妄想が具現化してた気がする。
演出とか
まずBGMがほぼオリジナルっていうので圧倒的感謝なんですけど、アンサンブルの動きに全体的に品があってそれが良かったんです。あと、侵蝕者がワルツ踊ってたシーンあったんですけど、音楽的なイメージと文豪の時代背景というか、そういうのが完全に一致したところで震えましたよね。このBGM背景にワルツって大アリのアリだと思うんですけど、それがきちんと取り入れられてた現実がヤバイ。ただでさえない語彙力が失われるくらい、文豪関係を抜きにしたら「これが見たかった!!!」という瞬間最大風速は確実にここだった。
あと、カレー食べてる時とかバーとかでメインのキャラ以外がしれっと混ざって「生きてる」やつ、最高でした。全体に出番があって、スポットライト当たってない脇での演技とかもいいんですけど、こういう堂々と出てきてでもセリフはない演技って、すごくいいものです。
最後のだいぶ泣けるとこで乱歩先生の「レッツ☆イマジネーション」はどうすればよかったんだよ!!!確かに説明必要だったかもしれないけどさ!!!空気ぶっこわれたよね!!乱歩先生すげえわ!!!!(真面目に褒めてる)。
あとは本の中とか、あのゲーム内での有碍書(有魂書)のイメージってゲームやってないと難しいような気がするんだけど、音も含めて分かりにくそうな部分を視覚できちんと伝えていたのはいいなと思いました。
円盤が8月ってすごい遠くてしんどいのですけど、ありがとうございます買います。
いやでもほんと芥川先生に惚れてゲームやってて(初期実装の文豪で最後の最後までマジで来てくれなかったけど)、太宰もすごく好きで、色々とぼんやり思い描いていた部分はあったのだけど、それを三段跳びで超えてきて突きつけられたら致死量どころじゃなくて無理ですわ。無理無理、ほんと無理。最高でした。
とかつらつら書いてたらニコ生発表されてるやんけやったーー!!!見ます!!!ありがとう!!