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一人一人に話しかけるように#こんな仕事です

私も仕事についてnoteで書いてみたい、そんな気持ちはずっとあったのですが、専業主婦を25年もやっているとなかなか書けなくて。  

ですが是非とも、み・カミーノさんの企画に参加したくて、思い切って私の若い頃の話を書こうと思います。



ずいぶん前になりますが、私は公立中学校の教諭でした。
教科は数学です。

二女の病気がわかり、大好きな仕事を辞めることになりました。
その時の悔しかった気持ちを忘れたくて、noteでは仕事について触れずにいました。

しかしそれも、もう四半世紀も前のこと。
6年間の教師生活はとっても胸アツでキラキラな思い出が盛りだくさんでした。いつかnoteで、書ける範囲で教師時代のことも書いてみたいと思っています。


さてさて、今回紹介するのは教師の仕事ではなく、赤ペン先生の仕事です。

赤ペン先生って、ご存知ですか?
小中高のお子さんの答案を添削指導する仕事です。

今から17年前、私は3年間ほど赤ペン先生をしていました。
辞めた後は関係書類を全て処分したので、今は手元に何も残っていないのですが、覚えていることを書いてみますね。


添削指導の仕事を始めた理由は、焦り、です。
長女が中学生になる頃、専業主婦だったご近所のママ友はみんな働き始め、私も働きたい!と無性に思うようになりました。

かと言って、体調が不安定な二女の介護もあり、家から出て働くことは難しい。
そこで在宅でできるものを探し、赤ペン先生に辿り着きました。

私が選んだのは、ちょっと難しいイメージがある通信教育の大手、「◯会」です。一応、先生になるにはテストがあり、無事に合格して、中学三年生の数学担当になりました。

さぁ、仕事開始です!


添削の可能な枚数を申告すると、毎週決まった曜日にパソコンへ問題と解答の詳しいデータが送られてきて、その翌日に学生の答案用紙が郵送されてきます。

同じテストではなく、数種類のテストが混じるので、かなり大変。
それを添削して6日以内に送り返すまでが仕事です。

歩合制なので、やればやっただけ収入になりますが、時間も限られているので無理はできず、私は1週間に40枚くらいを添削していたように記憶しています。


添削には幾つかの厳しいルールがありました。先生によってばらつきがないよう、その点は徹底されています。

採点には万年筆を使い、書き損じたら専用の修正液で消して書き直します。その道具は支給されます。

そして正解答にも、余白にたくさんコメントします。

例えば、

〇〇の公式をよく理解し、正しく計算できましたね。この公式は△でも使われるので、正しく意味を理解して使えるようにしておきましょう。

こんな感じで、マルをつけるだけではありませんでした。

また、間違えた解答ならば、どこで間違えたか、どう解けば良いかをわかりやすく説明しなくてはなりません。
解答例はありますがなかなかその通りには行かず、工夫してコメントを入れました。

時にはテンプレートを使って図やグラフを描いたり。
証明問題や関数の問題は、作図にかなり時間を使いました。

基本的に、いつも解答用紙は真っ赤になります。

そして最後に採点をしてメッセージを書きます。一人一人に話しかけるように、やる気になってもらえるように。


早い時は1時間あたり4、5人分できますが、すごく時間がかかる場合は1人分しかできないこともあって。
平均したら1時間に2.5人分ほど添削したと思います。

1人分の添削料金は、当時は200円前後だったので、時給にすると平均500円くらい。
最低の場合は、時給200円ですね。でもそんな解答用紙こそ、私は必死になれたのですごく楽しかった!

しかも私は、添削前に全問題をひと通り解いて遊んでいたので、さらに時間がかかりました。
これは「解いたるぜ!」っていう元教師の意地です(笑)

だから、私の仕事の効率はかなり悪い方でした。

一生懸命書いた赤の文字たちも読まれずに廃棄されていたかもしれませんが、誰かの頑張りに繋がってくれていたら嬉しいなと思っています。

おそらく私は、学生に関わりたい、数学に触れたい、という未練のような気持ちもあったのだと思います。

時間が取れず、夜中も働いていましたが、家に居ながら仕事ができ、しかも社会と繋がれているような気がして、私にはやりがいのある仕事でした。

それに僅かですが、自分がお金を稼げることが嬉しくて。

無理をしすぎて体を壊し、わずか3年でこの仕事を辞めましたが、答案用紙に赤を入れる時間は、私の失いたくない何かを埋めてくれた時間でした。

以上が、私の働いていた頃の赤ペン先生の仕事です。

現在では手書きでなくパソコンで添削できるようになり、やり方も報酬も変わっていると思います。


み・カミーノさん、創作大賞中間発表通過、おめでとうございます!

こちらの企画をきっかけに、過去の仕事に触れ、私は何者かを書くことができました。
興味深い企画をありがとうございました。




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