ご褒美で勉強させるのはどうなの?報酬設計を考える
勉強にやる気を出せるためにご褒美を与えたらどうかと考えたことが一度はあると思います。
そして、ご褒美は良いことなのか、悪いことなのかと悩みませんでしたか?
ご褒美がないと勉強しない子になってしまうのではないかと心配になりますよね。
今日はそのあたりについて書いていこうと思います。
ご褒美は良い?悪い?
結論からいうと、ご褒美をあげてOKです。
しかし、ただご褒美を与えれば良いというわけではありません。
いくつか大事なポイントがあります。
その点をしっかりおさえて運用すれば、プラスに働くと思いますので、是非ご家庭でも検討してみてください。
ご褒美を与えるかいなかを報酬設計といいます。
この報酬設計を考える際に、セットで出てくるのが動機付けです。
動機付けには内発的動機づけ、外発的動機づけがあります。
報酬を与える事は外発的動機づけになります。
報酬設計と動機付けの関連について調べると、次のような実験記事が多く出てくると思います。
『ボランティアで清掃活動をしていた人たちに報酬(お金)を与えるようにすると、報酬がないと清掃活動をしなくなってしまう』
ということは、お小遣いをあげるようにするとそれがないと勉強しなくなるのではないか?と思うかもしれませんが、
これは「アンダーマイニング効果」というものです。
「楽しい、うれしい」という内発的動機づけによって発生していた行動に対して、「お金」という外発的動機づけを与えると、
「お金」がもらえないならやる意味がないと感じるようになってしまいます。
やる気を出させるためにご褒美をあげるかどうか悩んでいるということは、
内発的動機づけがない状態だと思いますので、アンダーマイニング効果について考える必要はありません。
子どもにあった報酬設計をして、良い学習習慣をつくるとっかかりにしていきいましょう。
では、どのようなポイントに注意して報酬設計をしていくべきか考えていきましょう。
ポイント1.何に対してご褒美をあげるか
報酬設計は「ご褒美」という外発的動機づけによって、モチベーションをあげる方法ですが、
努力して欲しいと思っている内容は子どもによって違うと思います。
例えば、
①試験前にゲームをせずにしっかり勉強してほしい
②日頃の勉強習慣を作ってほしい
③ケアレスミスが多いので、丁寧に問題を解けるようになってほしい
などなど
「勉強頑張ってほしい」といってもその内容は様々だと思います。
どんな課題に対しても、試験の点数に対してご褒美をあげればよいというわけではありません。
勉強時間に対して、勉強した日数に対して、ケアレスミスの数に対して など
子どもに身につけて欲しい力に合わせた課題設定をしましょう。
ポイント2.達成可能な目標に
課題を決めたら、達成可能な目標を設定しましょう。
ここは、子どもと一緒に話し合って決める事をお勧めします。
「達成可能」というのは子どもからみて「達成可能」だと思えることが大事だからです。
例えば、「100点取れたら1万円」という目標設定だとどうでしょう。
普段から90点以上とれている子どもであれば、やる気になって頑張るかもしれませんが、
いつも平均点以下の子どもにとっては、「1万円!!」と一瞬思うかもしれませんが、「100点なんてムリムリ、、、」とやる気はおきないでしょう。
本人が「頑張ったらいけるかな」と思えるところにしましょう。
その際、親御さんとの間で折り合いがつかないことも出てくると思います。
その時は二段階の目標設定にしてあげると良いです。
例えば、「80点以上で1,000円!」と親御さんが提案すると、「それは無理!」と子どもがのってこなかったとき
子どもは「60点」と言う。でも親御さんんとしては80点に向けて頑張って欲しい。
そういう時は「60点だったら500円、80点で1,000円でどう?」としてみましょう。
ポイント3.お互い楽しめるぐらいの報酬にする
最後に、どれぐらいの報酬にするかですが、基準は各ご家庭で様々だと思いますので、
抽象的にはなりますが、「お互いが楽しめる範囲」にしましょう。
親御さんとしても負担がない、子どもとしてもあったらうれしいぐらいがちょうどよい報酬です。
あまりにも高すぎると、親御さんの負担が大きくなりますし、子どもがズルをしてしまう可能性もあがってしまいます。
ですから、ゲーム感覚でできる程度がベストです。
以前に関わったご家庭で無理な報酬設計をしたご家庭がありました。
「学年3位以内に入ったら、新しいスマホをかってあげる」と。
おそらく、お母様としては「学年3位に入る事は無理だろう」と思われていたのだと思います。
それがなんとぎりぎり達成してしまったのです。
子どもに「どんあリアクションしてた?」と聞くと、「えっ!?と驚かれた」と言っていました。
本来一緒に喜んであげるべきところで、お母様は喜べなかったのです。
そして次の試験では10位以下に戻ってしまいました。(もともと10位ぐらいだった生徒です。)
また、報酬は慣れてもしまいます。
定期試験でスマホだったら、受験だったらと子どもは期待するかもしれません。
その時に、もし、期待値以下のご褒美が提示されるとどうなるでしょうか?
もしかするとモチベーションが下がってしまうかもしれません。
ポイント4.回避目標にしない
最後の注意点は目標の種類です。
目標には大きく2種類あります。
それは、接近目標と回避目標です。
接近目標とは「毎日10個単語を覚える」など、ある行動や状態を目指す目標で、
回避目標とは「テスト前はゲームをしないようにする」など、ある行動や状態を回避する目標です。
子どもと目標設定する際は接近目標になるように注意してください。
回避目標は達成感が得づらく、勉強には天敵の「どうにでもなれ効果」を誘発しやすいというデメリットがあります。
例えば、「試験前1週間はテレビやゲームは禁止する」という目標を立てたとしましょう。
1日目はなんとか我慢できました。しかし、2日目弟がゲームしているのが目に入ってしまい、つい少しゲームをしてしまいました。
そうすると、3日目以降どれだけ努力しようが目標が達成されることはありません。
そうなると、ついついゲームをしたことを隠そうとしてしまったり、
「もう達成できないからどうでもいいや」と普段の生活に戻ってしまったり
親御さんの望まない方向に進んでしまう可能性があります。
テレビやゲームを禁止というのは、その時間を勉強にあてて頑張って欲しいということですよね?
ですから、「試験前1週間はテレビやゲームは禁止」ではなく、「試験前は1日4時間勉強する」など接近目標にしましょう。
まとめ
報酬設計は上手に使うととても効果的な手法です。
ポイントをおさえて、各ご家庭にあった報酬設計をしてみてください。
1.努力の対象を明確に設定する
2.達成可能な目標をたてる
3.お互いが楽しめる適度な報酬にする
4.接近目標にする