独居老人の義母、詐欺師に騙されてしまう
義母がキャッシュカード詐欺盗に遭ってしまった。
我が家の地域の回覧板でも、つい先日、こんな注意喚起がなされていた。
その手口と全く同じで、そんな!まさか!と思った。
9月の終わりだった。
夕方、義母から電話がかかってきて、声を震わせながら私に小声で話し始めた。
「琲音さん、琲音さん、わたし、大変なことになってね。詐欺に遭ってしまって。」
驚いた私は、まず、義母の身の安全を心配した。
とりあえず警察にも知ってもらっているとわかり、ゆっくりと義母から話を聞きながら、すぐに駆けつけてあげられないことを、とてももどかしく思った。
昨年、義父が亡くなり、88歳になる義母はひとりで暮らしている。
元銀行員の義母は、チャキチャキしたしっかり者だ。
そんな義母でも、簡単に騙されてしまった。手口はこうだ。
そのニセ警察官が来てから3日後のこと。
正午過ぎに、今度は本物の警察官ふたりが義母の家に来て、キャッシュカードをこの数日続けて使っているかを義母に尋ねた。
義母が、封筒に入れたまま使っていないことを伝えると、「あなたは詐欺に遭っているかもしれない」と言われ、封をしたままの状態で保管していた封筒を本物の警察官の前で開けてみた。
すると、キャッシュカードではなくトランプのカードのようなものが入っていたらしい。
騙されたとわかってからは、警察官に何度も足を運んでもらって被害届を出したり、銀行にカードの使用を止めてもらったり。
何も食べることができず、夕方まで義母はバタバタしたらしい。
ようやく一区切りついて、義母は私に連絡をくれたのだ。
帰宅した夫に義母からの電話の内容を話すと、彼はすぐに義母に連絡し、さらに警察へも連絡して詳しく話を聞いていた。
今回、義母は、警察官の服装と優しい話し方で、すっかり詐欺師の話を信用してしまったらしい。
オレオレ詐欺や買取業者には気をつけていたが、この手口は知らなかったようだ。
キャッシュカードの暗証番号がなぜ相手にわかったのかは不明だが、ニセ警察官から何度もその後におかしな電話があったそうなので、そこで義母は、暗証番号の何らかのヒントを話してしまったのかもしれない。
本人はテンパってしまって、そのあたりの記憶がないそうだ。
1日で出金できる範囲のお金を、かなり離れた県外の街で引き出されていたらしい。
義母が封筒を確かめていないのに、なぜ警察官は義母が詐欺に遭っていることがわかったのか、それは郵便局が怪しい出金に気づいてくれたからだった。
郵便局では、ATMでの高齢者の1日の出金限度額は10万円だ。それが3日続いたので怪しく思い、郵便局員さんが警察へ連絡してくださったらしい。
郵便局員さん、グッジョブだ。感謝しかない。
警察官の方もおっしゃっていたが、「家族に言わないように」と口止めされるようなことは、間違いなく怪しい。
また、キャッシュカードを見せるようにと他人が言うこともおかしい。
警察官ならばそんなことを言うはずがないし、警察官は、身分証明には警察手帳を必ず提示するそうだ。
今回のことで、日頃から施錠を必ずすることはもちろん、玄関にカメラ付きのインターホンがあるといいのではないか、というアドバイスを警察の方からもらった。
警視庁のホームページでも、このような詐欺について紹介されている。
警察官の話だと、このような詐欺の場合、なかなか犯人に辿り着くことは難しいらしい。
詐欺師に引き出されて取られてしまったお金は、義母のようなケースでは、全額ではないがある程度は保証されると、後日になってわかった。
そのあたりは私には詳しくはわからないけれど、義母は「勉強代やわ。命を取られなかっただけでよしとする!」と、悔しい気持ちを切り替えようと、そんなことを私たちにも自分自身に言い聞かせていた。
ひとり暮らしの義母や実母の生活がとても危なっかしいことを、私はつくづく実感した。
翌日のお昼過ぎに『お義母さん、ご飯食べられてますか?大丈夫ですか?』と義母にLINEしたら、郵便局や銀行へさまざまな手続きをするために自転車で走り回り、お腹が空いたので鰻屋さんにいる、とのことだった。
『銀行の手続きが済んだから、今ね、うなぎを食べに来てるの。ひとりでお祝いしてます。』
っていう返信に、お祝いって…ふふふ、お義母さんらしいな、と少しホッとした。
独居老人に関わらず、高齢者を狙った詐欺、窃盗などの犯罪が増えている。
遠くに暮らす私たち子どもに何ができるのか、しっかり考えなくてはならないと強く思った。まずは、もう少しまめに親と連絡を取り合うようにしなくてはならないな、と夫とも話している。
そして被害者だけでなく、騙されて加害者にさせられてしまうかもしれない時代、子どもたちはもちろん、自分たち自身も防犯意識を高めながら暮らさなければならない、と最近の報道からも感じている。