つくる、食べる、かかわる、育つ
皆さん、こんにちは。
NPO法人 Compassion の田中と申します。
「リ◯トンのミルクティー」
おそらく誰しも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
そうです。ミルクティーと言うには甘すぎる味のあの飲み物です。
甘党の私にとって、このミルクティーは高校時代の憧れでした。
当時私が所属していたバスケ部には、厳しい食事制限があり、リ◯トンのミルクティーを飲むことを禁止されていたからです。
うろ覚えですが、その他にもいくつもの制限があったと思います。
「身体は食べたもので出来ている。」
そんなことをよく耳にしますが、スポーツに打ち込む子どもたちにとって、食事というのは大切な要素の一つ。
その中でも身体がぐんぐんと成長する「ゴールデンエイジ期」における食事はアスリートとしての未来を左右するとも言っても過言ではありません。
しかし、この時期のジュニアアスリートの食事に関しては、本人の苦労以上に家庭で食事を作る保護者の負担が非常に大きいのではないでしょうか。
(これを読んでいる保護者の方がうなずいている姿が見えます・・)
食育の難しさは・・・
栄養バランスのとれた食事を用意すること。
これだけでも充分に大変なことです。
しかし・・・
作ったものを素直に口に運んでくれるかどうかというのはまた別の問題であるというのが、ゴールデンエイジ期における食事の難しさではないでしょうか。
大切なのが分かっているからこそ、好き嫌いをする子どもにガツンと言ってしまう。
そうすると、食べてくれるのかと思いきや・・・
かえって逆効果。
そんなことも珍しくはありません。
「食育」ときくとバランスのとれた食事をつくることだけだとついつい思われがちです。
しかし、それを子どもが口に運ぶまでの大人の関わり方も「食育」の重要な要素の1つなのです。
(余談ですが、我が家は兄弟でバスケットボールに打ち込んでいたのですが兄弟で食事の好みが全然違ったので、食事に関しては、相当家庭に負担をかけました。)
ということで!
第4回スポーツカルチャーラボのテーマは「食事×メンタル=∞」!
今回は栄養士の佐藤彩香さんとメンタルトレーナーの小林玄樹氏をお迎えし、ゴールデンエイジ期(4歳頃~12歳頃)の「食育」を栄養、メンタルの側面から掘り下げました。
今回のゲストのプロフィールはこちら
佐藤 彩香さん
管理栄養士、予防医学士
企業、保育園で、栄養カウンセリング、献立作成、栄養計算、店舗運営を経験。その後独立。
実践型の栄養サポートを行い、プロアスリートからスポーツキッズ、ファンアスリートなど累計5000人を超える方と関わる。
現在はパーソナル・チーム栄養サポート、専門学校非常勤講師・セミナー講師、ライター活動、レシピ開発なども行いながら、「あなたのかかりつけ栄養士」として活動。
小林玄樹さん
高校時代、野球部に所属し、東海大学体育学部・高妻容一教授の指導を受けてメンタルトレーニングを実践。その時にメンタルトレーニングの効果を体感し、同教授の元で大学・大学院の6年間、スポーツ心理学・応用スポーツ心理学(メンタルトレーニング)の研究および実践活動を実施。
現在は、メンタルトレーニングを様々なチームや選手をはじめ、指導者、保護者、ビジネスパーソンに対して指導するメンタルトレーニングのスペシャリストとして活動。テンポの良い講演と親身な相談には定評があり、長期間のサポートを続けている選手も多い。
「そもそも、なぜゴールデンエイジ期の食育が大切なのか。」
もしかすると、この質問に自信をもって答えることができる人は案外少ないかもしれません。
今回のイベントでは、知っているようで実は知らないゴールデンエイジ期の食育について栄養士の佐藤さんにポイントを絞って教えて頂きました。
まず、皆さんに頭に入れておいてほしいこと。
それはジュニアアスリートにはとにかくたくさんのエネルギーが必要だということです。
これを読んでいるあなたは
ジュニアアスリートに必要なエネルギーと成人しているプロアスリートに必要なエネルギー。
この2つは同じと思ってはいませんか。
実はジュニアアスリートに必要なエネルギーを分けると以下のようになります。
ジュニアアスリートに求められるエネルギーは
➀生活に必要なエネルギー
②成長に必要なエネルギー
③運動に必要なエネルギー
この中で多くの方が見落としやすいのが実は②の成長エネルギーの存在です。
身体が出来上がっている成人のアスリートに必要とされるのは、主に生活に必要なエネルギーと運動に必要なエネルギーです。
ですが・・・
身体も成長段階にあるジュニアアスリートには成長エネルギーの存在が欠かせません。
運動量が多ければ多いほど、その分消費するエネルギーも多いわけです。
たくさん食べても、それと同じくらい消費してしまえば結局、残るエネルギーはプラマイゼロ。
身体の成長に使えるエネルギーがなくなってしまいます。
捕食などを上手に活用しながら成長エネルギーをしっかりと確保しているジュニアアスリート。
エネルギーを残せず、ほとんど成長エネルギーに回すことができなかったジュニアアスリート。
この両者を比べた時、アスリートとしての未来が大きく変わってくるというのは想像に難くないと思います。
そして、成長エネルギーはジュニアアスリートの保護者の方がよく気にされる「あれ」にも深く関わってくるのです。
そう・・・それは「身長」です。
スポーツにもよりますが、身長が高いというのはアスリートにとってアドバンテージにはたらくことも多いです。
そんな身長が大きく伸びる「成長スパート」と言われるのは一般的に10歳~14歳。(※個人差があります。)
子どもの身体能力や運動能力が著しく発達するゴールデンエイジ期だからこそ、成長エネルギーを意識して、正しい知識のもと、しっかりとエネルギーを摂取することが大切だということです。
そして、もう1つこの時期に著しく発達するものがあります。
それは「神経系」です。
みなさんは神経系が何歳までに出来上がるかをご存知でしょうか。
上の図はスキャモンの発育発達曲線と呼ばれるものですが
この図の参照通り、神経系は生まれてから5歳頃までに、80%の成長を遂げます。
そして、12歳でほぼ100%に成長します。
そんな神経系の発達ですが、神経伝達物質や心理作用のあるホルモンの材料には食事が深く関わっています。
ゴールデンエイジ期の食事はこうした神経系の成長も大きく助けてくれるのです。
さて、ここまでは栄養の側面から食育の大切さについて説明してきました。
しかし、冒頭でも述べたように
食事を介した子どもとの関わり方も「食育」なのです。
そうした関わり方について、メンタルトレーナーの小林さんに教えて頂きました。
内発的動機と外発的動機
みなさんはこれらの言葉をしっていますでしょうか。
内発的動機とは以下のような意味をさします。
内発的動機
好奇心や探求心、向上心など、本人の内部要因から発生しているやる気・動機づけ。
この内発的動機の反対になるのが外発的動機です。
外発的動機とはその名のごとく外的な要因がモチベーションになるというものです。
外発的動機
周りからの評価、成果に対する報酬、逆にできなかったときの懲罰など、外部要因から発生するやる気・動機づけ。
これら2つを比較した時に基本的には「外発的動機づけ」よりも「内発的動機づけ」の方が高いパフォーマンスや学習効果を得られる傾向にあると言われています。
つまり、子どもとの関わりの中で
どれだけ内発的動機を高めてあげることができるかが大切なポイントとなってくるわけです。
そこで参考にしたいのが
『自己決定理論』
自己決定理論では、言わば外発的動機づけから内発的動機づけに変化するまでの道筋です。
自己決定理論では、外発的動機から内発的動機までの変化を5段階で説明しています。
➀外的調整(外発的動機)
②取り入れ的調整(外発的動機)
③同一視的調整(外発的動機)
④統合的調整(外発的動機)
⑤内発的調整(内発的動機)
そして各段階の変化は下図のようにまとめることができます。
ひとまず道筋は分かったけれど・・・
気になるのはどのようにして人を内発的に動機付け、行動を内在化させていくのか。
そこで大切になってくるのが「有能さ」「自律性」「関係性」という3つのキーワードです。
この3つは基本的心理欲求と呼ばれ、これらを高めていくことが、内発的動機を高めていくことに繋がっていきます。
さて、ここまで読んで頂いて
「食育」の深さがすこーーーしだけでも感じてもらえたら幸いです!
日頃家庭でジュニアアスリートを支える皆さんの努力が少しでも多く、子どもたちに届きますように。
イベントにご参加頂いた参加者の皆様、そして佐藤さん、小林さんありがとうございました!
※記事に掲載している画像は登壇者の許可を得て、イベント当日に使用したスライドの一部を掲載しています。