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アリバブダイアリー7. 「ハレノヒ、ハルノヒ」

桜が咲く春本番になった。気温は上がり、日差しに照らされると体の緊張が解きほぐれるような陽気に満ちている。体温はさらに高くなって37度8分ある。春の陽気と微熱で頭はぼうっとしている。


今日は4つ年の離れた兄の結婚式と披露宴が行われる。家庭を築くスタートに相応しい、春の晴れやかな空気に満ちた日だ。夫はスーツに慌てて買ったシルバーのネクタイを締めて、私は友人の結婚式の為に購入した黒のワンピースにピンクのジャケットを合わせた。親族なら着物を着るのが正式な装いだろうが、費用面とホテルでの教会式であると言う事で洋服に決めた。これは当日になって本当に良い選択だったと思う。着物の帯なんか締めたらきっと気分が悪くて、その場を台無しにしてしまったかもしれないからだ。
私は自分の結婚式直前、重いカツラで顎に持病の痛みが出て額から脂汗が流れ、窮屈な白無垢で吐き気がして式の手順が全く頭に入らずに巫女さんをいらつかせてしまった。あろうことか、2時間かけて着せてもらった白無垢を一瞬にして脱いでしまった。その後プロの手によりこと無きを得て無事に式を終えられたのだが。そんな事もあり、軽装で兄の挙式会場へ向かった。親族紹介は機械仕掛けの壁の移動がある部屋で、お見合いでも始まるみたいでおかしかった。夫と共に受付に立った私は、次々にやってくる参列者への対応に頭は回らずフラフラした。


会場にはかすみ草がそこらじゅう一杯に飾られ、真っ白で慎ましやかなその花が、和かに笑う新婦そのままみたいだった。幸せそうに結婚式を迎える花嫁の姿は本当にこの上無く清らかで美しい。彼女史上最も美しい表情に思えた。


式や披露宴は派手やかに行われ、150人を超える参列者でとても賑わっていた。私達親族は新郎新婦から一番遠くのテーブルに座る事になり、私はフラつく頭で全てが遠くの方で行われているのを傍観していた。お腹にいる子供の事を考えては高ぶる気持ちを持て余し、上品に盛られた品々に舌鼓を打った。


披露宴後、重厚感のある会場の鏡越しに私達夫婦で記念写真を撮った。桜の飾りがあしらわれた綺麗な会場に温かい笑顔の私達夫婦がいた。

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