長い長い未練のお話
約1年前、日雇いバイトをしている日で休憩をしている時間で日が暮れかけているかどうかも分からない時間。母から電話が何件も掛けられていたのを見つけた。私は電話が嫌いで何度も掛けられてくる電話がさらに嫌いだ。なんの用事かメッセージで送ってくれればいいのにと思ったことを覚えている。
ただ何か何度も焦ってかけてきたような連続する着信に嫌な感じがして普段は掛け直さない私が電話を母にかけ直した。
もしもし?なんの電話?今バイトの休憩やねんけど。と冷たく電話をかけたら泣きそうで焦りの含まれた母の声が返ってきた。何かがおかしい。そう思い次は心配しながらどしたん?と返すとバイトなんでしょ。後で話すから実家に終わったら帰ってきてね。と電話での会話は終わり、言われた通りバイトが終わってから私は恋人と合流してから実家へ帰った。
実家へ帰ると泣いた跡のある姉と嫌な空気が漂うキッチン、眉間に皺を寄せた父と色んな感情が混ざった顔をしている母が居た。何が起きたのか全く知らされていないが嫌なことが起きたのは確かであった。
父に座ってと言われて恋人と敷かれていた布団に座った。座ったら直ぐに話が始まった。内容は祖母が亡くなったということ、祖母が亡くなった原因は祖父の車のアクセルとブレーキの踏み間違いだということだった。
私の祖母は優しくて穏やかでよく煮魚や刺身をくれたり、お菓子をくれたりと甘やかしてくれる存在でこれが好きだと1度言うとずっと与えてくれるような孫を大切にしてくれる暖かい人だった。
それに対して祖父は祖母の優しさにあぐらをかきDVをするような恨んでも恨みきれない部分が沢山ある嫌な人。親族からも実の母親からも嫌われた人である。
そんな祖父の車の操作のミスで祖母が亡くなった。
そう聞いた途端私は父に意味の無い質問を沢山して答えのない問題をぶつけて泣きじゃくった。
なぜ死ぬのが祖母なのか、なぜ祖母が死なないといけなかったのか、なぜ祖父が祖母の命を奪う事をしたのか、沢山沢山泣き叫んだ。殺してやる、あんな奴とも言った。はっきりと父の目を見て言った。
父はそんな事をしても祖母はかえってはこない事、そんなことをしたら祖母が悲しんでしまうことを伝え私を恋人に託し祖母がいる病院へ行くと母と車で片道1時間以上の場所へ行った。
祖父は故意で殺していないからと過失致死にならず、車の免許を永遠に停止されただけだった。全く納得のいかない結果になった。腹立たしい。
お前の踏み間違いのせいで祖母の心臓は破裂して腹の半分が無くなった。お前のせいで祖母が命を無くした。お前が祖母の命を奪ったのになぜ罪にならずに葬式の後に祖母の悪口を言うのか理解が出来なかった。
お葬式が行われた時、図々しくもその場にいた。謝って貰ってもいない。謝罪もなく、突っ立っていた。腸が煮えくり返るとはこの事かと体を通じて理解出来るほど怒りが湧き上がり殴りかかったが父に止められた。悔しい。何も出来ない自分も嫌だった。怒鳴り散らした。でも何も言葉は届かないようでこちらを不細工な顔で見ていた。ただただ見ていた。
もしも日雇いバイトがあの日では無かったらきっと電話が掛かってきた時点で警察署にいる祖父を訪ね罪を犯していただろう。人生を棒に振ってもいい、ただ恨みをぶつけてしまいたい。今でもそう思っている。
お葬式では嬉しいことに成人式の前撮りで恥ずかしがる祖母と一緒に撮った写真が使われていた。照れ屋で嬉しそうな顔をした祖母と素敵な着物を着て写真を撮れたことが唯一の救いである。あの時強引に横に並んで撮ってよかった。本当によかった。
亡くなった祖母の携帯の待ち受けは一緒にその時に撮った私との写真だった。亡くなってからやっと知った嬉しい事、でも亡くなってからでは遅いのだ。
小さい頃から母の代わりに家に居てくれた叔母は食事も取れず水分補給もしんどくなるほどにショックを受けていてずっと泣いていた。元々細い身体が消えそうなほど更に細くなっていた。叔母は祖母と一緒に住んでいたから私よりももっともっと辛いと思う。今でも夜な夜な泣いているのではないかと心配する。祖母に似て暖かい人で小さい頃私たちの為に煙草を吸うのを辞めてくれたような優しさで出来たような人だ。心の傷はどれほどのものか慮れ無いほどに深く深く抉られ裂かれているだろう。
3月8日祖母の旅立った日。3月5日に1回忌を迎える。もう今週の日曜日に迎える。時の流れは止まってくれることは無い。わかってる。逆さに流れることがないこともわかってる。それでもそれでも祖母に会いたいです。
あなたの作ったカレイの煮魚が食べたい。あなたがくれる優しい言葉に触れたい。
まだあなたがもう居ないことを受け止められず毎日毎日思い出しては泣く日々が続いています。手紙を棺桶に入れたから読んでくれましたか?
もっとあなたと時間を共有すればよかった。暖かいお茶を一緒に正座して飲めばよかった。早く車の免許を取って私が運転してお花のある綺麗な場所へ連れて行ってあげたらよかった。もっともっと一緒に写真を撮って沢山一緒に笑ったらよかった。
悔やんでも悔やんでもかえってこないばぁばへ
愛してます
おわり。
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