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<料理>夜の買い食いと不思議なつくね

天気予報があたって、朝から天気が悪くてうすら寒い。
だけど、昨日の晩から決めてあったお昼ごはんのメニューがドンズバに決まりそうで、ちょっとうれしいくらい。

「鶏だんご鍋」。野菜たっぷりの。

ホワッと湯気があがるそれを、ネギたっぷりで、辛いやつもつけて、自家製ポン酢でいただくのだ!
そうだ、「辛いやつ」はきっと、この前ファーマーズ・マーケットで買った、ちょっと柚子胡椒みたいな感じのホットソースが合う気がする。

もちろん、鶏だんごだって自家製。
寝る前に冷蔵庫に移しておいた鶏肉は、ゆっくり解凍されていい感じになってる。

そして、できあがったお昼ごはんは雲で真っ白になった空を見ながら、ネギまし・ホットソースじゃぶじゃぶ・ポン酢たっぷりの、好みの食べ方でホクホクと食べた。

「今日の鶏だんごは、できがいい」
と、支配人もハフハフしながら褒めてくれる。

「これさ、平たくしてつくねにもできるんじゃない?甘辛く照り焼きにして、丼にするの」
「あ、それは絶対に美味しいやつ!温泉たまごもつける!七味たっぷりで!!」

そんな他愛ない会話をしていたら、ふと、日本にいた頃に食べた「不思議なつくね」を思い出した。

その当時、支配人とわたしは「制作会社あるある」で仕事の時間がずれていて、始まりはお昼前だけど、終わるのが夜10時をまわる…なんていうのが珍しくなかった、というより毎日だった。

外食もよくしたけど、時には24時間営業のスーパーで材料を買って、家で作って食べることもあった。

そのスーパーの入口の脇に、なぜか小さな焼鳥の屋台が出ていた。

屋台と言っても、のぼりやテントがあるわけではなく、安い合板のテーブルに少し大きな焼台をひとつのせただけの、簡素なもの。
焼台の横にある銀盆にすでに焼いてある串が色々とのせてあるので、「売ってるんだな」とわかる程度。

灯りはスーパーのテントについているライトのこぼれたのと街灯だけだから、薄暗い。

よく見ると、テーブルのはじっこには値段や種類を書いた厚紙が無造作に貼ってあるけど、暗いうえに汚れてて、ぜんぜん読めない。

焼いているのは、強面の小柄なおっちゃん。
時々お姉さんのこともあるけれど、だいたい、おっちゃんだった。

買い物を終えて家につくまでに時間がかかるわたしたちは、そこでよく、お腹をごまかすために串を買って立ち食いした。

確か、正肉が120円だかの、値付けだったように思う。

その中で、なぜか一番高かったのが「つくね」だった。
200円したかもしれない。

そのつくねは「不思議」だった。

普通、つくねはこねて竹棒につけてソーセージ状にしたり、ミニハンバーグみたいにしたのを串にいくつか刺したりするけれど、そこのつくねは、棒に鶏のひき肉が「くっつけてある」のだ。

つまり、鶏肉はこねられてない。
ひき肉が竹棒に固定してあるだけ、なのだ。ひき肉が自身の粘りで竹棒にしがみついてる感じ。

それが焼かれて、タレで仕上げられている。
当然ながら、第一印象は「雑だなぁwww」。

子どもがお手伝いでがんばって作った串みたいだった。

何回か焼台でジュージューいってるそれを見かけたあと、気まぐれで頼んだところ妙に美味しくて、わたしはすっかりハマってしまった。

テクスチャはもちろん、こねてないのだからひき肉のツブツブがバッチリいきている。下味なんてついてないから、タレの味しかしない。

それなのに、美味しい!
焼き加減が上手いのかボソボソすることもなく、きちんと柔らかくて鶏の味がする。

ああ〜〜、ここに白ごはんがあったら!!
…と何度、思ったことか。

黙々と串を焼く強面のおじさんに質問する勇気がないまま、事務所の場所が変わったので、わたしはそのスーパーに行くことがなくなってしまった。

あれはお肉やさんの出張なのか、おじさんが仕入れてやっていたのか…すべては謎のまま。

今でも時々、あのつくねを思い出す。
きっと、わたしが作っても同じようにはならないと思う。

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