ことのはいけはな;穀雨 第18候「牡丹華」
花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。
はなとことばを立てて相互記譜。七十二候の「ことのはとはなの旅」。
信州上田。嵐の前の前山寺(ぜんさんじ)と無言館。今にも雨が落ちてきそうな空の下でちょっと怖いくらいの藤や躑躅に見惚れた後、にわかに山は風吹き渡り、帰りの参道で背中から礫のような雨を浴びました。その風に乗って気がついたら東京へ戻っていました。
無言館では『村山槐多詩集』(窪島誠一郎編 書肆 林檎屋)を買う。
一本のガランスをつくせよ
と歌った槐多は、躑躅を歌ったのだろうか。
朱や金や、血を歌った。「火だるま槐多」と呼ばれた。
それに青い空や、薄明やたそがれを、青を、切ないほどよく詠んだ。
山躑躅は杜鵑花とも呼ばれる。
中国の故事で血を吐くほど故郷に帰ることを望んで果たせなかった亡国の蜀の王に寄せて、この時期に鳴く杜鵑(ホトトギス)に因む。
酒を飲まずにいられなかった槐多、
躑躅という文字は、フラフラしてまっすぐ歩けないことを言い、
羊が花を母親の乳首と間違えて吸ったところ、花の毒によりまっすぐ歩けなくなることから「テキチョク」という文字を当てられた。
槐多の青に藤もまた滲んでいる。
一斉に風に靡き、大蛇のように木を駆け上り、締め上げて、
下垂れて、流れるように滅んでいく。
*独鈷山礫を浴びる夕まぐれ藤の濫れと火だるま槐多(白余)