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子どもと楽しむ妄想の世界

わが家には、子どもが夜遅くまで起きていると「そらちゃん」という見回りがやってくる。そらちゃんは、長いシッポに、腹を引きずりながら、のっしのっしと太い4本足で歩いてくる。つぶらな瞳だが、ひょろひょろと真っ赤な舌を出したり引っ込めたりするのが不気味悪い。シャリン、シャリン。そらちゃんを繋いだ太くて重たい鎖の音が夜の町に鳴り響く。コワモテのおじさんが、そらちゃんの鎖の端っこを持って、子どもが眠っているかどうか1軒1軒確認に回っている。そらちゃんはとっても耳がいい。子どものひそひそ声もすぐに届く。そらちゃんは走るとめちゃくちゃ速い。階段も壁もどこでも這い上がってくる。おじさんが鎖を放したら最後。そらちゃんが自分の部屋にやってくるー!

とまぁ、こんな妄想の話が盛り上がっていたのは、息子が5歳のころ。息子だけでなく、泊まりにきていた息子の友だちまで「は、は、はやく ねないと そらちゃんが やってくる!」と布団に駆け込み、自宅でもしばらくそらちゃん効果が続いたそうだ。笑

実は、このそらちゃん、私の中にはモデルがおり、あるホームセンターのペットショップで売られていた大トカゲのような動物がそれ。値段の下に「そらちゃん」と可愛い名前が書かれており、そのギャップが忘れられず、妄想の話で拝借させてもらった。

そして、この妄想は息子と話をする度に膨らんでいった。

息子が言うには、そらちゃんは夜は見回りという仕事で恐い存在だが、いつもは温厚で優しいらしい。しかも聡明で、みんなから頼りにされている存在でもあるらしい。

おそらく、息子なりにエエ風に解釈したかったのだろう。これは面白い!と乗っかる母。

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そのうち、息子から賄賂ならぬお手紙が届くようになった。この写真は、友人から「親子でお手紙のやり取りを楽しんでね」と頂いた手作りのポストだったが、すっかり空想のそらちゃんと繋がるポストになってしまった。幼稚園から帰ると、真っ先にそらちゃんから返事が届いているか確認する息子。母の字とバレないように、息子のそらちゃん像に沿った内容の返事を書き、ポストに入れておくミッションはしばらく続いた。最終、そらちゃんとのやり取りがフェードアウトしたのは、そらちゃんが宇宙飛行士になって月に行ってしまったという結末だった。

おかげで、息子は想像力豊かに成長したほうだと思う。その想像力は、なかなか一人で留守番ができないくらいのものにもなってしまったが、人の気持ちを想像できるという術にも繋がったのではないかと思っている。

ひとりっ子の息子には、こうした妄想の兄弟姉妹が他にもたくさんいる。その話はまたいつか。笑

(芹川)

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