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人としてはちょっと好きにはなれそうもないけれど。「エゴン・シーレ展」

過日、上野の東京都美術館で開催中の「レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才」へ。

ウィーンに生まれ、若い内から才能を発揮するも、わずか28歳で夭逝した画家エゴン・シーレの作品を中心に、クリムトやココシュカなど同じ時代に活躍した画家たちの作品も合わせて約120点が展示されている。

「艶かしい」というのが、改めてシーレの作品を観たときの率直な感想だ。

《ほおずきの実のある自画像》
本当はワリーの肖像と対になっているらしい

メインビジュアルにもなっている、ちょっと斜に構えた感じの自画像とか

《赤い靴下留めをして座る裸婦、後ろ姿》
この背骨の感じ、リアル。

なんというか、近親者にしか見せないようなアングルや表情を捉えた女性のドローイングとか、
「そんな視線で、見つめないで」と思わず目を逸らしたくなる。

この人は女性関係がなかなかに複雑で、
妹との近親相姦的関係にはじまり
14歳の少女をアトリエに連れ込んで逮捕される(警察官に目の前で絵を燃やされる)
ヌードモデルだったワリーと同棲をはじめるも、裕福な姉妹と出会い、ワリーを捨てて妹のエディトと結婚。(ワリーに、結婚してからも関係を続けたいと持ちかけるが、きっぱり断られる)
さらに、エディトの姉のアデーレほか複数の女性と関係を持っていたらしい…など枚挙にいとまがない。

《リボンをつけた横たわる少女》
アンニュイ。

超第三者的な視点では、当時シーレを遠ざけた街の人たちのように「ごめんなさい、正直なところあんまり関わりたくない」人なんだけれど
きっと、彼が醸し出す、繊細さや危うげな感じにどうしようもなく惹きつけられてしまうのだろうな、と共感もしてしまうのだ。

《母と子》
子どもの表情がすごい…

衝撃的だったのは《母と子》と、《母と二人の子ども Ⅱ》の2枚の母子像。

だってこんな不穏な母子像、観たことがない。
西洋画の母子像といえば、聖母マリアとキリスト母子を描いた、荘厳だったり、愛や平和を表現したものが、伝統&定番だと思っていた。

まるで骸骨のような《母と二人の子ども Ⅱ》

あぁ、そうか。
わたし自身が母親といい関係ではなかったから、勝手にシンパシーを感じてしまったのかもしれない。
ふとそんなことを思う。

《プット(アントン・プシカ・ジュニア)》
シンプルにかわいい。

一方、甥っ子を描いた《プット(アントン・プシカ・ジュニア)》はふくふくとした赤ちゃんらしいボディラインが愛らしくて、ちょっときゅんとする。
件の妹の息子であり、妹とアントンが結婚するときはひと悶着あったようだけれど。

「戦争が終わったのだから、ぼくは行かねばならない。ぼくの絵は世界中の美術館に展示されるだろう」

スペイン熱に冒され、28歳でこの世を去ったシーレが、病床で語った最後の言葉。

わたしも年齢を重ねたシーレの作品を観てみたかった。

もっとあなたのことを、知りたかった。

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