良い夫とは
「きみって本当に、可愛げが無いよな!」
可愛げが無いという言葉がある。
相手を非難する文脈で使われがちな言葉だ。
男性が女性に対して使うことが多いようだ。
そういえば私も使ったことがある気がする。
よくよく考えてみたらこの言い方は
なかなかに卑怯な言い方ではないか。
なんなのだ、可愛げが無いって。
まるで「可愛げ」があることが当たり前。
「可愛げ」が無いなんてダメなことだぞ!
といわんばかりの言い方ではないか。
私が女性に対してこの言葉を放ったときは
おそらく、自分の理想と違っていたから。
「女性はこうあるべきでしょ!」ってのを
どうにか(意地でも)伝えたかったから。
要は自分の理想を押し付けたかっただけ。
そりゃあモテなくて当然である。とほほ。
そもそも「可愛げ」とはなんなのだ。
私にとっての「可愛げがある女性」とは
意固地にならず同調して波風立てないこと。
さらに、さりげなく男性を持ち上げること。
男の前に立たず、並ばず
三歩後ろに付き、従って
男に守られる存在でいること。
そういった女性のことを「可愛げがある」と
思っていた。
そんな女いねーよ!目を覚ませ!である。
「女性はこうあるべき!」
みたいな思想を抱くのは勝手だけど
それをパートナーに強要してしまったら
現代では人格否定ともなりかねない。
自分を否定し続ける相手と添い遂げる?
なんの冗談?罰ゲーム?離婚離婚即離婚だ。
遅くしてそのことに気付いた私は
なんとか結婚できてなんとか夫婦生活も
なんとか楽しくやっていけてる気がする。
・・・
ええと、前置きはこのくらいにして
良い夫の話である。
良い夫って、どんな夫だろうか…?
経済力がある?生活力がある?
妻の話をしっかり聞いてくれる?
いっつも笑顔?不機嫌にならない?
家事も育児も全力で取り組んでいる?
それでもって恩着せがましく言わない?
体型をキープしててそれなりにオシャレ?
常に妻の一番の味方で未来永劫変わらない?
うん、たぶん、このくらい出来ていれば
それはもう誰が見ても「良い夫」なのだろう。
・・・と思っていたけど
どうやらそういうことではないらしい。
たとえばイケメン芸能人レベルの顔面力
大富豪と呼んでも差し支えの無い経済力
そして全てを受け入れて許容する包容力
これら全てを兼ね備えている夫がいるとしよう。
私からしてみたら
もう非の打ち所がないような完璧超人夫である。
じゃあその夫なら妻は最高に幸せになれるのか?
といったらそんなことにはならないようなのだ。
女性というのは、男性と比べて
ストレスが多くかかってしまう。
これは察する能力だったり
他人を気遣う能力だったり
リスクを回避するための予想能力だったりを
常に発揮しており、なおかつ
マルチタスクばりに同時処理しているから
どうしてもストレスが溜まりやすいらしい。
そして溜まったストレスはおしゃべりで
キレイさっぱり発散する。
この一連の流れは多くの女性の行動に見られる。
私にも経験があるが、ストレスが過度になると
どうしても攻撃的な言動が増えてしまう。
普段は使わない強い言葉が出てしまったり
(うるさい、バカ、イヤだ、など)
他人の悪口もぬらりと口からあふれ出る。
時には物に当たり散らすことだってある。
だからその気持ちはどことなく、理解できる。
「発散する」というのは
自分を守る上でも、他人と上手くやるためにも
必要不可欠なことだ。
だが、どうしても理解できなかったのは
理不尽に女性が男性をなじってくること。
特に失言をしたわけでもなく
特にストレスを与えたわけでもないのに
ひどい言葉や物理的攻撃を受けることがある。
これがどうしても理解できなかった。
私から見たら「ヒステリー」である。
理不尽の極みである。勘弁してくれである。
…だが、女性とは、そういうものらしい。
男性と比較してストレスが溜まりやすいゆえ
定期的にストレスを発散しているだけ、なのだ。
つまり、どんなに完璧超人な夫であっても
妻はストレスが溜まり、発散行動も必ず行う。
しかも
夫が完璧超人すぎると、妻が苦しむのだ。
(こんなに愛してもらっているのに)
(こんなに良くしてもらっているのに)
といった感謝を感じつつも
湧き出る(ストレスを発散したい)という感情。
攻めたいけど、攻めれないというジレンマ。
そういうことが妻の中で起こるらしいのだ。
なんという悲劇。
だが、この悲劇を解消する方法がある。
それは隙を作ること。
あえて妻に弱みを見せて、甘えること。
「ぼくは君がいないとダメなんだ」って
可愛げを見せることが非常に効果的だ。
「まったく!しょーがないんだから!」
が言える絶好の機会を提供できるからである。
そういった意味で
靴下を脱ぎっぱなしだったり
頼まれたお使いで買い忘れがあったり
酔いつぶれてソファーで寝てしまう夫というのは
案外「良い夫」といえるのかもしれない。
だから私は
今日も靴下を脱ぎっぱなしにするのだ。
はっはっは。
…いやなんか妻の氷のような視線を受けたので
できるだけ片付けます、うん、はい。