阪神・岡田監督に学ぶKPIマネジメント
阪神タイガースが18年振りに、セ・リーグを制した。
2位に10ゲーム以上差をつけての優勝。
得点、失点ともにリーグ最高の数字だった。
文句なしの優勝である。
道頓堀に飛び込む人を見るのも久々の光景であった。
近年の阪神はお世辞にも強豪とは言えなかったが、今年は昨年とは全く違う姿に変貌した。
何がそんなに変わったのか。
要因は様々あるが、圧倒的に昨年とは変わっているのが、
「フォアボール」の数だ。昨年の約1.4倍増えている。
打率は際立って高くはないが、フォアボールで出塁し、走塁でかき乱す。
ホームラン数はそこまで多くない、いわゆるスモールベースボールである。
何故そこまで、フォアボールが増えたのか?
岡田監督が就任し、新たに「追い込まれるまで自分が狙ってる球だけを振る」という意識改革を行なった。
しかし、ただ意識を変えるだけではここまで数字は変わらない。
会社員の方ならわかってもらえるだろうが、部下や同僚に徹底的に言ったところで意識は変わらない。
「訪問数を増やせ」
「電話をたくさんかけろ」
「意思決定者に会え」
毎日口酸っぱく言ったとしてもなかなか意識は変わらない。
そこで岡田監督は、どうしたか。
年俸の査定ポイントに「フォアボール」の数を入れさせた。
プロ野球選手は、決められた査定ポイントがあり、投手なら何勝したか、何イニング投げたか、打者なら何本ヒットやホームランを打ったか、などの数字を元に年俸が決まる。
球団によって、査定ポイントは異なる。
アメリカでは、かなり細かく決められている。
岡田監督はフォアボールを査定ポイントとすることで、ヒットとフォアボールの価値を同等に評価したのだ。
考えてみるとヒットもフォアボールも、出塁という意味では同じである。
しかし、「積極的に行こう」「見逃し三振よりも空振り三振」など根拠のない思い込みがプロ野球界には、蔓延っているように見える。
その意識を変える為に、岡田監督はフォアボールを査定ポイントに追加した。
いわゆる「KPIマネジメント」である。
KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、「重要業績評価指標」のこと。
組織やチームの目標を達成する為の重要な業績評価の指標を意味する。
たとえば、先ほどの会社員であれば、部署の目標が売上をあげることで、訪問数が売上を上げる大きな要因になっているのであれば、訪問数の目標を掲げる。
そして、達成したら一定の評価を与える。
社員は評価が上がるのであれば、必死になる可能性が上がる。
そうすれば訪問数は増え、売り上げが上がるはずなので、組織の目標達成が見込める。
「一生懸命、徹底的に伝える」ことで意識が変わることはない。
目標設定と評価がセットになることで意識が変わる。
ただ、ここで注意して欲しいのはあくまでも「意識を変える為にKPIマネジメントした」ことを学ぶ点と言っているだけであって、「フォアボールが優勝する為のKPIとして適切だった」とは言っていない。
実際、タイガースはフォアボールの数も増えたが、三振の数も増えた。
球をよくみるということは、それだけ見逃し三振の可能性も増えるわけである。
チャンスでしっかり打てなければ、得点には繋がらない。
フォアボールが増えた=優勝した訳ではないのだ。
メディアはわかりやすく、面白いネタだから取り上げてはいるが、他にも要因はあった可能性は大いにある。
その為、KPIの設定が適切だったかは、振り返ってみる必要がある。
あるいは、セ・リーグのレベルが…。
いや、この先は日本シリーズの結果を見てから判断しよう。
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