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「あを」を求めて、私はそっと海にいく|序章

「白鳥や哀しからずや空の青海のあをにも染まずただよう」

若山牧水『海の声』から

底知れぬ神秘をまとう「あを」色は、
悲しさも寂しさも、
すべての気持ちを静かに包み込む。

そんな「あを」に導かれ、
私はそっと海にいく

子どもの頃から海を見るのが好きだった。
夏休みには離島に暮らす祖父母の家に行くのが楽しみだった。
海に突き出た桟橋から覗き込んだ先にある
「あを」の世界に魅せられた。
神秘と恐怖の真ん中で、
飽きることなく眺めていた。

空を見上げることもある。
そこには果てなき宇宙へと
広がり続ける青がある。
それでも私は、海の「あを」が好き。

見えないふりして日々過ごす、
疲れと不満とやるせなさ。
そんな私の心のおり
海の「あを」に溶けていく。
心のおもりが取れていく。

紺、藍、群青ぐんじょう緑青りょくせい色…
海には多彩な「あを」があり、
時間や天気、季節や場所で変化する。
それでもその場に宿る「あを」がある。
心に映る「あを」がある。

私は目にした光景を
その「あを」のイメージで記憶する。

(つづく)

福井県南条郡南越前町

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