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やきとりはタレか塩か問題

やきとりはタレで頼むか、塩で頼むか問題。

これは味そのものの次元を超えて、
複雑な心理戦である。

本当はタレで食べたかったのに
通ぶって「塩で」
と注文してしまった経験はないだろうか。

なぜか、大人になると
塩で食べる方が「通」っぽい。
塩と言うことで、相手にマウンティングする人が実に多いのだ。

確かに、良い素材を使って
上手に焼かれたやきとりは
塩で食べると本当に美味しい。
噛むほどに肉の旨みが口いっぱいに広がり、
塩がその味わいをより強く後押しする。
あの美味しさはタレでは味わえない。
ただし、それはやきとり専門店に限った話だ。

安めの居酒屋などでは、
質の悪い肉が使われていることもあり、
むしろタレの方が良いという場合もある。
タレが肉の不味さをマスキングしてくれるのだ。

だから、本来であればお店に合わせて塩かタレかを
使い分ける必要があるのだ。
しかし、壊れたレコードのように
「塩で」と連呼する人が実に多い。
隣の席から「塩で」と聞こえてくるたびに
悲しい気持ちになる。

私は言いたい。
「みんな、もっと自由になれよ。
ほんとはタレで食べたいんだろ?」
甘辛く絡みつく醤油とみりんの漆黒の輝き。
口いっぱいに広がる肉の旨みとタレの饗宴。
醤油の焦げる匂い。
幼いの頃に感じたはじめての外のシャバの味はタレだった。
家で出される手料理はいつも味が薄かった。
タレのやきとりは、たまに食べられる
私にとって、憧れの外の味だった。
「大人になって自由にお金が使えるようになったら、やきとりを目一杯頼むんだ」
そんなことを思って過ごしていたものだ。

タレで頼むのは決して恥ずかしいことじゃない。
ドヤ顔で「塩で」という必要はないのだ。
好きな方を好きなように頼むべきなのだ。

おっと、、、
ようやくこちらにも店員さんが注文を取りに来た。今日もやきとりを頼もう。
「モモ串焼き2本お願いします」
「お客様、タレか塩はどちらにしますか?」
「・・・塩で」

今夜も連敗中だ。

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