アリバブダイアリー1.「春の夜」
流れるように頬に当たる春風が心地良い。夫が運転するバイクの後部座席に跨って、夜の街中を走っている。揺れながら見るネオンの光は、色とりどりの割れたガラスがキラキラ光っているみたいに幻想的で、私は夜空を浮遊しているみたいだ。熱っぽさでぼうっとした頭だからそんな風に感じるのだろう。
そういえば熱っぽさは5日程前から続いているけれど、就職活動のストレスからなのだろうか。2日前に受けた就職試験が不採用だとその日その場で告げられた時には、気持ち悪さからめまいがして、駅前の古びた雑居ビル