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朝、突然ガラスが娘に降ってきた

パッリーン!

数日前の早朝4時過ぎ。
頭の右上の方で大きな音がして飛び起きた。
枕元にあるリモコンで電気をつけると、壁にかけてあった額縁が棚の上に落ちて、表面のガラスが割れていた。

その棚は、肢体不自由の二女に必要な医療的ケア用の機械や物品を置くために、娘のベッドの頭の方にピッタリとくっつけて置かれている。

うわぁ、あかん!娘が危ない!

寝ぼけた頭が猛スピードで覚醒した。
慌てて娘のまわりを見ると、ベッドの上にも小さなガラスのかけらが散乱していて血の気が引いた。

娘は大丈夫?
ケガは?

娘を隅々まで確認したら、ケガはなく無事なようだ。
睡眠障害のために徹夜をしていた娘は、ポカンとした表情をしている。

娘が無事でいったんホッとしたが、娘の頭上にあるたくさんのガラスから彼女を遠ざけなくては危ないと思い、呼吸器を外して、そっと娘を抱き上げた。
ベッドから少し離れた場所に敷いてある私の布団へ避難させる。
(私は娘の夜間の世話のために、毎日リビングまで寝具を運んで、彼女の近くで寝ています。)


さて、この惨状をどうしたものか。
何から手をつけたらいいのか、途方に暮れてしまった。
とりあえず、別室で寝ている夫を呼びに行って、ふたりで片付けることにする。

夫も部屋の状況に驚き、「スリッパ履かないと危ないぞ。」と言いながら、慌ててトイレへスリッパを取りに行った。
この際、どこのスリッパでも、まぁ良し良し!

私はキッチンにあるスリッパを履き、ビニール製の手袋2人分と新聞紙、潰した段ボール、掃除機、コロコロローラーを用意した。
ほんとは耐切創手袋が良いんだけど、準備していないので仕方ない。

落ちてきた額縁は、横幅が80cmくらいでわりと大きく、表面は薄いガラスでカバーをされているような、よくあるタイプのものだ。
中の絵は、画家をしている夫の友人が書いたもので、約30年前、新築祝いにこの額縁をプレゼントしてくれた。

今回、落ちた理由は、吊るしている紐が切れたことだった。
完全に経年劣化だ。
年に一度は掃除をしているが、紐の状態は気にしてこなかった。

棚の一番上には何も置いてなかったので、額縁はガラス面が下向きな状態でそのまま落ち、棚の上を少しはみ出した状態で止まってくれた。
娘のベッドには落ちずに済み、ほんとに助かった。

だが、割れたガラスが40センチくらいの細長いつららのようになっていて、かろうじて枠の窪みに引っかかっりながら空中でぶらぶらしている。

まずはそのつららを一枚ずつ外していくことにしたのが、どの部分も刃物のようで、怖い。
一枚一枚を、段ボールの上に敷いた新聞紙にそろりと置き、ガラスがなくなった額縁をとりあえず外へ運び出した。

次に、散らばったガラスのうち、目立って大きなものを拾う。これも、手を切りそうで怖い。

途中、私はほんの少し、手首にガラスの尖り部分を当ててしまい、出血してしまった。
腕を上に上げ、反対の手で止血しながら、「救急車かなぁ。深いかなぁ。痛くないけど血が止まらない。」と騒いだけど、よく見たらめちゃくちゃ小さな傷で、絆創膏で大丈夫だった。
深いキズじゃなくてよかった。

「お前はガラスを触るな!」と夫に言われて、私は娘の呼吸器まわりにガラスの破片がついていないのを確かめ、待っている娘に人工呼吸器を繋いだ。

その後、念入りに掃除機をかけ、ベッドの上も下もまわりもコロコロをして、娘のベッドの上の布類を全て洗濯機に放り込んだ。

棚やそのまわりの医療的ケア用品たちも全部調べて、洗えるものは洗い、交換できる部品はすべて新品と交換した。


ようやく片付いたのは1時間後。
娘にケガがなくて、それは不幸中の幸いだった。

あの、つらら状の尖ったガラスが、娘へ落ちていたらどうなっていたか。想像するだけでもゾッとする。

亡き祖父たちふたりが孫を守ってくれたんじゃないかな、と夫が言うので、私は、父と義父が必死でガラスを止めてる姿をイメージして、じいちゃんたち、神ってる!と思った。

たったひとつの額縁が落ちただけ。
そのガラスが割れただけで、こんなにも大変だとは。地震や台風、大雨などの災害に遭われた方々はどんなに大変だろう。

自分では逃げられない娘を災害時に守るために、今、どんな対策ができるのだろう。

災害の怖さと、日頃の備えの大切さをあらためて痛感した。

私はこの日、飾ってある家中の額縁をチェックして回り、外せるものは片付けることにした。

さらに家の中を見渡して、家具や家電の転倒、窓や食器棚の扉などのガラスの飛散等、ずっと後回しにしてそれらの対策を何にもしてこなかったことを今更ながら反省した。

東京都のこちらのホームページ、わかりやすいです。



「いざという時に娘が大丈夫なように、危険を察して起動するカプセルみたいなシェルターが欲しいわー!」

そう言って、災害の心配ばかりしている私の話を聞いて、いつもは呑気100%の夫が、

「娘のいるリビングだけは俺が安全にしてやるから任しとけ!」

と、やる気100%で週末に日曜大工をやってくれることになった。

夫はホームセンターで留め具やネジなどを買い込み、リビングだけでなくすべての部屋の家具を壁に固定してくれた。
おかげで少し安心できた。

私は娘のベッドまわりをスッキリしてみた。特に棚は、最低限のものだけ置くようにして、重いものが落ちてこないような工夫もした。

まだガラスに飛散防止フィルムを貼る作業などは残っているが、またそれは後日、ぼちぼちやる予定だ。


災害は忘れた頃にやってくる。
備えあれば憂いなし。

皆さまも災害に備えて、お家の中を見渡してみてくださいね。
壁に飾られた額縁を吊るしている紐、切れかかっていませんか?



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