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『わたしのそばできいていて』---本の中の障害者03

題名:『わたしのそばできいていて』 
原題:"Madeline Finn and the Library Dog"
リサ・パップ 作,菊田まりこ 訳
WAVE出版
ISBN:978-4-87290-947-0

まずは絵本としての魅力を紹介.とにかく,リサ・パップさんの画風が柔らかく,優しく,可愛らしい.翻訳は『いつでも会える』(学研プラス)の菊田真理子さん.子ども視点の言葉づかいが可愛らしい.主人公が持ち歩いているウサギのぬいぐるみの表情にも注目.

文字を読むのが苦手な女の子マディが主役.だから,本も雑誌も嫌い.アイスクリーム屋さんのメニューも嫌い.音読の授業では友達に笑われ,「頑張りましょう」のシールしかもらえない.そんな子が読書介助犬ボニーと出会い,ボニーに読み聞かせを繰り返し,最後には「よくできました」のシールをもらい,喜びを分かち合う.そういうお話.

マディは授業のみならずメニューを読むのも辛いのだから,広義の読字障害であろう.彼女の場合,苦手意識から練習の機会を避けてしまっており,クラスの友達に笑われるかもしれないというストレスも大きい.犬のボニーは笑う事なく音読に付き合ってくれるから,マディは音読の練習を継続的に頑張れた.原題の通り頑張ったマディが主役であり,ボニーはひたすら寄り添っただけ.母親と司書さんは余計な介入をすることなく,マディが頑張っている様子をしっかりと見守っている.その事をマディもわかっていることは,母親との会話や「よくできました」シールを司書さんに誇らしげに見せるマディの姿からうかがい知ることができる.

知識・技術獲得,成長,発達,の大前提は,本人の頑張る気持ちと行動である.親や教師はその思いに愚直に寄り添い,見守る事しかできない.知識・技術を無理やり詰め込んだ不健康な状態にならないように.


(補足)読書介助犬の誕生物語や実際の様子は『犬に本を読んであげたことある?』(講談社)『読書介助犬オリビア 』(講談社青い鳥文庫)で知ることができる.図書館や学校で犬に読み聞かせをする活動は「R. E. A. D. プログラム」と呼ばれ,欧米ではかなり普及しているらしい.日本でも公立図書館,大学図書館などで試行的な取り組みとして行われ始めている.

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