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アリバブダイアリー1.「春の夜」

流れるように頬に当たる春風が心地良い。夫が運転するバイクの後部座席に跨って、夜の街中を走っている。揺れながら見るネオンの光は、色とりどりの割れたガラスがキラキラ光っているみたいに幻想的で、私は夜空を浮遊しているみたいだ。熱っぽさでぼうっとした頭だからそんな風に感じるのだろう。

そういえば熱っぽさは5日程前から続いているけれど、就職活動のストレスからなのだろうか。2日前に受けた就職試験が不採用だとその日その場で告げられた時には、気持ち悪さからめまいがして、駅前の古びた雑居ビルから慌てて逃げるように帰りの電車に飛び乗った。早くその場を去りたかった。交通費を使って時間をかけて、一日を無駄にしてしまった上に体調が思わしくない。家路につく人の波に飲み込まれてしまった車内で、谷底に突き落とされたような気持ちは行き場を失って、体をコントロール出来なくなっていた。頭は働かず、その日あった事をただ何度も繰り返し思い出していた。


今日は朝から少し寒気を感じた。それで体温を測ってみると37.3℃だった。少し吐き気を感じる時もある。しかし、私は34歳で現在職無し。なので気分転換やら夫の仕事仲間のコネを期待して、飲み会へと出掛けるところだ。けれどもどうしてなのだろうか。体調がおかしい。バイクに同乗するから夫に合わせてお酒は控えよう。

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