熱狂的なファンコミュニティをつくるためには〜熱狂顧客戦略刊行記念イベントレポート〜
こんにちは。コミュニティ情報のおっかけnagata(@SsfRn)です。
2/19に開催された「熱狂顧客戦略 刊行記念イベント」に参加してきました。先日参加したファンベースのイベント(レポートはこちら!)と、熱狂顧客戦略とはどう違うのか?と気になっていましたが、結果として感じたのは本質は一緒で、完全に世の中の流れが「ファン」「熱狂」「コミュニティ」というところにきているということでした。
途中からは個人的に注目している、株式会社ヤッホーブルーイング のジュンジュンさんも登壇し、熱狂顧客戦略についてとても密なお話を聞いて来ました。
少々長くなっておりますが、ためになる情報で溢れているので、ぜひ最後まで読んでみてください。どうぞ。
文脈価値とは?
会場に到着すると、今回メインである熱狂顧客戦略の本がお出迎えしてくれました。
ドリンクや食事も用意してくださり、よなよなエールが飲み放題という、最高すぎるおもてなし。今回の記念イベントとなった、熱狂顧客戦略も1冊いただけて、参加した瞬間から幸せな気分に。
おしゃれな食事と、よなよなエールを楽しんでいると、熱狂顧客戦略を執筆した、トライバルメディアハウスの高橋遼さん(@ryo_tak)が登壇。いよいよイベントがスタートです。
高橋さん「ソーシャルメディアのファンが増えていけば、ファンの濃度が様々になっていくじゃないですか。Facebookページにはいいねするけど、投稿にはあんまりいいねをしない人たちがいる中で、次のマーケティングの一手として、ブランドが好きな”より濃いファンの人たちを対象にどういったことができるのか”ということを考えたのが、今回の熱狂顧客戦略というお話になっています。」
熱狂顧客戦略の概要のお話から進めた、高橋さん。この言葉から、ターゲットは新規ではなく、既存のファンへ向けたものだと伺えます。
次に、ミニ四駆やリーバイス・エアマックスなど、自分の世代で流行ったものを例に挙げ、この世代を”社会的ブームが成立した最後の世代”という表現をされていました。マスのコミュニケーションでは伝えづらい世の中になっている中で、企業にもその影響が出ているとのこと。この時代、老若男女すべてに伝えきるのはかなりハードルが高いということですね。
高橋さん「マーケティングというレンズで覗いた時に、どんな時代になってきたのか見ていきたいと思います。マーケティングの世界では、狩猟の時代から農耕の時代、そして今は宗教の時代に入って来ているのではないかと言われています。狩猟の時代とは、企業の成長が前提にある時代で、人口も右肩上がりで増えていて、新たな顧客がどんどん生まれていて、そこに銃口を向けるのがマーケティングという活動。90年代以降では、新規の顧客を取っていくというよりも、今買ってくれたお客さんに対して、既存顧客を手厚くもてなそうであったり、既存顧客のライフタイムバリューをいかに上げていくかというお話が起こり始めていました。そして、今は宗教の時代に入っています。自分自身(ユーザー)が生きる中で、どういったものが心地よい場所だったりとか、どういうブランドであれば、自分の生活を豊かにしてくれるものなのか。というのが非常に重要になっているのではないでしょうか。」
マーケティングの考え方の変化が読み取れますね。ここにおいて重要な考え方として、高橋さんは下記のまとめをしております。
高橋さん「どういった生活が好きなのか?どういう生活が豊かに感じるのか?がこれから僕たちがマーケティングをしていく中では、すごく重要になっていく考えなのではないでしょうか。つまり、ブランドはその人にとってどういう存在であるのか?人生や生活において、どういった位置付けのブランドになっているのかが、すごく重要になっていると思います。」
高橋さんは、ウォークマンを例に噛み砕いて説明を続けていきます。
高橋さん「ウォークマンに関しても、いろんなシーンで使っていらっしゃる方がいると思うんです。例えば勉強に集中したいとか、通勤の時にストレス軽減のために使ってるとか、プレゼンの前に自分の気持ちを奮い立たせるために使うとか、寝る前にリラックスするために使うとかですね。これって利用シーンとしては普通ですが、この人たちはウォークマンをどういう存在としているかというと、通勤時に使う人にとっては”どこでもドア”なんじゃないか。プレゼンの前の人にとっては”お守り”というか、ちょっと頼っておきたいものだったりするかもしれません。つまり、利用シーンであったり、その人が使う文脈によって価値が変わっていくんじゃないかなと思っています。これからのマーケティングにおいては、こういった考え方で物事を見ていかないといけないんじゃないかというお話です。これが今ある、宗教の時代におけるマーケティングのあり方なんじゃないかなと思っています。その経験の中で獲得されている感情というのを、文脈価値と呼んでいます。」
具体例を挙げて、宗教時代のマーケティングをわかりやすく説明してくれた高橋さん。モノからコトと言われているこの現代。それをベースにブランドがどういう存在であるのか?を考えていくことが、大切とのこと。キーワードは”文脈価値”です。
高橋さん「文脈価値がどういったものかというと、”顧客に主観で知覚されるものであり、その文脈設定は完全に顧客に依存する”というふうに言われてたりします。なので、企業が勝手にどうこうできるものではないということですね。そのブランドの体験というのは顧客の中にあって、それぞれの経験の中でブランドというものが体験されていく。この考え方が、根底にある指針になります。」
次に、Instagramのハッシュタグについて、この文脈価値について説明をしてくれました。
高橋さん「最近のニュースを見ていると、Instagramのハッシュタグのフォロー機能ってすごくそれ(文脈価値)を象徴しているんじゃないかなと思います。誰がコンテンツを投下するとか、どんなものを写真撮るかということも、もちろん大事なんですけど、ソーシャルメディアの中ではハッシュタグを用いてそのコンテンツに意味づけをしていくという考え方が、ユーザーの中にはあります。ハッシュタグを見ることで、その人がどんな体験をしているかが見えるわけです。」
確かに自分のインスタ投稿を見返してみると、その体験やモノに対して感じていることや、抱いているイメージのハッシュタグをつけていました。例えば、フレスコボール(ビーチスポーツ)に#ファッションなど。フレスコボールはスポーツなのに、私は一種のファッションだと感じているということです。それがまさに私が感じている文脈価値ということなんですね。
ブランドの輪郭は何によって作られる?
高橋さん「どうやって、ブランドの輪郭が作られるのか?というのが根本の大きなテーマになっています。何によってブランドが形作られていくか?というお話です。」
この熱狂顧客戦略の根本にあるテーマを伝えてくれた高橋さん。確かに個人的には、この抽象的な箇所には多くの疑問点を持っていて、どうすればブランドが作られていくのでしょうか?
高橋さん「80年代はブランドのアイデンティティであったり、ロゴってこうあるべきですよねみたいな話とか、もっとデザインがこうとか、どういうふうにマーケティングしていくか、という、自分たちはどういう存在なのか?それをどういった方法で伝えていくのか?がすごく大きく議論されていた時代でした。ただ、今見てきた通り、ソーシャルメディアは一人の感情が表面化するといいますか、露わになるプラットフォームだったりするので、今の時代においてはこのブランドがどういうふうにお客さんと信頼を結んでいるのか?だったりとか、どういうふうな価値をお客さんに提供しているのか?というところが、ブランドを作っていく上で一番大切になるんじゃないかなと思っています。」
ブランドとは、お客さんが感じる価値によって作られる。ものではなくコトを提供し、価値を作り出していくというイメージでしょうか。ここで、この熱狂顧客戦略において、とても大切な考え方を伝えてくれました。
高橋さん「お客様といろんな打ち合わせや提案をしていく中で、”囲い込み”という言葉が多く出てくるんですね。他でも、ブランドでどうやって囲い込むか?っていうキーワードがすごく使われているんじゃないかなと思います。ただ、ブランドがお客さんを囲える時代ではないと思うんです。キャンペーンとかで囲おうとするわけですけども、それを乗り越えて、SNSで人々は会話をしますし、企業の知らないところで色々な道を通って行きますので、囲い込めない世界がそこにあるんです。ブランドはどうやって囲い込んでいくのか?ではなくて、ブランドに熱狂しているお客さんとどうやって一緒に未来を描いていくのか?ってことを考えた方がいいんじゃないかと思います。」
まさに狩猟から宗教へ、というパラダイムシフトですね。また、ここで頭をよぎったのがファンベースのさとなおさんの”マーケターは上から目線をやめよう”という言葉。ついマーケターであれば使ってしまう”囲い込み”という言葉も、どこか上から目線に感じてしまいます。お客さんをどういう関係を築こうとしているのか?それは使う言葉に表れる気がします。
また、予算が限られている企業こそ、視点として既存のお客さんに向けるべきだと、高橋さんは言います。
高橋さん「予算が限られている中だと、購入するまでにアプローチするのではなく、購入した後の人たちというのをどういうふうに考えていくか?というのが重要になってくる。繰り返し買っている人はどういう人なんだろう?ブランドに熱狂している人はどういう人なんだろう?とか、熱狂して最終的に勧めてくれる人はどういう人なのか?というのを考えていくことが重要だと思います。新規も大事なのはわかるんですが、既存のお客さんに”またもう一度そのブランドに会いたい、利用したい”と思ってもらうかが、いかにできるか?というところが、これからのマーケティングの大きなテーマになってくると思います。」
CRMはなぜ失敗した?
次に高橋さんは90年代に流行ったCRMについて、お話を進めていきます。
高橋さん「CRMという言葉があります。既存のお客さんとどういうふうに対峙をしていくかというマーケティングの手法が、90年代ぐらいに出てきましたが、とあるアンケートによると、CRMが失敗したと言われています。ではなぜ失敗したのか?もちろん色んな要因はあると思うんですが、一番大きなボタンのかけ違いって実は”多く買ってくれている人=ブランドを愛してくれている人”という勘違いがあったところなのではと思っています。」
多く買ってくれている人=ブランドを愛してくれている人。これはユニクロにいた私としても、その認識でいましたが、どうやらそこが大きな落とし穴だそうです。
高橋さん「実は購入量と、ブランドの熱狂量(人にどれだけ勧めたいか)というのは、1つのベクトルでは括れないのではないかと思っています。購入者にインタビューを取ってみたら、意外とブランドが好きだから買っているという人ってそんなに多くなかったんです。お店がたまたま近くにあったからとか、習慣的になんとなく買っていたみたいなお客さんが結構多いんです。なので、ここ(多く買ってくれている人=ブランドを愛してくれている人)は分けて考えていくことが大事になってくるんじゃないかと思います。」
確かに、私もパンツは絶対ユニクロを買ってしまいますが、特別ユニクロが好きかというとそうでもなく、なんとなく習慣的に買っています。こういう人が世の中に多いんですね。なんか一安心。
高橋さん「マーケティングデータを調べていると、買ってくれた人に友達紹介キャンペーンをやっているんですが、これはうまくいかないことが多いんです。それは何故かというと、すごく明快で、お客さんの熱狂を作れていないまま、友達紹介キャンペーンをやってしまうからなんです。とにかく勧めましょう!というアプローチではなくて、まずはしっかりとブランドに熱狂してもらうことが大事。その中で、熱狂した人たちにどうやって勧めてもらうかという施策を打つ。この順番を守っていくことが重要なんじゃないかと思っています。」
とにかく手法に頼るのではなく、まずは土台を作りましょうということなのだと、私は解釈しましたが、これってまさにファンベースですよね。
高橋さん「本当に大切な顧客って誰か?って考えた時に、多く買ってくれている人だけを見てしまうと、見誤ってしまうところがポイントです。そこはブランドに熱狂している人たちをどういうふうに見つけ出していくか?というところが大切になってきます。考えてみれば当たり前なんですが、一緒にしがちなところで、これがこれまで多かったのではないかなと思います。カスタマジャーニーってよく聞く人も多いかと思いますが、よくコンバージョン(購入)までをゴールとしたカスタマジャーニーを見たりします。しかし、僕らは買った後の方が重要なんじゃないかと思っています。どう熱狂させていくか?どういうふうにブランドを好きになってもらうか?顧客の熱狂を最終ゴール地点にしたカスタマジャーニーというのは必要になってきます。」
どこをゴールにするのか?それによって、着目するポイントが変わる。大切なのは、購入前ではなく、購入後ファンにすることである。と力強いコメントをいただきました。
バイネームで語れますか?
高橋さん「さとなおさんとかは、顧客の2割がファンであると言っております。我々(トライバルメディアハウス)の調査では、ファンより熱狂しているのがだいたい5%。ブランドに熱狂した人がそれぐらいいるんじゃないかと考えております。それは業界関係なくですね。その人たちが向けているブランドの熱量というのが、どのような文脈の中で発揮されているものなのか?それを直接知っていくというのが、ブランドの資産を最大化していくことに、繋がっていくんじゃないかと思っております。」
この5%の熱狂顧客を知って理解する。それも”直接”が大事と高橋さん。直接情報が得られる関係性作りが必須ということなのでしょうか。
高橋さん「ヤッホーブルーイング さんはそこが強みです。ブランドのファンに人たちが、どんな人でどんな行動をとるか、これがバイネームで語れるっていうのが、彼らの一番強いところなんじゃないかなと思っております。このファンの〇〇さんだったら、きっとこれ飲んでくれるよね、とか。こういうふうにしたら、こういうことやってくれそうだね、みたいなことが考えることができる。それも一人の社員だけではなくて、会社全体で共通言語としてできるというのが、ヤッホーブルーイング さんの最も大きい強みなのではないかなと思います。」
改めてヤッホーブルーイング さんのすごさを実感。こんなことが会社でできるなんて、正直信じられませんでした。ただ、ファンを大切にしようとしている企業は、こういったところを大切にしようとしている傾向が見られる気がします。
製品を中心としたコミュニケーションの限界
高橋さん「ヤッホーブルーイング の店長(社長)もよく言われていることなんですけども「製品だけでは売れていかない」と。どういうふうに顧客を熱狂させていくかと考えた時に、製品を中心としたコミュニケーションに限界がきているのではないか?と思っています。」
単にモノを売るだけの限界は来ているとのこと。これを打破するために、1つのマーケティング理論を用いります。
高橋さん「グッズドミナントロジックというのがあるんですけど、これは”この世の中にはモノとモノ以外の何かが存在する。モノじゃないものはサービスである。”という考え方です。それに対し、サービスドミナントロジックとは”世の中にある全てのモノはサービスである”という考え方。例えば、水をとってみても、この水というのはモノではなくて、このモノを伴ったサービスなんだ!というふうに考える・そういうメガネで見ていくんです。」
G-DLとS-DLの考え方で、現象を分解し始めた高橋さん。説明は続きます。
高橋さん「何が重要なのかというと、グッズドミナントロジックという考え方の中では、消費者というのは、単純に企業が作り出す価値を消費する人なんだ。というふうに考えられるんですけど、サービスドミナントロジックの中では、消費者は企業の中で共創して価値を作り出していく”価値共創者”であるというふうに言われていたりします。つまり、単純にモノを売って消費してくれるだけじゃなくて、その後にしっかりと一緒に価値を創ってくれるファンなんだ。というのが、サービスドミナントロジックの消費者の捉え方です。」
消費者、顧客をどういう存在として捉えるのか?この意識だけでも、かなりアクションに差が出るような、大きな違いですね。
高橋さん「例えば、12/24に高級そうなレストランでは、男たちがビールを飲むのではなく、男女のカップルが来て高いワインを飲みますよね。いかに、おいしいワインを出しても、いかに一流のサービスを提供しても、お客さんが伴っていないと、このレストランの価値は最大化されないわけです。こうやってお客さんとともに価値を作り出すというのが、サービスドミナントロジックなんです。なので、これからのマーケティングでは、企業が一方的に価値を押し付けるのではなくて、お客様が一緒に価値を作り出していくという考え方の元で、マーケティングを考えていくのが非常に重要です。」
熱狂顧客戦略で伝えたかったこと
前半の最後に、高橋さんは熱狂顧客戦略で伝えたかったことを、まとめいきます。
高橋さん「ユーザーが自分の生活や人生の中でブランドをどんな意味づけができるのか?というところから、モノを選んで買っているんじゃないかというのが、文脈価値のお話。そこに、企業とユーザーのあいだにギャップというのがあるんじゃないかなと思ってます。ユーザーが買う理由は文脈価値。すなわち、ユーザーにとっての意味付けによって、価値は作られているんじゃないかなということが、この本で最もお伝えしたかったことになります。ブランドは価値を提案できるが、提供できない。ブランドが提供する価値を決めて、”この通りやりなさい”ということは言えない時代になっていることです。ブランドの未来を照らしてくれるのは、企業ではなく、熱狂している顧客なのではないかなと思っています。」
文脈価値の重要性を最後まで伝え続けた、高橋さん。そして、それは顧客との関係の重要性も、同時に示していたと思います。
高橋さん「ブランドと一般消費者と熱狂顧客が3者1体となって、コミュニケーションをしていく。熱狂している人たちとどうコミュニケーションを取り、熱狂している人たちがどう一般消費者に影響を及ぼしていったりというところが、大事になっていくのだと思います。」
ここで社員の重要性を説いていく高橋さん。
高橋さん「顧客の熱狂を作るのは、社員やスタッフだということです。これまでは、統一したストーリーを企業が訴えていましたが、今はもうそういう時代じゃないので、現場のスタッフの方々が個別のブランド体験というのを、お客さんに提供しているのが一般的なのではないかなと思っています。まさにここでやり取りされる経験で、ブランドは作られていくということです。なので、現場の声を、経営者へフィードバックしていくことがとても重要になっています。」
高橋さん「熱狂マーケティングから熱狂経営へ。と書いてあるんですけども、マーケティングと組織論とか経営戦略ってどんどん垣根がなくなっているんですね。自分たちがどういうブランドを伝えられるかというところでも、メッセージの中でのコミュニケーションではなく、会話の中でのコミュニケーションがブランド体験になっていいきます。ここが、非常に重要になっていくのではないかと。ここも、本で伝えたかったところです。」
熱量たっぷりで一気に駆け抜けた前半。熱狂顧客戦略の重要性がひしひしと伝わってきました。さて、ここからはヤッホーブルーイング の佐藤潤さんにも登壇してもらい、事例を踏まえてお話を伺っていきます。後半も熱い時間が続きます!
ヤッホーブルーイング ジュンジュンさん登壇!
佐藤さん「私共の会社の説明と、お客様とどのようなコミュニケーションを取っているか?というところを、少しお話させていただければと思います。」
いよいよ、ヤッホーブルーイング 佐藤さんのお話です。ヤッホーブルーイング さんといえば、このファンマーケティングやコミュニティについてリサーチすると、まずヒットしてくるような、ファン作りにいてとても素晴らしい企業さんなのです。私も個人的にかなり気になっています。
佐藤さん「ニックネームが”ジュンジュン”といいます。私の会社はフラット組織でありますので、ニックネームで呼び合う文化なんです。」
いきなり、すごい企業文化を出してきました。フラットで社内の人間関係がとても良さそうなのが伝わってきます。ならば、ここからは私もジュンジュンさんと呼ばさせいただこうと思います。続けて、ヤッホーブルーイングには何故ファンが多いのか?その要素が垣間見える情報が次々と出てきます。
ジュンジュンさん「1997年によなよなエールというものを作りまして、今年で21周年を迎えております。ラベルと価格は当時のまま変わっていません。コンセプトが”家庭で飲める本格エールビール”です。ミッション、会社の経営理念がございまして、”ビールに味を。人生に幸せを”というのがミッションになっています。”日本のビール市場にバラエティを提供し、新たなビール文化を創出し、ビールファンにささやかな幸せをお届けする”というところです。何か企画を考えるときは、このミッションに通じているものなのか?というところを指針に持っていて、その中で企画を考えています。」
WhyやHowの部分が明確で、その中に沿って考えることはブレないとのこと。そういう姿勢と徹底ぶりが、企業文化や体質を作り出すのかもしれません。
ジュンジュンさん「ここで会社の増益を支えている我々の経営戦略をお伝えすると、マイケルポーターさんがおっしゃられているんですけども、”トレードオフ”。競争上必要なトレードオフを伴う一連の活動を選び、一つの戦略的目標に向かって、活動間のフィット感を生み出すことである”というところで、トレードオフしなさいと。マーケティングおいてAかBかの道があったら、どちらかを取りどちらかを完全に捨てると。AとB両方欲しいということはしないということです。つまり差別化です。徹底的な差別化をやっていきなさいというところを、実直にやっている企業になります。」
シンプルですが、実行し切るのがなかなか難しいこの戦略。そういえば、さとなおさんも”全ての人をファンにしようとしてはいけない”とおっしゃっていました。この戦略もファン作りへ大きく繋がっているんですね。
ブランド開発における差別化
ジュンジュンさん「我々10種類ぐらい製品を出しているんですけども、そのブランド開発についてお伝えしていこうと思います。まずは、”ターゲットは明確に”。ものすごくターゲットは狭くしております。次に”キャラクターを立てる”。お客様には製品を通り越して(製品を)パートナーと思って頂きたいというのがあります。また、多くの人がいいね!というデザインは、逆に僕たち的にはバツと。だいたい1~2割ぐらいの人がいいかもと、誰かターゲットの人にぷっと刺さるというのが私たちにはとっても心地よくてですね。賛否両論があった方がいいと。最終的には他社さんが真似を躊躇するぐらい徹底した差別化を行なうのが、私たちのブランド開発コンセプトとなっております。」
ここはもっとじっくり聴きたい箇所ではございましたが、要点は全部で6つのようです。具体的かつ、尖にいっているようなものばかりで、この経緯で作られる製品を早く手に取ってみたくなります。ここで製品を用いて、具体的な説明をしてくれました。私も大好きな”水曜日のネコ”です。
ジュンジュンさん「例えば水曜日のネコ。元々クラフトビールの中で、女性向けのビールというのが存在していなかったので、女性向けのビールを作ろうとなったのがきっかけです。ターゲットは、30歳前後の働く女性。当時(4~5年前)は水曜日がノー残業デーとか言われている時でして、”週の真ん中の水曜日は家に早く帰って、少し贅沢な時間を過ごしませんか?”というコンセプトを込めたネーミングと、キャラクターを作りました。今や1000万本のヒット商品となっています。また、そのターゲット以外にも、ビールが飲めない男性の方とか、若い方にも飲んでいただいたりと、結果的にそんなところにも繋がっていたりします。」
まさかの裏ストーリーの緻密さに驚きました。ターゲットを明確に、そのターゲットがどんなシーンで飲んでほしか?ユーザー体験まで意識して作っているとのことでした。さすがすぎます。。。
定期購入サービスがファンコミュニティ?
ジュンジュンさん「我々Eコマースの通販サイトをやっておりまして、ここを少し説明したいなと思います。熱狂的なお客様を取材してわかった2つの軸があります。まずは製品軸。よなよなエールが好きです!というところから、よなよなエールを知って理解して、トライアルをして、リピートして、そして推奨していくという行動ですね。そこから急に企業軸に興味を持ってくれるんです。Eコマースでもスタッフの顔を出していたりとか、お客様との対面のコミュニケーションを心がけていて、企業軸に興味持ってくると”なんだこの会社は?””なんだ?このスタッフは?”となっていき、熱狂的なお客様になって、また新しい推奨で、新しいお客様を連れて来てくださるという循環が出てきています。」
製品軸と企業軸。この2軸の分析はとても興味深く、また納得感が強いものでした。熱狂的な顧客は、皆企業軸のファンということですね。
ジュンジュンさん「製品軸と企業軸の架け橋として、EC・ダイレクトコマースがあります。そして、熱狂的なお客様にしていくには、ファンイベントが有効といいますか、お客様とのコミュニケーションをとる中で、ファンイベントがとても良いと考えています。」
EC・ダイレクトコマースとファンイベントがいかに重要な役割を果たしているかが、お分かりになったかと思います。この2つをこれから深く聞いてみたいと思います。
ジュンジュンさん「通販サイト、非常に力をいれているところでございますと、年間契約ですね。2007年に始まった定期購入なんですが、直営サイトにできる購入サービスってなんだろうと?考えて、力を入れております。1年間の契約で、毎月24缶をお届けしているのですが、24缶の中身はお客様が自由に選んでいいというものです(10種類の中から組み合わせを選べる)。」
ここで高橋さんが疑問をぶつけます。
高橋さん「これ普通に考えると、ちょっとおかしなことですよね。ビールってその日疲れた時に、ふらっとコンビニに寄って手に取ると思うんですけど、1年間それをコミットしてもらうということですもんね?」
ジュンジュンさん「そうですね。元々のこの通販サイトの位置付けが中間。ある程度”よなよなエール好きかも!”という方に向けて、もっと踏み込んで楽しんでみませんか?というコミュニケーションです。」
高橋さん「これは製品だけではなくて、ヤッホーブルーイング さんのことも好きになりそうな人たちが申し込んでいるんですか?」
ジュンジュンさん「そうですね。年間契約には特典がありまして。毎月会報誌を渡していたり、あとはファンイベントの先行予約の権利があったり、醸造所見学ツアーに無料でご招待してみたり、都内のお店のご利用料金が10%OFFになったりとしています。ただ、お得にビールを飲むということではなくて、うちと一緒にクラフトビール市場を作っていく熱狂的なお客様が生まれる”エンターテイメント型定期購入サービス”といったところを目指しています。」
定期購入が、まさかのファンコミュニティ化しているということです、、!お得なのはもちろんのこと、あくまで提供しているのは”クラフトビール市場を一緒に作っていく”という体験なんですね。
ジュンジュンさん「学びと交流と共創。この3つをぐるぐるPDCAのように回していって、お客様にLOVE度を上げてもらうことを意識しています。」
年間契約のルールとして、この循環を意識しているとのこと。抜かりがありません。。
交流の場を生み出すこだわり
ジュンジュンさん「好きな人同士の交流は熱を生み出すので、その場しっかり作ることをとても大切にしています。元々やっていたのは”宴”というものです。これはただの飲み会ではありません。結構ご相席になることがありますので、クイズなんか入れながらやっています。原材料食べ比べクイズなどをアイスブレイク要素を入れながら、お客様同士仲良くなっていただいています。交流と学びの要素を入れながら、お客様同士が楽しんでもらえる環境づくりをやっています。このイベントは年間800名ぐらい来ていただいておりまして、販売開始30秒以内で売り切れてしまいます。」
リアルな交流の場を作ることに、とても強いこだわりを感じました。販売開始30秒で売り切れるなんて、、、ファンの熱量の高さが伺えますね。
ジュンジュンさん「4000名の超宴というイベントがあるんですが、、我々のイベントは手作りなんです。自分たちで企画を考えて、司会とかも全部自分たちでやるんですね。それがまた喜んでもらえるんです。」
私、少し前までイベント会社にいたので、4000名の規模を手作りするというのが、どれほど大変か身に染みてわかります。それを自分たちで作り出す徹底ぶり。そして、それがちゃんとお客さんに伝わっているというのが、本当にすごいところだと思います。ファンイベントの域を超えているようにも思えますね。。
ジュンジュンさん「あとは、オンラインで飲み会をやっているんです。ただカメラの前に座りながら、150人お客様とビールを飲むんですけども、オンラインでもお客様と交流しております。」
ジュンジュンさんのお話の後、交流会が開催され、最高に楽しい一夜が幕を閉じました。
最後に
いかがでしたでしょうか?このイベントの熱量が伝わりましたでしょうか?
このイベントでの話が全て素敵で、聞いてるこっちが熱狂してしまいました。
お客さんに熱狂してもらうということは、つまりファンになってもらうということだと感じました。冒頭にもありましたが、ファンベースと通する箇所が多く、本質的なことであることを示していると思います。
また、今後のマーケティングは、この熱狂・ファンというワードが外せないものになっていくのではないかと思います。マーケターは必見です。気になる方はぜひこの辺りの領域を勉強してみてはいかがでしょうか?
最後に、高橋さんがジュンジュンさんに「ファンの方の名前を何人覚えているんですか?」という質問をされていて、「100名〜200名」と答えていました。驚いたのと同時に、ますますヤッホーブルーイング さん興味を抱きました。ヤッホーブルーイング さんについては、また後日、別の記事で書いていきたいと、強く思いましたので、これは必ず実施していきたいと思います!
それでは、長文読んでいただき、ありがとうございました!
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