「共感」や「気づき」が、誰かにとっての価値になるかもしれない。展覧会『私だけかもしれない、けど。』開催に寄せて<前編>
COLOR Againは、コスメに本来宿っている創造性や自身の力で、社会によって色あせてしまった個人の色を取り戻し、一人ひとりの可能性や多様性を尊重し合える社会を目指すプロジェクト。
COLOR Againは、昨年に引き続き渋谷教育学園渋谷高等学校(通称・以下渋渋)の有志学生とともに、サービスラーニング(日々の授業で学んだ社会問題に対し、自らアクションを起こす社会貢献活動教育)をはじめとした活動を展開しています。
そこから派生して、2024年1月28日(日)に渋渋生を主体とした展覧会の開催が決定。今回は、本企画にあたっているCOLOR Againのプログラムに参加してくれた有志メンバーである2人に、自身の感性と社会とのつながりや、手がけるエッセイ、今回の企画に対する思いなどについて話を聞きました。
COLOR Againへ参加した理由
吉田氏:岸田さんと新田さんは、どうしてCOLOR Againが提供するプログラムへ参加を?
新田さん:これまで、社会に対してアクションを起こす、といった活動をしたことがなかったので、高校生のうちに1回でもやっておけたらいいかなって。説明会の話を聞いて、高校生はメイクしちゃダメだけど、社会人になったらしないといけない。男性はなぜメイクはだめ? メイクではなく清潔感はほしいよね、とか。そういう普段考えないことをじっくり考えるのも、3年生になると難しいから、最後のチャンスだと思って参加させていただきました。
岸田さん:COLOR Againの説明会に参加した時に、コスメやメイクといった、自分が好きなものについて深く考えることってなかったなと気づかされたんです。また、自分の認識している自分と、他人から見られている自分のギャップにも興味があり、メイクや、コスメを使う目的や用途が、人によって違うってことも考えてこなくて、これを機に色々知りたいなと思って参加しました。
私にとっての、メイク
上野:岸田さんは、どんなことがきっかけでメイクに興味を持つようになったのでしたっけ。
岸田さん:中学2年になるころ、まわりの友人がメイクをするようになって自然と興味を持ち始めました。当時私は一重で眼鏡をかけていて、前髪もなくて。中学受験をした流れで、自分の見た目に無頓着だったんです。雑誌に載っているメイクを見ても、出てくるモデルさんに二重が多くて、自分にはあんまりピンと来なかった。
コロナの自粛期間が始まった頃、Youtubeでメイク動画を見るようになって、アイプチを始めました。一重であることに強いコンプレックスがあったというよりは、自分の目を研究することが面白くて。自粛期間で色々挑戦しやすかったこともあったので、サイズや位置、配置など、色々な角度から見た時に、自分は二重の方が、自分の顔に合うなって風に思ったんです。
その時、自分で探す過程にも価値があると気づきました。自分で試す間に、流行や自己表現の方法を察知する能力を得る、可愛いってなんだろうという興味も自分で模索するからこそ出てきました。
私の場合は、自分が好きなメイクをしていった結果、二重にたどり着いただけで、一重で魅力的な人もいて。自分の好きなものを貫いている人はみんないいなって感じるので、色々研究して試している期間に、ネガティブな心境になることはなかったです。色々試すことで自分が成長している、試しているのも全部自分だって思えて、受け入れられたから、どんなメイクをしている自分のことも好きでいられてました。
吉田氏:理想とのギャップからコンプレックスを感じたり、自信をなくしたりしてしまうことはなかったんですか?
岸田さん:私はこれまで、この人になりたい、というように、人を目標に設定したことがないんです。知人でアイドルや誰かみたいになりたい、って言う人って、私から見ると十分かわいくて素敵なんですけど、自己肯定感が低い傾向にある気がします。でも、だからといって、無理に自分の自己肯定感を上げようとはしていなくて、その状態で落ち着いている。それは憧れる対象を持っているからなんだなって感じました。
「憧れの対象」は私にとって…
上野:新田さんは論文でアイドルについて取り上げていましたが、それはどうして? 自身とアイドルとのあいだにある関係性、みたいな部分についても、どんな風に捉えているか、教えてください。
新田さん:自分が興味あることを並べてみたときに、一番研究しがいがありそうだと感じて取り上げました。COLOR Againの美をテーマにした対話でも他の人からアイドルの話が出て、面白かったです。そもそもアイドルは、 私にとってすごいいいものというか、光輝いてる存在なので、だからこそいいとこもあるし、自分アイドルみたいにはなれないなっていう思いは、やっぱり出てきちゃうのはあるんですけど…。
小学生の頃、友人とキャラクターごっこをしたときは、キャラクターを真似てみるけど、本当に自分が変わった気がしていなくて。高校生になっても、アニメに出てくるアイドルは、自分の自己肯定感にあまり関係していないと思ってはいたんですけど、考えてみると、実は自分は彼女たちのようになれないって感じて、コンプレックスを感じてることもある。
私には、自分とアイドルは別の世界で生きてるんだっていう、がっかりするというよりも諦めがついて現実を見れる感じがあります。でもなぜコンプレックスを感じるのだろう?と。
吉田氏:以前、上野さんも憧れの対象に安室奈美恵さんがいると言ってたけど、それも新田さんにとってのアイドルのような、理想のモデルみたいな存在なんですか?
上野:私の場合は、完全に彼女になろうとしていましたね。諦めもせずに。
吉田氏:その違いって何なのでしょうね。
上野:私は自分が低身長なのがずっとコンプレックスで。小学生の世界って、身長高くてスポーツできる人が優位になる文化じゃないですか。私は身長低いしスポーツできないしで。でも勉強は得意だったし、いいところがいっぱいあるのにっていう反骨精神がすごかったんです。それで、コンプレックスを克服する手段だったのが、かっこいいを追求すること。それで、かっこいい女性像である安室ちゃんを追っていたんです。まわりと違うものになりたい、と。
新田さん:それでいうと、私の場合は、たぶん自我が強すぎて、自分は自分だ、という認識が強かったんだなと思います。自己肯定感は高くない、でも自我は強い。それで、コンプレックスを感じて気持ちが浮き沈みすることもありました。
吉田氏:浮き沈みがあったり、沈んでしまう状態が続いてしまう自分について、ご自身ではどう感じていますか?
新田さん:色んな辛い思いや経験をしてきたからこそ、もっとさらに考えられることや、後から振り返ったら学べることがあると思ってます。だから、今までの自分を肯定したいと思っています。
コスメやメイクとの出会いから、憧れる対象との関係性についてまで、それぞれのエピソードを話してくれたお二人。後編では、自己と他者をめぐる考察や、エッセイを通じた活動の意義などについて対話を交わします。ぜひ1/28(日)開催の展覧会でのエッセイと合わせてご覧ください。
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