3Dプリンターで作る自転車パーツ
コロナ禍があけて復活した宮古島トライアスロンに出るために、奮発して新しい自転車を購入しました。この自転車はレース向けに最適化してるため、ハンドルまわりが特殊な形をしています。自転車本体のメーカーと人間工学に力を入れているエルゴンという会社が協力して設計協力して、ハンドルの握りやすさやコントロール性などは考えられているのですが、形状があまりにも独特なので、市販のライトが取り付けられません。
レースが一段落したので、このライト問題をなんとかしたいと思い、3Dプリンターでカスタム部品を作ることにしました。
ハンドルの真ん中に突き出たところに、サイクルコンピューターを取り付けるための部品があり、その側面には上腕を置くためのオプションパーツを固定するためのネジ穴があります。これを利用してライトを取り付けるための部品(マウント)を作ってみることにします。
形状はすぐに決定できました。取り付けるための根本側は受ける部品の形状もネジ穴も決まっているので、それを覆うようにします。ライトは一般的な丸形断面のハンドルに取るつけるための部品はありますので、ライト取付部は円筒形にします。円筒形の位置をネジ穴の真下になるようにして、根元側とつなぐとデータは完成です。
PLA樹脂で出力した初期品を取り付けてみると、一部取付導線で干渉していたので、全体の長さ調整を兼ねて少し変更しました。また、ネジを締め込むとネジ周囲の強度が不足してメリメリと音がしたので、ネジ周りを補強するために溝も追加しました。ここまでは想定範囲内で順調です。
少し手こずったのは本番出力です。屋外で用いるため紫外線に強く、振動も多いのでABS樹脂に特性が似ているといASA樹脂を選びました。出力する3Dプリンターにも標準でASA樹脂出力の設定もあります。しかし、出力するとどうしても反りが出てしまいます。出力範囲が覆われているタイプのため、雰囲気温度もある程度一定になっているはずですが、ステージの接地面だけでなく、出力高さの中央付近でも反りによる剥離が見られます。表面に凹みを設けたりして反りに抵抗できないか試しましたが、全く改善されません(リブは使用時の応力に対しては意味がありますが、積層途中では関係ないですね)。
ライトが取り付けられないことで、いつまでも自転車に乗れないのはトレーニング的に良くないので、いくつか出力したところで一旦あきらめて、最も状態の良いものを選んで自転車に取り付けました。少し積層面で剥離している箇所がありますが、もともと力が掛かる向きを考慮して積層方向を見越した設計としていて、この程度ならば問題ないと判断しました。実際にライトとベルを取り付けて100km以上走りましたが特に問題は出ていません。
この自転車(Canyon Speedmax CFR, CF SLX 8)については皆さんライトをどのようにして取り付けているのでしょう。反りによる剥離などから、弊社で製作したものは売り物にならない状態ですが、必要な方がいらっしゃったら協力します。
ちょうど昨日興味深い情報が入ってきました。弊社がいつも製作をお願いしている金属加工会社さんから、新しい金属3Dプリンターを扱うとお電話をいただいたのです。どちらかというと量産に適した3Dプリンターのようですが、金属系の3Dプリンターは強度的な面で樹脂とは比べ物にならないので、3Dプリントされたサンプルを見せていただくのが楽しみです。
フロントライトでけでなく、リアのライトも取り付ける箇所がなかったり、フレーム内蔵の水筒付属のストローがうまく収納できなかったりと、いろいろ不満点があるので、これらを解決する部品を3Dプリンターで製作していこうと考えています。