
ヒマのススメ
現代ってすごい。
いろいろすごいけどダントツでスマホがすごい。
これ究極のヒマつぶしデバイスじゃないですか。
寝る前にスマホ
起きてすぐスマホ
移動中にスマホ
仕事の合間にスマホ
恋人と会ってるのにスマホ
なんなら恋人と一緒にスマホ
誰もかれもが渇きを満たすように、スマホ。
(もちろん私もnoteをスマホでチェック)
おもしろいよね、スマホ。
でも、もっとおもしろいのは
どれだけスマホに時間を費やしたとしても
全く満たされてない人ばっかりという現実。
やや、誤解しないで頂きたい。
私は別にスマホを非難したいわけでもなく
スマホ依存を揶揄したいわけでもない。
私が言いたいのは
夢中になって取り組むのは幸せな事のはずなのに
スマホに関しては幸せから遠ざかっていくような
そんな矛盾めいた現象が目の前で起きてることが
おもしろいなと、そう言いたいわけです。
・・・
私が幼少期の頃はスマホが無かった。
自分で言うのもなんだけど私の幼少期は
実に天真爛漫で、活発で、好かれていた。
近所の同年代の子の家は私の家も同然で
何度も入り浸り(行儀よく)遊んでいた。
おまけに私には歳の近い兄もいる。
そう!この兄が実に尊敬すべき兄で
私とよく遊んでくれたのだ。
めちゃくちゃ喧嘩もしたけれど
楽しい思い出が圧倒的すぎるので気にならない。
要するに、私の周りには常に遊ぶところがあり
かなり満たされた幼少期だったということだ。
しかし、それでも
家に一人だけになる時がある。
親も、兄も、友達も、誰もいない。
なんならテレビもワイドショーしかやってない。
ヒマすぎる。
ヒマを持て余した私は外へ出る。
にゃあ。猫に会う。
その瞬間、雷が脳天に突き刺さる感覚。
(そうだ、煮干しをあげよう)
こっそり台所へ戻り煮干しを拝借。
猫がガツガツと食べてくれる。うれしい。
牛乳もあげたくなる。こっそり台所へ向かう。
猫がぴちゃぴちゃと飲んでくれる。うれしい。
「ねえ次郎?あんた野良猫にエサやってない?」
ある日、母親が尋ねてきた。
しれっと、とぼける。
(今思い返すと完全にバレていたっぽいが)
また、ヒマな日が来る。
私はしげしげと
飲み終わったオロナミンCの空き瓶を
観察していた。
このひんやり感、厚み、ううむ、すごい。
その瞬間、雷が脳天に突き刺さる感覚。
(そうだ、爆竹を入れよう)
外に出て、他に人がいないことを確認し
火を付けた爆竹をオロナミンCの瓶に入れ
素早く蓋を閉めた。
ボンッ!
砕けた。空き瓶が。たかが爆竹で。
ゾクゾクと世界の真理を得た気分になる。
(あ、良い子はマネしないでくださいね)
・・・
私はヒマな日が来るたびに
新しい「何か」を求めていた気がする。
時には用水路に潜り込んで身動きが取れなくなり
大勢の大人に迷惑をかけて救出された事もある。
椅子の背もたれに頭を突っ込んで
頭が抜けなくなって泣きわめいた事もある。
学校にある火災報知機のボタンは
押したくて押したくてたまらなかった。
(なんとか押さずに卒業できた)
たぶん、私は、ヒマに耐えられないのだ。
他人に迷惑をかけてでも
後先考えずに行動して
自分のヒマつぶしを優先させてしまう。
全く、
我ながらよく犯罪に手を染めなかったものだ。
付き合ってきた友人達が聖人揃いだからだろう。
こんな癖を持ってる私なので
バイト学生が店の商品で不適切な遊びをしたり
回転寿司のお店で醤油に不適切なことをしたり
むちゃくちゃなことを動画にするYouTuberを
指さして笑うような気持ちにはなれない。
ひとつボタンをかけ違えていれば
私も同じことをしていたのかもしれないから。
・・・
私は、ヒマに耐えられない性格だけど
ヒマをたくさん経験して良かったと思う。
正確に言うならスマホがない時代に
ヒマをたくさん経験して良かったと思う。
やばいよ、スマホは。
ヒマな時間を全部無くしてくれる。
それはそれで私を含めたほとんどの人が
求めてやまなかったことだと思うけど
実際にヒマが解消されてみると、あれ?
満たされない?
少なくとも幼少期のゾクゾク感は無い。
現在、生まれた時からスマホに触れている子は
果たしてあのゾクゾク感を味わったのだろうか。
また、味わうことができるのだろうか。
そんな年寄り臭いおせっかい心が出てくる。
(あーやだやだ)
デジタルデトックスとか
SNS封印とか
ちらほらやってる人がいるけど
スマホを知ってしまった私たちが
スマホのような依存先を断つことは難しい。
それは分かってるけど
できることなら、ヒマを知ってほしい。
ヒマで、何もすることがないのは苦痛だけど
苦痛からしか生み出せない発想はあると思う。
いや、あるよ。確実に。
私は幼少期の「ヒマ」がベースとなって
今を生きていると確実に言えるから。
過ぎたるは猶及ばざるが如し
とはよく言ったもの。
多すぎる情報は逆に足かせになるなんて
おもしろいよね。
「あ~ヒマだな」って言葉は
現代ではゼイタクな言葉なのかもしれない。