アリバブダイアリー4.「夫」
ティーンエイジャーの頃から、私がすぐに体調の悪さを口にしたりするので、彼は私が話すことをあまり気にして聞いてはくれなくなった。あまり考えずに口にしてしまったら、茶化されてしまう始末だ。思い出しては腹立たしい気持ちになる事がたびたびある程だ。だから思った事をなんでもすぐ口にするのはやめにしようと決めている。それで今回の事も易々と話したくはないのだが、今起きている事に自分自信が焦ってしまい、すぐにでも話を聞いてほしいと思っている。だが言い出しにくい。大事な事ほど口に出しにくい。かえって話せないのはよくあるやつだ。毎日目の前にいて一緒に生活しているのに、いったい何の話をして共に過ごしているのだろうか。大切な話はたいてい後回しだ…
夫の仕事部屋にはパソコンのデスクとチェアのセットが2つあり、ちょうど背中合わせになるように東と西を向いて互いに座り作業をする。職についていない私は、このところ毎日のように雑用を手助けしている。今日もいつものように私は東側のパソコンに向かい経理をしていた。画面を見たまま何気なく彼に話しかけた。「私…生理がこないし体調がおかしい…妊娠したかもしれない。でももし妊娠していたら私は産みたい。」不安な気持ちを一人では抱えきれなくなり、告白は唐突に口をついて出た。彼はとても驚いた様子で、振り向いて私を見ていた。何よりも産みたいと言った私の一言にとても驚いていたようだった。なぜなら私達は長年連れ添っているが、私が子供を欲しいと言った事は今まで一度も無かったからだ。「君の気持ちはよく分かった。とりあえず検査薬を試してみようよ。ある程度正確な結果が分かるんじゃないのか。」そう返した彼は嬉しそうに笑っていた。
今日ネットで妊娠検査薬を注文した。
結果がどうであれ、一秒でも早く知りたい。何をしていても落ち着かない。