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夏の最中に|日記
夏の最中に鈍行列車に乗って
君が住むという 町に出かけた。
通勤途中に ドアの上に掲げられた
路線図をみては へえ、こんなとこまで行けるんだと
思っていた町だった。
2つほど乗り換えると
車内はどこか懐かしい感じのするものとなった。
登山をする人や、真っ黒い日焼けした地元の部活か何かに向かう
学生とかが車内にちらほらといるだけになった。
車内放送が恐ろしく小さな音だった。
(ほとんど何を言っているか聞こえない)
最後に列車をまたひとつ乗り換えると
列車は大きな山に挟まれた場所を延々と走った。
山はこれ以上ないくらい緑で怖いくらいの溌剌さを
感じさせた。
時折見える渓谷の清流はぱっと見にもその涼しさが
伝わってきた。
僕は海辺の町で育ったのでそう言った景色がとても
めずらしく、車窓を大変愉しんだ。
朝の5時に出て着いたのは昼過ぎだった。
途中駅で40分ほど乗り換え列車を待ったのだった。
小さな私鉄でもないのにと僕は普通に驚いた。
僕は本当に結構なにも知らないのだなと思う。
列車から外に出ると予想以上に蒸し暑かった。
蝉の声がわんわんと四方八方から聞こえる。
炎天下の中、駅から10分も歩くともう限界だった。
強い日差しがじりじりと半袖半ズボンの肌を焼き、
大量の汗が体を満遍なく湿らせていくようだった。
水分をとらないとまずいなとおもったけど、
周りにコンビニエンスストアは見当たらない。
それほど、田舎というわけでもなく、割と観光地なのに。
何かしらルートを間違えたのかもしれない。
それでも歩道のない割と交通量のある
県道の橋を歩いていると開いているのか、開いていないのか
わからない店の軒先に自動販売機を見つけた。
店先の庇の下に入り、帽子を脱いで、店の中を覗いた。
店の中には埃をかぶったような隙間だらけの陳列棚に
商品が僅かに置いてあったが、店員の姿は見えなかった。
アイスでもあればよかったんだけどと思いつつ、
僕は自動販売機に小銭を入れて炭酸入りのスポーツドリンクの
ペットボトルのボタンを押した。
蜘蛛の巣が少し張っていた取り出し口から商品を取り出すと
蓋を開けて一気に飲んだ。
塩味を含んだ甘い液体がシュワシュワとはじけながら体の
隅々を巡っていくようだった。
僕は一息ついて、残りをいっぺんに飲み干した。