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恋とか愛とかやさしさなら 感想



ーープロポーズされた翌日、恋人が盗撮で捕まった。

先日SNSで本の写真と共に載せられたあらすじ。釣られるようにして、手に取った。



キラキラした表紙を開き、約2時間で読み終えた。

読んでいる最中でさえ、哲学的な愛するとは何か、信じるとは何か、重ねて重ねて苦しくなってしまう。

最初は別れる一択だなと思っていたが、途中は私もどうすればいいかわからなくなった


主人公の新夏の世間一般の声と、彼啓久への女としての気持ちの揺れがそのまま人間の欲望と理想をごちゃ混ぜにしたブラックボックスのようで、すっきりした作品かと言われればそうでもない、ただただ考えさせられる物語

特に新夏目線のストーリーは登場人物の性格の良い所嫌なところを誇張してるな〜って笑っちゃう時もあるんだけどでも現実で誰かの視点の誰かはこれくらい性格の良し悪しの彩度が高くて自分が見た相手が全てではないよなと改めて痛感。

世間一般の信じるという行為はひたすらに純度を求められるけど、恋とか愛とかやさしさなら?濁った国語の教科書みたいな答えの出ない問いをいつまでもしていて。

相手を好きで好きで、好きでいても、信じようとしてもそれを追求するために自分が自分じゃなくなって気づいたら自分が問い詰める加害者になってしまう。人間の気持ちと行動は相反していて難しい、すごく


この男女は今まで遭遇してきたことに対してのふんわりした価値観や感情線が、似ていたんだろうな
男女の思考差とか交えず答えなんて出さなくて良い2人だったのにな、そんなハッピーエンドで終わるはずだったのにななんて薄目でみて一度は他人事のようになる。


登場人物がいう‘そんなこと’で別れてしまった、と節々にいっていてそのニュアンスは其々全く違う気がして。言い聞かせていたり、性犯罪へのこれくらいはという大小の決めつけ、これまで擦り合わせてきた価値観だったのに、その一個で全てがなくなってしまっても良いのか?とのちに考えた。

わたし自身、裏切られたらすぐに縁を切ってしまうような人間なので、これまでわたしが縁を切った人間の良い所を好きだったところをまた思い返してみたりした。何事も努力する人、馬鹿にしない人、面白い人、思い出してみる。
人間の脳はすごく上手くできているなあと思った。一つの出来事でいくつもの記憶を引き出す。つまり、やっぱり裏切られた時を思い出して蓋をしたくなった。はっと悲しくなる

愛とか恋とか優しさなら打算も許されるが、
「信じる」という行為はひたすらに純度を求められる。純白以外の白はすべて黒で、百かゼロしか存在しない。そしてわずかでも損なわれたら、二度と元には戻らない

今回の話の場合、黒というよりかは透明度を足した黒だななんて思ってしまったけど
どの関係性でもいえる話だなと深く共感した。


また、啓久視点ででてくる過去に性犯罪を起こしたことのある瀬名さん。映画館でエンドロールを終えて明るくなるまでが映画で、そんなふうに彼を見届けたいと言った瀬名さんの奥さん。

最後に再犯を起こしてしまったとき、「信じます」といった啓久。

啓久の被害者である子の親に怒鳴りつけた啓久。

最後の最後に、新夏のあの時の気持ちを理解できたことがこの物語のなによりの救いだなとモヤモヤするなかで思った。


なんだか箇条書きだらけで何を思ったのか途切れ途切れだが、纏めるのが難しい本。

でも一つ、この本だけでもこんなにも価値観の違いがあるのだから読んだ人とも語り合いたい。寧ろ女性側男性側両方から意見が聞きたいなと思った。


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