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戦火にある日常。「ガザの美容室」

美容室でキャミソール姿の中年女性が、おそらく友人と電話しているシーンから始まる『ガザの美容室』。
美容室でやたら薄着だな(後でワックス脱毛に備えていたことがわかる)とは思うものの、初めはそれが特別な光景であることに気づかなかった。

イスラム圏の女性がヒジャブを外し、裸に近いような格好で過ごせるのは、そこが女性しかいない美容室だからだ。

離婚調停中の女性に、結婚式のセットアップにやってきた女性とその母と義母、臨月の女性にプロポーズされたばかりのその妹、いわゆる“クズ男”と別れられない女性、ただ1人だけヒジャブを外さず、美容室内でも礼拝を欠かさない敬虔なムスリムの女性…ロシア人移民のクリスティン女性がガザで営む小さな美容室には、それぞれにワケありの女が集う。

わたしはそれぞれに共感する。
相手がマフィアだったり、戦争を体験した軍人であったり、環境は違えど恋愛やら結婚やらを取り巻く事情って変わらないんだな。
どこの国も“女子トーク”ってこんな感じなんだな、と。
でもきっと彼女たちは、家庭や男性がいる場所ではこんな風にあけすけに物を言うことはできない。
男たちが決めたことに従うしかなく、いつ戦争に巻き込まれるかもわからない状況下で生きる彼女たちにとって、美容室で自分を慈しむために過ごす時間は、どれほど特別なものだろうと思う。
「きれいでありたい」という願望は、「明日も生きていたい」と願いでもあるからだ。

やがて薄っぺらい扉1枚隔てた屋外で銃撃戦が始まれば、そんな他愛もないひとときはあっという間にめちゃくちゃにされてしまう。

「もう、うんざりよ」

イスラエル、パレスチナ間で起きているニュースを見聞きするたび、そんな声にならない声が聞こえてくるようで胸が痛くなる。

https://www.uplink.co.jp/gaza/

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