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本好きの読書感想⑤【物語のなかとそと】

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 ー私がいま帰ろうとしている場所は、   ー

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※中年女性の戯言です※
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恋人の不在について。

朝から次の日までまる一晩、
その不在という存在が少し嬉しい。

わたしはその日ほんの少し身軽になれる。
食べたくなければ食べなくても良いし、
一日中寝ていても良い。
じっと黙って本を読んでいても良いし、
テレビも付けずに気に入った音楽を聴きながらデタラメに歌ったりしても良い。
時間を気にせず思い立ったその時にお風呂を溜めて長湯をすることもできる。
(溜めるだけ溜めておいて入らないということも出来る!)と、そう考えただけで、身軽になる。

ひとりで何でも出来る贅沢なおとなになった気分になるのだ。
それらをするかしないかでさえも全てわたしの“気”ままで決めて良いのだから。

そして今朝。
目が覚めた時は自分がずいぶんおとなになっている様な気がしたのだけれどどうやらそうでもなかったらしいという事に気が付いたのは、
ふわりと泳いだ手が体温を探して彷徨いながら鼾をかいている恋人の鼻をひょいと摘んだ時に、これが夢の中だと二度目に見た夢の中で気がついてあららと思ったからだった。
名残惜しいと思うけれど。

そしてそれを確信したのは歯磨きのあと、
歯間ブラシをしていたら歯の詰め物が取れたときだ。
疲れて帰宅した恋人に歯医者さんへ電話をしてもらった。午後休を取るから朝のうちに午後の予約をしておいてと頼んで出掛けたのだ。

今夜は恋人はいらっしゃる。
なので、私は再び子どもに戻る。

きっと此処が物語のそとなのだろう。
再び物語のなかに帰るのは、
次に来る恋人不在の夜なのだろう。

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※本題です。※

エッセイでもあり掌編小説。
江國さんがお好きな方なら既視感のあるエピソードもちらほら。
だけど今まででいちばん地に足のついた大人な江國香織さんだった気がしました。
それでもやっぱりいつだって
じっと目を見開いて、動かして
世界と言葉を見つめている少女である彼女という存在は私を惹きつけてやまない魅力的なひとつの理想です。
大人の女性である事と可憐な少女である事は一重に同じ事であると彼女は教えてくれている気がします。
あともう一点。
幾つか江國さんがお気に入りの本も紹介されているのですが、それも楽しいです😊

ともすればなかとそとの境界線があやふやな
彼女を愛して止みません。


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