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【ルサンチマン】「儲けているフリしてる奴」は相手にしなくて大丈夫

投資詐欺が「急増」しています。

投資ブームの影響で、SNSを利用した投資詐欺の被害が急増しているわけですが、しかしこれは少し考えてみれば当たり前で、なんら驚くべきことではありません。

ロジックは、こうです。

1.投資ブームにより、多くの初心者が市場に参入し、知識不足や過信から詐欺に対する警戒心が低くなる

2.新規投資家の増加は詐欺師にとって絶好のターゲットとなり、テクノロジーの進化と相まって詐欺手法も巧妙化する

3.ブームによる市場のボラティリティ(変動性)の上昇と過大評価された資産は、詐欺の温床となる

4.SNSでの偽情報の拡散やコミュニティ効果により、どんどん詐欺に引き込まれやすくなる

SNS × 詐欺、とてつもなく強力な組み合わせです。

更に驚くべきことですが、これは詐欺師のような明白な犯罪者だけでなく、私たち一般のビジネスパーソンでもSNS上では詐欺師になる危険性があることを認識しておくべきです。

ついつい「いいね」や「インプレッション」あるいは実質的な「現金」を稼ぎたいがために、SNSで毎日のように目にする「簡単に儲かる」「短期間で高収入を得られる」といった誇大広告をしてしまいがちです。ですがこれは現実とは大きく異なることが多い。

そのような投稿が増えていくということは、多段階販売(MLM)やポンジ・スキームなどについての隠れ蓑もまた増えていくということですから、投稿をする側も、投稿を閲覧する側も、双方が気を付けねばなりません。

あるいはInstagramやTikTok、豪華な車や高級マンションと一緒に撮影された写真や動画を投稿し、自分が成功していると見せかけるユーザーが多く見られます。しかし、これらの投稿の多くは虚偽あるいは虚像です。

こういうのは他人の車や借りたマンションで撮影されることが多く、実際にはその人物が所有しているわけではありません。目的は、見た目の豪華さでフォロワーを惹きつけ、フォロワーからお金を巻き上げるためです。

私自身はこの手の輩にひかっかりたくない、または皆さんにひっかかって欲しくないと考えているので、注意喚起や啓蒙の意図もありここまで書き進めてはいるものの、やはり金融リテラシーを高めるのは容易ではありません。

では金融リテラシーが高まるまでの間、私たちが彼ら「成功者を装うユーザー」が何をしているのか、その「原理」を知ることで、ある程度は対処が可能となります。

では、その「原理」とは何か[1]?


ルサンチマン

ルサンチマンとは、19世紀ドイツの哲学者フリードリッヒ・ニーチェが唱えた哲学概念ですが、これは「弱い立場にあるものが、強者に対して抱く嫉妬、怨念、憎悪、劣等感などの混ざった感情」ということで、わかりやすく言えば「やっかみ」です。

ルサンチマンを抱えた人は、その状況を改善するために、次の二つの反応を示します。

①ルサンチマンの原因となる価値基準に隷属、服従する
②ルサンチマンの原因となる価値判断を転倒させる

まずはとても簡単な例を挙げてみましょう。

例えばInstagramで見たインフルエンサーや友人の豪華な投稿に対するやっかみです。リゾート地での滞在や、インスタ映えする体験に対して「自分も同じような体験をしてみたい」という感情が湧く。これは①の状態です。

インフルエンサーや、人気のある友人のフォロワー数,、「いいね!」の数に対するやっかみもそうですね。「自分も同じように影響力を持ちたい」と思う。これも①の状態と言えます。

で、この時点でいきなり「同じような体験がしたいと思って何が悪いの!」「いいね欲しいし影響力を持ちたい!」と仰る方がほとんどなのですが、落ち着いてください。「ルサンチマン」がキーコンセプトであることを思い出してくださいね。沸点が低すぎますって、もう。

さて、面白いのが②の態度です。同じ例を挙げて見ていきます。

Instagramで見たインフルエンサーや友人の豪華な投稿に対するやっかみです。リゾート地での滞在や、インスタ映えする体験に対して「はあ?私はドバイなんかより、熱海で充分」という態度は②ですね。

また、インフルエンサーや人気のある友人のフォロワー数や「いいね!」の数に対するやっかみもそうです。「いいねとか要らないし!」と言いつつ、狂ったように毎日何時間もSNSを見てしまう。これも②の態度です。

どういうことか?説明を丁寧にしましょう。

①ルサンチマンの原因となる価値基準に隷属、服従する

冒頭では「投資詐欺」を取り上げましたね。これは弱い立場にあるもの=投資初心者や未経験者が、強者=既に投資をして儲けている人に対して抱く嫉妬、怨念、憎悪、劣等感などの混ざった感情=ルサンチマンの原因となる価値基準に、隷属、服従している。という状況から生まれる詐欺被害と捉えると良いかもしれません。

先に述べた通り、その手の投稿の多くが「誇大広告」であると認識できていれば、わざわざルサンチマン、つまりやっかみなど抱えずに済むわけですが、しかしやっかみ癖があると、どうしてもうらやましいと思ってしまう。

ルサンチマンに囚われた人は、そのルサンチマンを生む原因となっている価値基準に隷属、服従した上で、それを解消しようとします。

周囲のみんなが高級ブランドのバッグを持っているのに、自分だけが持っていないというような状況を想像してみてください。

この時、自分が本当に欲しいものではない、自分のライフスタイルや価値観には合わないとして、そのブランドバッグを拒絶することももちろんできるわけですが、少なくない割合の人々は、同格のブランドバッグを購入することで、ルサンチマンを解消しようとします。

これは何も、VuittonやGUCCIらラグジュアリーブランドだけに限ったことではなく、例えばフェラーリなどに代表される高級車やリシャール・ミルなどに代表される高級腕時計の世界でも同様に起きている事態と考えられます。

これらの、いわゆる高級品・ブランド品が市場に提供している便益は「ルサンチマンの解消」と考えることができます。

ルサンチマンを抱えた個人は、ルサンチマンを解消するために、これらのブランド品や高級車を購入するわけですから、ルサンチマンを生み出せば生み出すほど、市場規模もまた拡大することになります。

つまり

あなたの「やっかみ」は私のビジネスチャンス


ということなのですね。

気づいていましたか?いやあ、考えてみると恐ろしいことです。

ラグジュアリーブランドや高級車は、毎年のようにコレクションや新車を出してきますが、これは「ルサンチマンを常に生み出すため」と考えてみるとわかりやすい。

つまり「最新のモノ」を常に市場に送り出すことによって、「古いモノ」を持っている人にルサンチマンを抱えさせているわけです。

ルサンチマンには製造原価がありませんから、知恵と工夫次第でいくらでも生み出すことができます。

無限に生み出すことができるのに高い価格が付けられているわけですから、儲からないわけがありません。

これらをSNS上でシツコク投稿してくるインフルエンサーと呼ばれる人々がどのように稼いでいるか、考えたことはありますか?「旅行」を例に取って簡単にまとめます。

1.ブランドアンバサダー
インフルエンサーが旅行会社の公式アンバサダーとして契約し、定期的に旅行会社のサービスやツアーを紹介することでブランドの認知度を高めます。

2.ソーシャルメディアキャンペーン
インフルエンサーは自身のフォロワーに対して旅行会社のキャンペーンや特典情報をSNSで発信し、エンゲージメントを促進します。これにはInstagramの投稿、YouTubeの動画、ブログ記事などが含まれます。

3.旅行体験の共有
旅行会社はインフルエンサーに対して無料または割引価格で旅行体験を提供し、その体験を詳細に共有してもらいます。これにより、フォロワーにリアルで魅力的なコンテンツを提供し、旅行先やサービスへの関心を高めます。

「え!?無料で旅行に行けて、更に儲けれるの!?やりたい!」という方が必ず現れるので、一応クギも指しておきましょうか。「全てこうなっている」ということではなく、あくまで基本的な構造を下記しておくので、ご興味のある方はご一瞥ください。

インスタグラムでの収益化の主な手段

1.スポンサーシップ投稿
2.アフィリエイトマーケティング
3.稼ぐためのハードル

1.スポンサーシップ投稿の収益計算

スポンサーシップ投稿の収益は主にフォロワー数とエンゲージメント率によって決まります。例えば、1フォロワーあたりの単価は一般的に$0.10〜$0.50です。

計算式
収益=フォロワー数× 単価×エンゲージメント率

計算例
フォロワー数:10,000人
・単価:$0.20
・エンゲージメント率:5% (0.05)

計算結果
収益=10,000×0.20×0.05=$100

2.アフィリエイトマーケティングの収益計算

アフィリエイトマーケティングでは、紹介リンクをクリックして購入が行われた際に報酬が支払われます。報酬率は通常5〜30%です。

計算式
収益=クリック数×コンバージョン率×平均購入金額×報酬率

計算例
クリック数:1,000
コンバージョン率:2% (0.02)
平均購入金額:$50
報酬率:10% (0.10)

計算結果
収益=1,000×0.02×50×0.10=$100

3.実際に稼ぐためのハードル
上記した二つの計算式は「一万円稼ぐのにはどのくらいの労力が必要か?」という計算例です。インスタグラムで実際に収益を上げることは、想像以上に難しいです。多くのフォロワーの獲得だけで済むわけではなく、それらを高いエンゲージメント率を維持し、その上でブランドとの契約を獲得するためには、かなりの時間と労力を要します。競争もどんどん激化しており、安定した収益を得る、得続けるのは簡単ではありません。

本気でやってみたい、あるいはそれをすることにこそ幸福を感じるというのであればお止めしません。しかしがながら、私たちの抱えるルサンチマンによって、多くの詐欺師やインフルエンサーが儲かっている、ということは改めて知っておいた方が良いでしょう。

詐欺はいずれ制裁を受けますし、インフルエンサーとして稼ぐことも過酷さを増す。「①ルサンチマンの原因となる価値基準に隷属、服従する」ことに対しては、少し意識的にならなければいけないと思います。

②ルサンチマンの原因となる価値判断を転倒させる

本記事の投稿にあたって、ここ数日いくつかの場所で実際に試して、とても、いえ、かなり好評だった話があります。

それは「高級フレンチなんて行きたいと思わない、サイゼリアで十分だ」という意見について、皆さんはどう思われますか?という話です。

素直に聞き流せば、それはそれで一つの意見だと思われるかもしれませんが、ここで見逃してはいけないのが、この主張には一般に考えられている「高級フレンチは格上で、サイゼリアは格下」という価値観を「わざわざ転倒させてやろうという意図」が明確に含まれている、ということです。

「高級レストランについて」は、ぜひとも本書[2]をお読みいただきたいと思いますが、皆さん良く考えてみてください。

「高級フレンチなんて行きたいと思わない」なんて言う必要って、ある?

よくよく考えたら、ないですよね?

この言葉にこそ「わざわざ転倒させてやろうという意図」が明確に含まれています。

この発言の背後には、高級フレンチは格式の高いレストランであり、そこに集う人は洗練された趣味と味覚を持っているという一般的な価値観、もっと直載すれば、「高級フレンチで食事をする人は成功者だという可視判断を転倒させたい!」というルサンチマンが蠢いているからこそ、このような発言をしてしまいます。

このように主張している本人たちは、自分たちが過去の時代の浪費文化に染まっていないと考え、むしろ革新的でスタイリッシュな価値観を持っていると強く信じているのでしょう。しかし、もしそうなのであれば、単に「自分は高級フレンチにはあまり行ったことがないけれど、サイゼリアでも十分に美味しいよ」と言えばいいし、さらには単に「サイゼリアが好きだ」と言えばいいだけのことでしょう。

誰も文句は言いません。

なぜそう言わないのか。

理由はシンプルで、そんなことを言っても本人のルサンチマンが解消しないからです。

わざわざ高級フレンチという概念を持ち出してきてまでサイゼリアとの価値比較をした上で、 「自分は後者を好む」とご丁寧に主張なさるというのは、前者を好む人たちよりも自分たちは優位にあるという主張にこそ主眼があるということでしょう。

これは、ルサンチマンに囚われた人は「ルサンチマンの原因となっている価値判断を転倒させようとする」というニーチェの指摘に全く合致します。


ルサンチマンに囚われていては、豊かな人生を送ることは難しい

アンデルセン童話に「皇帝の新しい服」という話がありますが、私たち日本人には「裸の王様」と言った方がわかりやすいでしょうね。

あらすじを確認すれば、見た目にばかり気を使う皇帝が、いつも新しい服を欲しがっている。ある日、二人の詐欺師が皇帝に「見えない服」を売りつけるわけですが、このとき「この服は愚か者や無能な者には見えない」と触れ込む。皇帝も周囲の人々も、服が見えないことを恐れ、誰も真実を言い出せない。実際には何も着ていない皇帝は、自信満々で新しい服を着て行進しますが、子供が「皇帝は裸だ!」と叫び、真実が明らかになる。

周囲の価値判断(この場合、服が見えることが知性の証明だという価値観)に服従することによって、自分自身の判断力を失うというテーマを描いているわけですが、「さすがに裸はないでしょう」という理解しかできない場合、残念ですがルサンチマンからの解放は難しいかもしれません。

また、イソップ童話には「酸っぱいブドウ」という話があります。キツネが美味しそうなブドウを見つけますが、どうしても手が届かない。やがてこのキツネは「あんなブドウは酸っぱいに違いない。誰が食べるものか。」と言い捨てて去ってしまう。

キツネは、手が届かないブドウに対して、単に悔しがるのではなく、「あのブドウは酸っぱい」と価値判断の転倒を行い、溜飲を下げます。 私たちが持っている本来の認識能力や判断能力が、ルサンチマンによって歪められてしまう可能性がある、ということです。

どうでしょう、彼らは幸せそうに見えますか?

クドいようですが最後に、もう一度だけ投資について目を向け直します。

①ルサンチマンの原因となる価値基準に隷属、服従する

「皆がやっているから」という理由だけで投資を始めてしまうと、無知識=裸のままで、詐欺師の被害に合ってしまう確率が高いと思います。「自分がやりたい」と考えるなら、自分で勉強しましょう。

②ルサンチマンの原因となる価値判断を転倒させる

「株なんてだいたい詐欺だから手を出さない。定期預金でコツコツと貯金して、堅実に生活する」と、よく知りもしないモノ、この場合は株のことを詐欺だと決めつけることで、ルサンチマンを解消させる人もまた多いです。

このような人々に対する私のスタンスを敢えて言わせていただければ、単に「勉強する気も、稼ぐ気もないのだろうな」というものです。

私は「投資詐欺に合わないでほしい」と言っているだけで、投資自体はするべきだと思っています。だからこそ「儲けているフリをする奴=幸せを装う不幸者」に騙されて欲しくないなと考えているんです。

ですから皆さんには是非とも「幸せを装おう不幸者」にはなってほしくないなと勝手ながら願って、イギリスの哲学者フランシス・ベーコンの言葉を紹介し、本記事を閉じることにしたいと思います。

富を軽蔑するように見える人々を余り信用しないがよい。富を得る望みのない人々が、それを軽蔑するからである。 こういう人々が富を得るようになると、これほど始末に困る手合いはない。

フランシス・ベーコン『ベーコン随想集』

[1]
あくまでも原理の「一つ」です。


[2]


僕の武器になった哲学/コミュリーマン

ステップ2.問題作成:なぜおかしいのか、なにがおかしいのか、この理不尽を「問題化」する。

キーコンセプト20「ルサンチマン」

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