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エバーグリーン/豊島ミホ

——でも、思い出せるのに。

友人からこの一文のためだけに読んでと言われた恋愛小説。

豊島ミホ著書は『檸檬のころ』以来だけど、やっぱり読みやすい。難しい言葉は出てこない。私は都会生まれ都会育ちなので、田舎の情景とかはちょっと想像に難しい部分はあるが、風景描写がしっかりと書かれているため想像はしやすいなと思った。

甘酸っぱい恋愛少女漫画を読んでいるかと思う青春小説だった。
中学生の頃の約束を十年後に果たそうとする二人の男女の話、こんなことはこの時代には起こらないなぁと思いながら読んだ。綺麗な初恋…初恋になるのかな…。綺麗な恋愛小説だと思った。

中学生の時って「自分だけは特別なんだ」っていう意識が誰しも心の片隅で思ってると私は思う。それを大人になるにつれて、どう処理をしていくのかということなのだけれど、恥ずかしながら私は未だに処理しきれていなくて、”厨二病”とはまた違う拗らせかたをしてしまった。私はどちらかというと”シン”に近い人間だ。【あの頃】をずっと綺麗にタカラモノのように締まっておくこともできなくて、かといってその熱が再び自分を駆り立てることもある。とても人間らしく、とてもかっこ悪い。

一人の人をずっと”トクベツ”だと、神様のように扱って、大切に大切にしてきたけど、周りはその”トクベツ”よりも【現実】を見ていて、自分だけが取り残されたような気持ちになって。”アヤコ”の中にある大切にしたいシンへの気持ちも、伊地知くんに抱いた新たな感情も、すごく分かり易い描写で書かれていて、あたかも自分も同じような恋愛をした気持ちになってしまった。これは、著者の力だ。

なんというか、決して幸せになることが、不幸になることが、恋愛小説ではないよなと思った。読み終えたときのほろ苦さや甘酸っぱさはさすがだと思う。

皆さんも、『——でも、思い出せるのに。』っていう経験あるでしょ。
私もあるよ。本当にあるかどうかって聞かれると今はもう全部ぐっちゃぐちゃにしてしまったので(本当に悪い癖だと思う)、私には綺麗な恋愛の思い出なんて一つもないのだけど。こういう綺麗な恋愛がしてみたかったな、と思わせる作品でした。

恋と夢と現実と。自分が今何をするべきなのか。忘れられない人がいる。忘れられない約束がある。
そういうの、なかったかもしれないなぁ。
ちゃんと恋愛に向き合っていたし、ちゃんと向き合っていなかったかもしれないなぁ。難しい。

とても読みやすい文体なので、暇つぶしにはおすすめです。


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漫画家になる夢をもつアヤコと、ミュージシャンを目指すシン。別々の高校に進学することになったふたりは、中学校の卒業式で、10年後にお互いの夢を叶えて会おうと約束する。そして、10年。再会の日が近づく。そのとき、夢と現実を抱えて暮らすふたりの心に浮かぶものは・・・・・。

エバーグリーン/豊島ミホ



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ちぬ
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