【読書メモ】チームX(エックス) ─ ストーリーで学ぶ1年で業績を13倍にしたチームのつくり方
北の達人コーポレーションの木下勝寿社長による「1年でチームの業績を13倍にした」V字回復の実話ストーリー。「勝てるチームの法則」を公開した一冊。
木下氏は著書『売上最小化、利益最大化の法則』『ファンダメンタルズ×テクニカル マーケティング』の出版などを通じて、日本のトップWEBマーケターと呼ばれています。
一方、北の達人コーポレーション(東証プライム上場)の業績は、2016年からの4年で約5倍の成長を遂げた反動で、組織が機能不全に陥っていました。
新規購入者数が全盛期の6分の1まで縮小し、退職者が続出する中で、Z世代のリーダーたちとともに、組織を立て直した実話ストーリーです。
組織を破滅へ導く5つの「企業組織病」と、どん底から組織をV字回復へ導く5つの「X(変革)ポイント」が凝縮された組織開発に非常に参考になる一冊です。
おススメの読者
業績が思うように伸びず、どうしたらよいか悩んでいるマネジメント層
事業拡大を図りたいが、メンバーが自発的に動かず悩んでいる管理者
新規採用→早期退職の負のサイクルで、人材育成に悩むビジネスマン
本書の概要
2023年に出版された300ページ程度の書籍です。
WEBマーケティングは、各工程が数値化・分析できるため、従来のマーケティングよりも精度が高いのが特徴です。
一方で、「行き過ぎた効率化」にも問題があります。採算のよい広告を作ろうとすると、成功した広告を踏襲しがちになり、広告の同質化・マンネリ化が進むのです。その結果、1日の新規購入者数が全盛期の6分の1までに縮小していました。
同社は、利益率が高いことが誇りである一方で、利益率を維持すべきか、それとも利益率を落としてでも売上を確保すべきか、自分たちの存在意義が問われる状況に陥っていました。
そのとき、メンバーの一言をきっかけに、チームの変革(チームX)を決意し、メンバーとともに、あらゆる危機を乗り越え、1年で13倍の成果を出せるようになったチームの実話ストーリーです。
本書の「なるほど!」ポイント
自分への備忘録として、本書を要約しています(原文ママではありません。興味がある方は購入をお勧めします)
<企業組織病>
企業組織病とは、大半のメンバーがかかるビジネス上の病。有能な人間を無能化させる破壊力がある
企業組織病には、(1)職務定義の刷り込み誤認(最初の仕事を範囲だと誤認)、(2)お手本依存症(ユーザーよりも成功例や競合を参考する)、(3)職務の矮小化現象(上記の2つの結果として発生)、(4)数字万能病(数字だけで判断)、(5)フォーマット過信病(1回の成功体験を黄金法則と思い込む)の5つがある
<KPI設定のコツ>
全体が見えていない人を正しい方向に導くには、「これさえやっていればいい」という仕事のガイドラインに加えて、上手く行っているかが明確にわかる「数値指標=KPI」が必要
「何をどうすれば評価されるか」が数値化されると、人は動きを変える。「自分の評価を上げるために助け合ったほうが得」というKPIが設計できると、人を蹴落とすのではなく、助け合いながら成果を上げていくチームになっていく
相反する2つの目標を同時に追わせるのは悪手。部分最適を突き詰めると、全体最適になるよう設計しなければ、KPIマネジメントは機能しない
KPIの設定を誤ると、メンバーが優秀であればあるほど、とんでもないスピードで破滅に向かう。KPI設定後は、その指標で本当に問題がないかのPDCAを回し、正しいKPIに辿りつくことが大事
KPIは「一目でわかること(見える化)」が大事。「残り営業日数」「標準達成率」「実績達成率」が一目でわかる必要がある
確実に届けるときは「率」、安く届けるときは「数」のKPIになる。評価指標は自社の価値観に基づいて設定する
目標を「毎回必ず達成できる人」と「達成できたりできなかったりする人」では思考アルゴリズムが異なる。前者の人は「達成確率の合計100%分の作戦を用意してから実行」する。進捗を確認しながら、達成できないと思ったら作戦を補充するか、既存案の成功確率を高めることに集中する
<共通言語化と教育の仕組み化>
人に仕事を教えるのは、ノウハウを伝えて終わりではなく、相手にやらせてみて、間違っている部分を修正し、再度やらせてみることを繰り返していくのが王道
一枚岩のチームを作るには「共通言語化」が重要。多くの人が理解できない暗黙知を「共通言語化」して形式知化すると、社内の知識レベルが一気に上がる。同じ情報の内容でも、ワードの文章よりも書籍化されたほうが正しい情報だと受け取りやすい
WEBマーケティングは「ファンダメンタルマーケティング」と「テクニカルマーケティング」に分かれる。前者は、商品やユーザーのペルソナ、インサイトを分析してコミュニケーションを設計すること。後者は、クリック率や遷移率、購入率、キーワードなどのデータから顧客とのコミュニケーションを設計すること
ABテスト後、「これ以上のものはないか」「採算が合っているか」を考えて、新たな「X」の広告クリエイティブをつくる必要がないかを確認するようにした。これを「AB-Xテスト」と呼んだ
エモーションリレーとは、ユーザーが広告を見てクリックし、BLPを読んで納得し、HLPに遷移し、購入ボタンを押すまでの各ステップを違和感なく読み進めていく流れ。数字だけで判断すると、エモーションリレーが崩れることが多くなる。ユーザー感情に寄り添った流れにすることが必要
面白い広告やツイートを見つけて、(1)目を留めた理由、(2)読もうと思った理由、(3)クリックしたい理由を言語化する。どんな人にも共通する心理を洗い出し、複数人でお互いにフィードバックしあうことで、着眼法を習得できる
何事も成果を上げるには、「応用」ではなく、「基本」を固めることが最も手っ取り早い
教育の仕組み化では、組織に2人のトッププレーヤーを揃えることが最低条件。1人はプレーヤーとして目の前の成果を上げ、もう1人は教育担当として新人を育て、チーム全体の底上げをする
教育や研修は1回で成果が出るものではなく、日常的に続けるもの。研修後は社内の教育担当が講師となるため、自社オリジナルの教育プログラムを用意することが望ましい。自社オリジナルの教育プログラムこそ、自社の強みの源泉になる
<リーダーシップ>
メンバーに目標と道筋を見せ、結果を出して辻褄を合わせるのがリーダーの仕事
目標とは成長のためのツール。現状の延長線上で頑張っている限り成長はない。背伸びしたり、ジャンプして、ようやく手に届くところに目標を置かなければ成長ツールとして機能しない。できることがわかっているものは目標とは言わない
最終目的逆算思考とは、(1)「結局、何がどうなりさえすればいいか」と最終目的を特定する、(2)最終目的を達成する方法を複数探す、(3)実現させるために最も簡単な方法を選ぶ
達成パーティ会場を抑えたから達成するしかないよね。達成できなかったときのことは考えずに、どうやって達成するかを考えよう
方針・戦略・戦術はリーダーが決め、各チームに落とし込むため、現場メンバーは当事者意識が低くなり、タスクの抜け漏れが発生する。「そもそもメンバーはタスク漏れするもの」という前提で、戦略立案とメンバーのタスク管理はセットと認識する
<その他>
新商品を作るための情報(フィールド情報)と出来上がった商品情報(オリエン情報)には、100倍ぐらいの違いがある。フィールド情報にあたると、クリエイティブの切り口は無限に広がってくる
仕事の成否を判断するときは、きっちり調査や計算をすれば、7割くらいまでは数値で判断できるが、残りの3割は感性や感覚が必要。数字万能病とは、7割の裏付け的なサポートであるべき数字が、あたかも10割まで判断できるかのように扱われること
ヤフーやインスタのような画像や映像中心のSNSには「目立つ広告」、ツイッターやフェイスブックなど文字中心のSNSには「なじむ広告」を使い分けることが大事
全く新しい物を生み出すときやイノベーションを起こすときは、経験がなく先入観がない人から始めるほうがいい。先入観のある人とあえて物理的に距離を置くことで、既存から影響を受けない環境を作る
ビジネスは「良い戦略」と「ブレずに実行する力」があれば必ず成功する。一方で、多くの人は「ブレずに実行する力」を持っていない。だから、戦略が絵に描いた餅に終わる
終わりに
この本を読んで「見える化・共通言語化することでチーム力が高まる」「テキストとフィードバックを連動させる」「他人との視点の共有を通じて刺激を与える」ことの重要性に改めて認識させられました。
木下氏は書籍を通じて、自身の暗黙知を形式知化し、組織内の認識の統一を図り、書籍を通じたフィードバックを実践することで教育の質を高める好循環を創出していますが、全ての企業で実践できることです。
雇用の流動化が進む今日では、暗黙知を持った熟練社員の退職リスクを考慮し、社内テキストによる形式知化と実践による改善が重要であると感じます。
加えて、自分の経験をアウトプットすることで、他人からの信頼や評価を創り出していくことも重要だと実感しました。
今後の仕事において、以下を意識して実践しようと思います。
本記事では、木下勝寿氏の【チームX(エックス) ─ ストーリーで学ぶ1年で業績を13倍にしたチームのつくり方】を取り上げました。
このnoteでは、若手ビジネスマンのスキルアップに関する情報を定期的に発信していきます。