人材育成や組織開発に関係するHowTo本の功罪
人材育成や組織開発にまつわる話は、経営者や人事の皆様の中にはもう食傷気味の方も多い事と思う。
「〇〇しろ」とか「〇〇してはいけない」とか、ウェブでも本でもあーだこーだ言われており「もううるさい!」と思う方も多いのではないか。
しかし、企業が経営をしている以上、経営戦略があり、人事戦略があり、
その中でMake or Buyが問われていくものである。
そんな時に、悩んでいる時に、困っている時に手を伸ばしたくなるのが人材育成や組織開発のHowTo本である。
等々のフレーズとともに、所狭しと並べられている人材育成や組織開発のHowTo本であるが、それらを実際に手に取って、色々やってみた方も多いのではないだろうか。その様な方に1つ聞いてみたい。
HowTo本には効果が出るものと出ないものがある。
それは実感されている方も多いと思うが、その見分け方はというと
「なんとなく」な方も多い。
それは一言で言ってしまうと「文脈」ではないかと思う。
つまり、前後関係の事である。
どの様な文脈でもある程度適応できるもの、一般化されている分野のものはHowTo本が効果を発揮しやすい。例えばExcelの使い方、経理処理の進め方、法務の知識、使えるSaasサービス紹介等はそれである。
一方、その企業独自の社風や個々の社員の現在のスキルや考え方等、複雑な文脈が前提にある場合には効果は出づらいと言える。
簡単に言えば
と言えるものが語られているHowTo本は殆ど役に立たない。
いや、それどころか害にすらなる。
例えば「こうすればチームワークが良くなる!」という本はたくさん出ているが、正しくは「こうしたら(たまたま)うちの会社の社風やメンバーや管理職の関係性やその他の資源、働き方の中ではチームワークが良くなった!」という本である。
それが、社員10人くらいの新進気鋭のベンチャー企業で、エンゲージメントが高い社員しかいないような企業のカリスマ社長が出した自社の成功事例HowTo本であれば、そのHowToを伝統的な大企業で実施しては白い目で見られて終わりという事も大いにあり得るということだ。
では、企業で実際に使える本とはどういうものか?
可能性としては、文脈をごっそり取り去った「学者が理論化したもの」等は
自社でも応用がしやすい(信頼性と妥当性がある程度担保されているものが多い)。
余計なものがくっついていないので、自社の文脈を理論にどう紐づけるかに集中できる為である(しかし、行間は長い)。
例えば、リーダーシップ理論のSL2理論やフィードラーモデル等のコンティンジェンシーモデル、モチベーション理論の自己決定理論等はその代表格だと言える。
しかし、それらの理論やモデルを使って企業内で成果を出そうとすれば、「自分の頭をフルに回転させなければいけない」「そういうことがちゃんと書いてある本(理論の背景や条件等が丁寧に書かれているもの)は値段が高い」「内容が読みづらい」という障害に気づく。
そう語りかけてくる様だ。
では、人材育成や組織開発のHowTo本は全く価値がないのか?と言うと、多分そんなことは無い。
その会社の取り組みや考え方など、「ヒント」になるものはあるかもしれない(娯楽にも良いかもしれない)。改めて考えると、HowTo本を実務に生かせる方は、ゼロからイチを生み出す能力が高い方なのかもしれない。
カトキチ@人材・組織開発コンサルタント