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頭、散らかってないかな?
「ただいマンモス…」
シャチ君が帰宅しました。
ビジ子が机の上で、ノートPCをカチャカチャしています。
「え…なんでぼくのノートPCを勝手に触ってるのさ!」
シャチ君が慌てて近づくと、ビジ子はため息を吐きました。
「ああ、シャチ君のユーザーIDをクリックしてパスワード入力画面になったから、試しにあなたの誕生日を入力してみたの。まさか、一発でサインインできると思わなかったよ。あなた、本当にエンジニアなの?」
「あ…え、だって、別に外へ持ち歩かないし」
衝撃と恥ずかしさで、シャチ君は顔を真っ赤にしています。
「別に、シャチ君のエロ画像コレクションを暴こうとするつもりはないの」
「そんなの保存してないし!!」
「ああそう。でね、私は『頭を上手に使う力』を指南しに来たでしょ?」
「…はい」
「ひとまず即効性の高いことを先に教えたけど、そろそろ頭の使い方そのものについて解説していきたいな、と思ってね。今日はその初歩の初歩」
ビジ子の講習が始まりました。
「頭はね、いわゆる『地頭』と呼ばれる資質的なものと『頭の使い方』、主にこの2つでパフォーマンスが大きく変わるの」
ビジ子は両手で数字の「2」を作り、力説します。
「地頭を気にする人は多いけど、地頭だけで何とかしている人は伸びしろに限界があるし、年齢を重ねるとだんだん綻びが目立つようになるの。大事なのは『頭の使い方』ね。頭の使い方が上手になれば、仕事はどんどん効率的になるし、感情だって上手くコントロールできるようになるの」
「頭の使い方…え、と…具体的には?」
「『分類』と『整理』、これが基本ね。基本が身についたら『分析』。まずは、分類と整理をきちんと覚えようよ」
「わかった。なんか苦手意識あるかも…」
ビジ子がノートPCの画面を指しました。
「そんな気がする。シャチ君のパソコンは、ファイルがぐちゃぐちゃだよね。特にデスクトップ…会社のパソコンもこんな感じ?」
「ぇ…ま、まあね」
シャチ君は自分のデスクトップを見下ろしながら、申し訳なさそうに呟きました。
「頭の整理が苦手な人は、ファイルの保存場所がめちゃくちゃな人が多いの。ようするに、分類する発想があまりなくて頭が散らかりやすい」
「う、まあ、ネットでも『デスクトップが汚い人は仕事できない』とか言われてるね」
「それはちょっと違うんだけどね。デスクトップが汚くても実務能力が高かったりコミュニケーションが上手な人はたくさんいるよ。ただ、そういう人は『地頭』に頼りすぎる傾向があるの。だから、頭のキャパを超えた途端にミスが増えたり急に怒り出したりするし、あまり大きな成長も見込めないのは確かかな」
「なるほど…」
「でね。頭の使い方を改善する時は、使い方そのものをあれこれ考えるよりも、まず行動や習慣を変えて、頭に学習させちゃった方が早いんだよ」
「…ああ、それでファイルの整理ってこと?」
「そう。身近なことだし、そんなに難しいことでもないからね」
ビジ子がシャチ君のノートPCを操作しながら、説明します。
「このノートPCを会社のパソコンに見立てて説明するから、明日すぐに会社で実行するんだよ」
シャチ君は頷きました。
「ようするにね。フォルダを3種類に分けるの。『社内』、『ドキュメント』、『作業用』…この3種類のフォルダをデスクトップ上に置いて、すぐにアクセスできるようにするの」
①デスクトップ上に、「社内」フォルダを作る
「社内」フォルダの中に、会社のネットワーク上にある各フォルダへのショートカットを作る。
②デスクトップ上に、ローカルの「ドキュメント」フォルダへのショートカットを作る
「ドキュメント」フォルダ内に、「事務処理」フォルダと「業務」フォルダを最低限作る。
ローカルに保存するファイルは全て、デスクトップ上ではなく「ドキュメント」配下の然るべきフォルダに保存する。
③デスクトップ上に、「作業用」フォルダを作る
一時的に使うファイルやダウンロードしたファイルは、「作業用」フォルダに保存する。
そして、更新が終わった時点で然るべきフォルダへ移動するか削除する。
「とにかく『全てのファイルを、フォルダで分類する』ってことが大事なの。簡単でしょ?これだけでも、仕事に凄く影響するんだよ」
「なるほど…社内の共有フォルダとかサーバーへのショートカットを『社内』フォルダにまとめるのか。確かに使いやすいかも」
ビジ子はさらに続けました。
「このやり方はあくまでサンプルね。会社のルールや、あなた自身の感覚に合わせてアレンジしてもいい。でも、ファイルは全てフォルダで分類する癖をつけるってことは守ってね。ファイルをフォルダで分類して整理するのは、頭の中に分類と整理の概念を定着させるのに最適なの」
「おっけー。明日からちゃんと実行するよ」
「このパソコンの誕生日パスワードだけは、今夜中に変えた方が良いよ。変態動画コレクションが流出しちゃうかもよ」
「だからそんなのローカルに置いてないってば!」
「ああそう。クラウドストレージのログインパスワードも変えときなよ」
「え!?う、うん…」